「自信を持って19番を背負っていきたい」
大きな「志」と重みある「19」を背負いプロでの第一歩を踏み出した。
12月11日、大阪市内のホテルで開かれたタイガースの新入団選手発表会見。タイガースのドラフト1位・下村海翔は“西宮っ子”としての率直な思いを口にした。
「自分は西宮出身っていうことで、(タイガースのユニホームは)小さい頃からずっと見てきているものなので、少し不安な気持ちもあるんですけど、袖を通してみて実感が沸いてきました」
甲子園球場のある西宮市で生まれ育った右腕は、タテジマに袖を通すことの意味を同期入団のルーキーたちの中で誰よりも噛みしめているようだった。
「候補をいただいて。その中で自分で選んだ番号なんで。(候補に)19番が入っていたことがまずは嬉しくて。期待の表れだと思うので。自信を持って19番を背負っていきたい」
真新しいユニホームの背中には「19」が刺繍されていた。入団が決まり、球団から提示された複数の背番号の中で10番台の希望を秘めていた右腕は迷いなく選択。近年では、今季からメジャーリーグに挑戦した藤浪晋太郎が10年間、付けてきた。
「藤浪の19」のイメージを「19は下村」に変える――。そんな気概を言葉に込めた。
「歴代の19番背負った人と競うんじゃなくて、自分の目標を設定してクリアしていきたい。やっぱり結果を残すことが一番。阪神の19番は藤浪選手とか歴代の選手のイメージが強いと思う。活躍していったらそれも変わってくるのかなって」
「体が小さくてもやれるってことをプロの舞台で証明したい」
そして、174センチとプロでは決して大きくない下村には果たすべき使命もある。
「小さい頃は足とか遅くて、チームでも下から3番目ぐらい。体も小さくて、その時から大きいやつに負けたくないなってのはずっと思ってやってきた。体が小さくてもやれるってことをプロの舞台で自分が活躍することで証明して、自分と同じように負い目を感じてる選手に希望を与えられるような選手になりたい」
サイズの大小を言い訳にはできない。そんな厳しい世界に21歳の若武者は足を踏み入れた。
今秋のドラフト会議で岡田彰布監督が他球団との競合を避けて“1本釣り”に成功した大学屈指の本格派右腕は、最速155キロの直球に加えて、キレ味鋭いカットボールを中心に多彩な変化球も武器。
すでに指揮官は来春1軍キャンプスタートを明言するなど、1年目からチームのリーグ連覇達成への大きな戦力として期待されている。
「自分と同じぐらいの身長で不安とか抱えている小さい子どもたちに活躍することで勇気や希望を与えると思うので、そういう選手を目指して頑張りたい」
“ジャイアントキリング”の心意気で小さな大投手への道を切り開いていく。
文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)