コラム 2023.12.21. 19:58

猫になった獅子の打開策とは?【逆襲へのシナリオ】

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西武・松井稼頭央監督 (C)Kyodo News
“投高打低”の西武がそれでも、投手王国作りに突き進んでいる。

 松井稼頭央新監督を迎えて臨んだ今季は、前年の3位から5位に沈んだ。

 元凶は、低調な打線にあることは明らかだ。

 チーム防御率(2.93)はオリックスに次ぐ2位に対して同打率(.233)は5位。チーム得点(435)と同本塁打(90)は最下位だから、浮上のカギは打線の強化に尽きる。

 だが、今オフの補強を見ると、新人のドラフトでは大学ナンバーワン左腕の武内夏暉(国学院大)を競合の末に1位で獲得すると、5位の宮澤太成(独立リーグ・徳島)まですべて投手を指名。ここまで徹底した戦略は12球団で西武だけのことだった。さらに現役ドラフトでも広島から中村祐太投手を獲得。何が何でも投手力強化と言う球団の意思が見えて来る。


 その背景にはエースたちのメジャー志向がある。

 3年連続開幕投手を務めた髙橋光成は2年前からポスティングによるメジャー挑戦を球団に直訴。さらに今季から先発に転向して11勝をマークした平良海馬と2ケタ勝利の今井達也も海外志向を隠さない。球団の事情もあって、今すぐは無理でも、数年後には他球団も一目置く強力先発陣が崩壊の危機にさらされてもおかしくない。

 加えて、今季はクローザーの増田達至が打ち込まれる場面も増えている。昨年まで救援陣を支えていた平良が先発に回ったことでゲームの終盤を任せられる投手にも不安がある。そうなると、まずは投手陣を盤石にすることが専決事項となった訳である。

 18、19年とパ・リーグを連覇したものの、クライマックスシリーズでソフトバンクに敗れて日本一の道は閉ざされた。当時は完全な“打高投低”のチームだった。19年には首位打者に森友哉、本塁打王に山川穂高、打点王が中村剛也で最多安打は秋山翔吾各選手と西武勢が打撃タイトルを独占。それが今ではチームに残っているのが40歳の中村だけ。他の強打者はいずれもFAでチームを去っていった。

 近年の西武はFA流失によってチームの弱体化を招いている。そこにメジャー挑戦の波も押し寄せるのだから、立て直しは容易ではない。


大物揃いの新外国人が機能すれば巻き返しも見えて来る


 では、ひ弱な打線をどうやって克服しようとしているのか? 答えは新外国人による補強だ。

 このオフ、矢継ぎ早に発表された助っ人たちの顔ぶれを見ると、かなりの大物揃いだ。

 1人目はヘスス・アギラー内野手。ベネズエラ出身の右の大砲でメジャー通算114本塁打を記録、山川の抜けた「一塁・四番」の期待がかかる。

 2人目は前ヤンキースのフランキー・コルデロ外野手でメジャー4球団を渡り歩いた長距離砲。本塁打の最長飛距離は149メートルと規格外のパワーがセールスポイントだ。

 源田壮亮、外崎修汰両選手以外にレギュラー確定の選手がいない現状。“おかわり二世”と呼ばれる渡部健人や、昨年のドラフト1位・蛭間拓哉選手ら将来性豊かな人材はいる。

 そこにこの両外国人がクリーンアップで収まれば、戦える布陣になって来る。さらに、新守護神候補として最速101.2マイル(約162.9キロ)を誇る前ヤンキースのアルバート・アブレイユ投手も獲得。今季から大きく顔ぶれの変わった外国人勢が上手く機能すれば巻き返しも見えて来る。


 主砲の山川が女性への暴行問題で出場停止が続く中、首脳陣は若手を辛抱強く起用することで、チームの底上げを図ってきた。松井監督の目指す機動力野球は前年の60盗塁から今季は80盗塁に増やすなど一定の方向性は見えている。そこに最も必要な長打力の肉付けができればチームは生まれ変わる。

 絶対的なエース、山本由伸が抜けるオリックスだが、それでも投打のバランスはいい。ソフトバンクは山川の加入で近藤健介、柳田悠岐との強力クリーンアップが完成する。2年連続最下位に沈んだ日本ハムも山﨑福也の移籍や万波中正らの成長で伸びしろを感じる。

 今年以上に混戦の予想されるパ・リーグで、かつての王者・西武が再び、主役の座に戻れるのか? その鍵は新外国人が握っている、と見た。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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