12月1日から3日までの3日間、愛媛県松山市の「坊っちゃんスタジアム」で大学日本代表候補選手の強化合宿が行われた。参加者は、全国から選ばれた投手18人、捕手6人、内野手12人、外野手8人の合計44人。内容はシートノック、フリーバッティングなど基本的な練習と、3チームに分かれて総当たりでの紅白戦3試合、50メートル走のタイム測定などだった。特に目立った来年のドラフト候補について、レポートしていきたい。今回は投手編である。
参加選手の中で、最も強烈なインパクトを残したのが、中村優斗(愛知工業大3年・諫早農)。今回が大学日本代表候補の初選出となった。レベルの高い愛知大学野球リーグで今年春、秋連続で最多奪三振のタイトルをマークするなど、活躍している右腕だ。
紅白戦では、立ち上がりに、いきなり味方の連続エラーでノーアウト一・二塁のピンチを招くも、吉納翼(早稲田大3年・東邦)をピッチャーゴロ併殺打、渡部聖弥(大阪商業大3年・広陵)をショートゴロにそれぞれ打ち取る。東西の大学球界を代表する強打者を抑えて、無失点で切り抜けた。続くイニングは三者凡退。2回を被安打0、四死球0、1奪三振で無失点だった。
特に、ストレートのスピードと勢いに目を見張るものがあった。渡部との対戦で投じた4球目。球場表示は157キロで、筆者のスピードガンでは153キロをマークした。それ以外のボールもほとんどが150キロ前後を計測している。ちなみに、筆者のスピードガンで150キロを超えた投手は、18人のなかで、中村のみだ。12月という時期を考えれば、規格外のスピードといえる。
また、投じた25球のうちボール球は7球だけと制球力が高く、鋭く変化するカットボールとスプリットも一級品だ。中村は、これまで全国大会の出場経験がない。東海地区の担当以外は初めて、彼のピッチングを見たというスカウトが多く、口々に称賛していた。既に、実力は“ドラ1候補”。来年、全国の舞台や国際大会で結果を残せば、さらにプロ側の評価が上がるだろう。
一方、現時点で大学生投手の目玉候補と見られている金丸夢斗(関西大3年・神港橘)もまた、見事な投球を披露した。味方のエラーで走者を背負い、2本のタイムリーを浴びて2失点だったものの、自責点は0。ストレートの最速は、中村に次ぐ149キロをマークしている(筆者のスピードガンで計測)。
“ドラ1候補”にふさわしいピッチングを見せたのは、大学生野手の目玉候補に挙がる宗山塁(明治大3年・遊撃手・広陵)との対戦だ。
真ん中低めへのストレートと外角低めへのスライダーで追い込むと、最後は149キロのストレートで空振り三振を奪った。秋のリーグ戦でフル回転の活躍を見せた影響があって、本調子ではなかったという金丸。しかし、宗山との対戦では明らかにギアを上げており、指にかかったストレートの勢いは圧倒的だった。
立ち上がりは、少しばらつきが目立ったものの、2回は三者凡退に抑えている。投じた33球中、ボール球はわずか9球。この数字から分かるように制球力が高い。今年は春、秋ともにあと一歩で全国の舞台を逃している。来年は、神宮球場や東京ドームでの快投を期待したい。
この他の投手では、徳山一翔(環太平洋大3年・鳴門渦潮)と寺西成騎(日本体育大3年・星稜)は、ともに2回を投げて1失点は喫したものの、期待通りの投球を見せた。
徳山は11月の明治神宮大会に比べると、少しストレートは抑え気味だったが、それでも筆者のスピードガンで最速148キロをマークした。
スライダー、チェンジアップなど変化球の精度は、明治神宮大会よりも高く、前出の宗山との対戦では、ショートゴロ併殺打に打ちとっている。金丸に次ぐ大学生左腕として、今後も高い注目を集めそうだ。
寺西は、2回で3安打を浴びたものの、常時145キロを超えるストレートと140キロに迫るスプリットの質の高さが目立った。また33球中、ボール球はわずか7球と安定したコントロールも見事。こちらも徳山と同様に、明治神宮大会からそれほど間が空いておらず、調整も難しかったはずだが、高いパフォーマンスを見せてくれた。
2年時に大学日本代表入りしており、東京六大学の目玉候補とされる篠木健太郎(法政大3年・木更津総合)は、本調子とは程遠い投球だった。この点は、少し心配だったが、それ以外の投手では、佐藤柳之介(富士大3年・東陵)は2回で4奪三振、坂口翔颯(国学院大3年・報徳学園)は1回2/3で3奪三振とそれぞれ好投した。
「大豊作」と言われた今年の4年生に比べて、この時期としては十分な投球を見せていた投手が多い。ここで紹介した中から1位指名が多く誕生することが十分に期待できるだろう。
文=西尾典文(にしお・のりふみ)
☆記事提供:プロアマ野球研究所
12月に157キロを計測!
