龍谷大平安時代はスカウトも“ノーマーク”
2024年のドラフト戦線は、関西大の153キロ左腕、金丸夢斗と、明治大のショート、宗山塁が“目玉候補”と期待され、プロから熱い注目を集めている。だが、他にも、ドラフト1位指名を狙う逸材がいる。今回は、驚くべき成長をみせた、青山学院大の主砲、西川史礁を取り上げたい。
▼西川史礁(青山学院大)
・右投右打
・龍谷大平安
<リーグ戦通算成績>
試34 率.259(108-28) 本4 点16
打席117 二塁打3 三塁打1 四死球7 盗塁0
出塁率.299 長打率.417 OPS.716
<各塁へのベスト到達タイム>
一塁到達:4.19秒
二塁到達:8.10秒
西川は、関西屈指の名門校、龍谷大平安の出身だ。高校時代は1年秋からベンチ入りし、2年春にはショートとして選抜に出場した。当時は、下位打線だったこともあって、目立つ存在ではなかった。また、3年時には新型コロナウイルス感染拡大の影響で公式戦が中止となり、関西地区担当のスカウトの間でも、全く評判になっていなかったという。
青山学院大進学後、昨年秋まではリーグ戦通算わずか2安打に終わっていたが、今春のオープン戦から結果を残して、開幕4番の座を勝ちとった。その名を広く轟かせることになったのが、今年4月6日に行われた駒沢大との試合だ。
第4打席で、リーグ戦初ホームランとなるスリーランをレフトスタンドに叩き込むと、第5打席でもダメ押しのソロホームランを放った。3安打2本塁打の大活躍でチームを勝利に導いた。
どちらのホームランもスタンド中段まで届く打った瞬間に分かる当たり。4番を任されているのも、納得のいく打球だった。打った相手は、いずれも来年のドラフト候補に挙げられている高井駿丞(広島商)と東田健臣(西脇工)。これもまた、西川の実力をよく表している。
その後も、西川は調子を落とすことなく、春のリーグ戦で打率.364、3本塁打、10打点の活躍でベストナインとMVPの2冠に輝く。一気に“戦国東都”を代表する強打者と呼ばれるようになった。
将来の“メジャーリーガー”を打ち砕く
さらに、西川への評価が上昇する出来事があった。
今年6月の大学選手権では、4試合で7安打、1本塁打を放ち、青山学院大の日本一に大きく貢献した。さらに、大学日本代表に選出された西川は、日米大学野球で4番を任され、将来のメジャーリーガーを相手に、5試合で3割を超える打率を残している。昨年まで実績がほぼゼロに等しかった選手が、短期間で結果を残すと予想していた関係者はいなかったのではないだろうか。
最大の持ち味は、豪快なフルスイングだ。しかし、闇雲にバットを振り回しているわけではない。タイミングをとるときに無駄がなく、左足を踏み出す動きも極めて慎重なため、長くボールを見ることができるのだ。ファーストストライクからどんどん振る積極的な姿勢に加えて、追い込まれてから、変化球についていく対応力も備えている。
チーム事情で今年はレフトを守っていたが、前述したように高校時代はショートで、脚力と肩の強さも申し分なく、センターや内野を守れるポテンシャルもありそうだ。
今秋のリーグ戦は、厳しいマークに悩まされて、打率は2割台前半と苦しんだとはいえ、11月の明治神宮大会では、初戦の日本文理大戦で打った瞬間に分かるホームランをレフトスタンド中段に放り込んでいる。これで、全国大会は春に続くホームランとなり、大舞台での強さを見せつけた。
青山学院大は、常広羽也斗(広島1位)、下村海翔(阪神1位)の投手2本柱が卒業で抜けるため、来春以降、西川にかかる期待は、さらに大きくなる。プレッシャーに打ち勝って、今年春と変わらない打撃を見せることができれば、一気に1位指名の可能性が高くなるだろう。来年も見る者を魅了するホームランを数多く放ってくれることを期待したい。
文=西尾典文(にしお・のりふみ)
☆記事提供:プロアマ野球研究所