セ・リーグ連覇から一転、ヤクルトは5位に沈んだ。
首位・阪神から29ゲーム差。最終戦の阪神相手にサヨナラ勝ちで最下位の危機は脱したが、中日とはゲーム差なし、限りなく惨敗に終わったシーズンだった。
優勝した21年のチーム打率.254はリーグ3位で、同防御率3.48が3位。翌22年もチーム打率.250で3位、同防御率3.52は4位。決して盤石な強さを誇った内容ではない。それでいて連覇できたのは爆発的な得点力にあった。チーム総得点に限れば21年の625、昨年の619点はいずれもトップ。三冠王・村上宗隆選手の大車輪の働きをはじめ、弱体投手陣を強力打線がカバーしたことが数字上からも裏付けられる。
では、今季はどうだったのか?
チーム打率.239はリーグ5位と落ち込み、同防御率に至っては3.66でワーストに沈んでいる。打線の破壊力も本塁打で前年から51本少なく、得点力は85点減。これでは最下位に近い5位も納得だろう。
開幕から5連勝と勢いよく飛び出したが、4月後半に7連敗を喫して失速。5位に転落するとその後、浮上することはなかった。
最大の要因は故障者の続出と主力の高齢化にある。
野手では山田哲人、塩見泰隆両選手の“飛車角コンビ”が下半身のコンディション不良で夏場を前にリタイア。コロナ禍では中村悠平、青木宣親らが戦列を離れ、主砲の村上はWBC疲れと他球団の徹底マークにあい、交流戦前までは打率が2割そこそこの低空飛行にあえいでいる。
投手陣では21年の優勝時に活躍した奥川恭伸がひじ痛や足首捻挫でこの2年間は未勝利、もう一人のエース候補・高橋奎二も今季は4勝9敗と成績を落とした。気がつけばV戦士たちの高齢化も進み、現役最年長投手の石川雅規は来季44歳、野手の精神的支柱である青木も同42歳、代打の切り札である川端慎吾37歳など、選手生命の終盤に差し掛かっている。
「今回の日本シリーズ、タイガースを見てもオリックスを見てもやっぱりピッチャーだよね。(中略)ピッチャーが良くないと点は防げない。点を取られない投手陣は強いチームのあり方だと思う」
11月22日付『日刊スポーツ』のインタビューで高津臣吾監督は今季を振り返りながら反省点を挙げている。それはそのまま来季の逆襲のシナリオに通じる。
ドラフトでは1位の西舘昂汰(専大)から同2位松本健吾(トヨタ自動車)同3位石原勇輝(明大)まで即戦力投手を指名。FAでは山﨑福也投手の獲得こそ失敗に終わったが、現在はDeNAからFA志望の石田健大投手に的を絞ってアタック。加えて、この2年間鳴かず飛ばずに終わった奥川が秋季キャンプの対外試合で好投を見せるなど復活の気配も見せている。
来季が23歳の奥川と27歳になる高橋が左右の両輪になり、2年目の吉村貢司郎まで先発ローテーションに収まれば、再び戦える布陣となるはずだ。
打線では、二度目の三冠王を誓う村上の完全復活もさることながら、やはりその前を打つ塩見と山田の復調がカギを握る。
今季は体調不良や腰痛に悩まされた塩見だが、走攻守で見せるポテンシャルはチーム一。かつての「トリプルスリー男」山田もまだ老け込む歳ではない。ドミンゴ・サンタナとホセ・オスナの外国人選手は他球団の助っ人に比べても遜色ない。ここに優勝時に勢いをつけた長岡秀樹、内山壮真らの若手野手がさらに成長すれば、下位に低迷するチームではない。
今季を振り返って、指揮官は「こんな悔しいことはない。絶対にやり返してやるという気持ちは強い」と語る。
指導陣では一軍のヘッド格に今季までバッテリー兼作戦補佐担当だった嶋基宏コーチを抜擢して、今まで以上の厳しさを植え付けようとしているのも新たな挑戦だ。
4年前に誕生した高津政権は、最下位の屈辱からスタートした。その悔しさをバネに翌年から日本一、リーグ連覇と偉業を達成したが、今季は再び下位に逆戻り。ジェットコースターのような目まぐるしい戦いの中で得た課題と教訓を新たなシーズンに生かしたい。
これまでは選手の自主性を生かして、のびのびと戦わせてきたスワローズが監督を含めてどんな変身を遂げるのか。
虎視眈々と主役の座への返り咲きを狙っている。
文=荒川和夫(あらかわ・かずお)
