コラム 2023.12.07. 06:14

「江川2世」、両親が「ロシア出身」の強打者も…明治神宮大会で活躍した2024年の高校生ドラフト候補は誰だ!?

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作新学院・小川哲平【写真提供・プロアマ野球研究所】
 11月15日から6日間にわたって行われた明治神宮野球大会。2024年のドラフト戦線という意味では、最初の大きな大会で、NPB球団のスカウト陣が連日視察に訪れていた。そこでアピールに成功した選手を紹介したい。今回は高校生編だ。

 「江川2位」と呼ばれる作新学園のエース


 投手でまず抜群の安定感を見せたのが、作新学院のエース、小川哲平だ。一部メディアには、「江川2世」と呼ばれている。中学2年時に早くも軟式で140キロを超えるスピードをマークするなど、栃木で評判となっていた右腕である。

 高校進学後は故障に苦しみ、昨年春の選抜高校野球でもわずか1/3回の登板に終わったが、夏以降は徐々に復調。秋の新チームからは不動のエースとなっている。今大会は3試合、18回を投げてわずか1失点。見事な投球でチームを準優勝に導いた。ストレートは140キロ台前半と少し抑えめだったものの、コーナーにしっかり投げ分けることができ、変化球の精度も高い。走者を背負っても落ち着いており、勝負所でギアを上げられる。体格に見合うだけの球威が出てくれば、さらに評価が上がるだろう。

 投球内容は、いまひとつだったものの、高いポテンシャルを示したのが、大阪桐蔭のエース、平嶋桂知だ。長いリーチから投げ込むストレートは最速146キロをマーク。楽に投げても140キロ以上を計測するなど、スピードは、今大会登板した投手の中でも頭一つ抜けていた。

 また、鋭く変化するスライダー、カットボールも質の高さが目立った。立ち上がりからボールが先行し、ストライクをとりにいった甘いボールを痛打されるなどコントロールには課題が残った一方で、潜在能力の高さは疑う余地がない。優勝候補と期待されていた大阪桐蔭は、初戦で関東一に敗れた。この悔しさをバネに、春の選抜では一回り成長した姿を見せてほしい。

 このほか、関浩一郎、桜田朔(いずれも青森山田)、坂井遼(関東一)、高尾響(広陵)、平悠真(高知)らが既に140キロを超えるスピードを披露。サウスポーでは、佐宗翼(星稜)が安定した投球を見せた。彼らも、今冬の成長次第では、十分にドラフト候補となる可能性がある。


両親が「ロシア出身」「スリランカ出身」の強打者が活躍


 一方の野手。最も強烈なインパクトを残したのが、モイセエフ・ニキータ(豊川・中堅手)だ。両親はロシア出身で、本人は愛知県で生まれ育った。東海大会で16打数10安打6打点と打ちまくり、優勝に大きく貢献。今大会は、初戦の高知戦で厳しいマークに苦しみながら、タイムリーツーベースと犠牲フライで2打点をマーク。

 準決勝の星稜戦では、高々と打ち上げてライトスタンドへ運ぶソロホームランを放ったほか、あっという間に二遊間を抜ける弾丸のようなセンター前ヒットを打って、大観衆を沸かせた。バットを高く上げる大きな構えからの全身を使ったフルスイングは迫力十分。星稜戦のホームランは、打った瞬間に高く上がり過ぎたかと思われたが、そのままスタンドまで届いた。ヘッドスピードの速さは群を抜き、チャンスでしっかり結果を残せる集中力も見事だ。ただし、縦の変化球への対応に少し課題が残る。この点は克服していきたい。


 強打者タイプでは、ラマル・ギービン・ラタヤナケ(大阪桐蔭・三塁手)が存在感を示した。こちらは、両親がスリランカ出身で、名古屋で生まれ育った。前述したように、大阪桐蔭は関東一に敗れたものの、ラマルは、スリーベース、ツーベース、ホームランと3本の長打を放った。

 センターへのスリーベースは、高く打ち上げてフェンスを直撃。また、ライトへのホームランは、弾丸ライナーでそのままスタンドに飛び込むなど、圧倒的な長打力を誇る。変化球への対応などに弱点が多く、サードの守備のスローイングにも大きな課題が残るが、貴重な右のスラッガー候補だけに今後の成長が楽しみだ。

 捕手では、只石貫太(広陵)と熊谷俊之介(関東一)が活躍した。只石は旧チームから不動の正捕手としてプレーしており、落ち着いたキャッチングとブロッキングは高いレベルにある。スローイングは少しばらつきがある一方で、実戦では見事な送球で盗塁を阻止した。打撃は、鋭い振り出しでスムーズに強く引っ張る。名門・広陵の4番を任されることも納得できる実力だ。

 熊谷は守備、打撃ともに高レベル。初戦の熊本国府戦では、一つ悪送球があったものの、捕球から送球までの動きが速く、イニング間のセカンド送球タイムは、楽に1.9秒台をマークしていた。打撃面は、大阪桐蔭戦でホームランを含む3安打を放つなど、3試合で打率5割という見事な成績を残した。高校から直接、プロ入りを目指すならば、攻守ともにもう少し凄みが欲しいところだが、成長次第では、来年のドラフト候補に浮上する可能性がある。

 それ以外の野手では、優勝した星稜打線を牽引した芦硲晃太をはじめ、トップバッターとして5割近い打率を残した飛田優悟(関東一)、初戦で敗れながら高い能力を見せた徳丸快晴、境亮陽(いずれも大阪桐蔭)ら、外野手の好打者の活躍が目立った。

 全体的に、高校から直接プロ入りというよりも、大学や社会人を経由してプロを狙うというタイプの選手が多いと感じたが、レベルは決して低くはない。この冬にワンランクレベルアップを果たせば、一気にドラフト戦線に急浮上することが期待できそうだ。


文=西尾典文(にしお・のりふみ)
☆記事提供:プロアマ野球研究所
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