参加選手の中で、最も強烈なインパクトを残したのが、中村優斗(愛知工業大3年・諫早農)。今回が大学日本代表候補の初選出となった。レベルの高い愛知大学野球リーグで今年春、秋連続で最多奪三振のタイトルをマークするなど、活躍している右腕だ。
紅白戦では、立ち上がりに、いきなり味方の連続エラーでノーアウト一・二塁のピンチを招くも、吉納翼(早稲田大3年・東邦)をピッチャーゴロ併殺打、渡部聖弥(大阪商業大3年・広陵)をショートゴロにそれぞれ打ち取る。東西の大学球界を代表する強打者を抑えて、無失点で切り抜けた。続くイニングは三者凡退。2回を被安打0、四死球0、1奪三振で無失点だった。
特に、ストレートのスピードと勢いに目を見張るものがあった。渡部との対戦で投じた4球目。球場表示は157キロで、筆者のスピードガンでは153キロをマークした。それ以外のボールもほとんどが150キロ前後を計測している。ちなみに、筆者のスピードガンで150キロを超えた投手は、18人のなかで、中村のみだ。12月という時期を考えれば、規格外のスピードといえる。
また、投じた25球のうちボール球は7球だけと制球力が高く、鋭く変化するカットボールとスプリットも一級品だ。中村は、これまで全国大会の出場経験がない。東海地区の担当以外は初めて、彼のピッチングを見たというスカウトが多く、口々に称賛していた。既に、実力は“ドラ1候補”。来年、全国の舞台や国際大会で結果を残せば、さらにプロ側の評価が上がるだろう。
目玉候補もさすがのピッチング!
一方、現時点で大学生投手の目玉候補と見られている金丸夢斗(関西大3年・神港橘)もまた、見事な投球を披露した。味方のエラーで走者を背負い、2本のタイムリーを浴びて2失点だったものの、自責点は0。ストレートの最速は、中村に次ぐ149キロをマークしている(筆者のスピードガンで計測)。
“ドラ1候補”にふさわしいピッチングを見せたのは、大学生野手の目玉候補に挙がる宗山塁(明治大3年・遊撃手・広陵)との対戦だ。
真ん中低めへのストレートと外角低めへのスライダーで追い込むと、最後は149キロのストレートで空振り三振を奪った。秋のリーグ戦でフル回転の活躍を見せた影響があって、本調子ではなかったという金丸。しかし、宗山との対戦では明らかにギアを上げており、指にかかったストレートの勢いは圧倒的だった。
立ち上がりは、少しばらつきが目立ったものの、2回は三者凡退に抑えている。投じた33球中、ボール球はわずか9球。この数字から分かるように制球力が高い。今年は春、秋ともにあと一歩で全国の舞台を逃している。来年は、神宮球場や東京ドームでの快投を期待したい。
この他の投手では、徳山一翔(環太平洋大3年・鳴門渦潮)と寺西成騎(日本体育大3年・星稜)は、ともに2回を投げて1失点は喫したものの、期待通りの投球を見せた。
徳山は11月の明治神宮大会に比べると、少しストレートは抑え気味だったが、それでも筆者のスピードガンで最速148キロをマークした。
スライダー、チェンジアップなど変化球の精度は、明治神宮大会よりも高く、前出の宗山との対戦では、ショートゴロ併殺打に打ちとっている。金丸に次ぐ大学生左腕として、今後も高い注目を集めそうだ。
寺西は、2回で3安打を浴びたものの、常時145キロを超えるストレートと140キロに迫るスプリットの質の高さが目立った。また33球中、ボール球はわずか7球と安定したコントロールも見事。こちらも徳山と同様に、明治神宮大会からそれほど間が空いておらず、調整も難しかったはずだが、高いパフォーマンスを見せてくれた。
2年時に大学日本代表入りしており、東京六大学の目玉候補とされる篠木健太郎(法政大3年・木更津総合)は、本調子とは程遠い投球だった。この点は、少し心配だったが、それ以外の投手では、佐藤柳之介(富士大3年・東陵)は2回で4奪三振、坂口翔颯(国学院大3年・報徳学園)は1回2/3で3奪三振とそれぞれ好投した。
「大豊作」と言われた今年の4年生に比べて、この時期としては十分な投球を見せていた投手が多い。ここで紹介した中から1位指名が多く誕生することが十分に期待できるだろう。
文=西尾典文(にしお・のりふみ)
☆記事提供:プロアマ野球研究所