首位・阪神から29ゲーム差。最終戦の阪神相手にサヨナラ勝ちで最下位の危機は脱したが、中日とはゲーム差なし、限りなく惨敗に終わったシーズンだった。
優勝した21年のチーム打率.254はリーグ3位で、同防御率3.48が3位。翌22年もチーム打率.250で3位、同防御率3.52は4位。決して盤石な強さを誇った内容ではない。それでいて連覇できたのは爆発的な得点力にあった。チーム総得点に限れば21年の625、昨年の619点はいずれもトップ。三冠王・村上宗隆選手の大車輪の働きをはじめ、弱体投手陣を強力打線がカバーしたことが数字上からも裏付けられる。
故障者の続出と主力の高齢化が低迷の要因
チーム打率.239はリーグ5位と落ち込み、同防御率に至っては3.66でワーストに沈んでいる。打線の破壊力も本塁打で前年から51本少なく、得点力は85点減。これでは最下位に近い5位も納得だろう。
開幕から5連勝と勢いよく飛び出したが、4月後半に7連敗を喫して失速。5位に転落するとその後、浮上することはなかった。
最大の要因は故障者の続出と主力の高齢化にある。
野手では山田哲人、塩見泰隆両選手の“飛車角コンビ”が下半身のコンディション不良で夏場を前にリタイア。コロナ禍では中村悠平、青木宣親らが戦列を離れ、主砲の村上はWBC疲れと他球団の徹底マークにあい、交流戦前までは打率が2割そこそこの低空飛行にあえいでいる。
投手陣では21年の優勝時に活躍した奥川恭伸がひじ痛や足首捻挫でこの2年間は未勝利、もう一人のエース候補・高橋奎二も今季は4勝9敗と成績を落とした。気がつけばV戦士たちの高齢化も進み、現役最年長投手の石川雅規は来季44歳、野手の精神的支柱である青木も同42歳、代打の切り札である川端慎吾37歳など、選手生命の終盤に差し掛かっている。
投手陣の立て直しが逆襲のカギ
「今回の日本シリーズ、タイガースを見てもオリックスを見てもやっぱりピッチャーだよね。(中略)ピッチャーが良くないと点は防げない。点を取られない投手陣は強いチームのあり方だと思う」
11月22日付『日刊スポーツ』のインタビューで高津臣吾監督は今季を振り返りながら反省点を挙げている。それはそのまま来季の逆襲のシナリオに通じる。
ドラフトでは1位の西舘昂汰(専大)から同2位松本健吾(トヨタ自動車)同3位石原勇輝(明大)まで即戦力投手を指名。FAでは山﨑福也投手の獲得こそ失敗に終わったが、現在はDeNAからFA志望の石田健大投手に的を絞ってアタック。加えて、この2年間鳴かず飛ばずに終わった奥川が秋季キャンプの対外試合で好投を見せるなど復活の気配も見せている。
来季が23歳の奥川と27歳になる高橋が左右の両輪になり、2年目の吉村貢司郎まで先発ローテーションに収まれば、再び戦える布陣となるはずだ。
打線では、二度目の三冠王を誓う村上の完全復活もさることながら、やはりその前を打つ塩見と山田の復調がカギを握る。
今季は体調不良や腰痛に悩まされた塩見だが、走攻守で見せるポテンシャルはチーム一。かつての「トリプルスリー男」山田もまだ老け込む歳ではない。ドミンゴ・サンタナとホセ・オスナの外国人選手は他球団の助っ人に比べても遜色ない。ここに優勝時に勢いをつけた長岡秀樹、内山壮真らの若手野手がさらに成長すれば、下位に低迷するチームではない。
今季を振り返って、指揮官は「こんな悔しいことはない。絶対にやり返してやるという気持ちは強い」と語る。
指導陣では一軍のヘッド格に今季までバッテリー兼作戦補佐担当だった嶋基宏コーチを抜擢して、今まで以上の厳しさを植え付けようとしているのも新たな挑戦だ。
4年前に誕生した高津政権は、最下位の屈辱からスタートした。その悔しさをバネに翌年から日本一、リーグ連覇と偉業を達成したが、今季は再び下位に逆戻り。ジェットコースターのような目まぐるしい戦いの中で得た課題と教訓を新たなシーズンに生かしたい。
これまでは選手の自主性を生かして、のびのびと戦わせてきたスワローズが監督を含めてどんな変身を遂げるのか。
虎視眈々と主役の座への返り咲きを狙っている。
文=荒川和夫(あらかわ・かずお)