「強くなっていくためには、上の世代に頼ったらダメ」
元竜エースで侍ジャパンの吉見一起投手コーチが次世代エース髙橋宏斗に今年3月の侍強化試合・欧州代表戦(来年3月6、7日・京セラドーム大阪)でシーズンをスタートさせて、3月29日のヤクルト戦(神宮)でペナントレース開幕投手を務め、2年連続規定投球回を達成して11月の日本代表プレミア12のメンバーに選ばれるプランを提示した。それこそが、竜のエース街道となる。
まずは欧州代表戦のリストアップについて「もちろん入っています。来年11月のプレミア12をにらんだ強化試合です」と話し始めた。
右腕は3月のWBCでは最年少メンバーとして優勝に貢献。決勝・米国戦でも投げた。
今年11月の井端ジャパン発足の「アジアプロ野球チャンピオンシップ」ではメンバーから除外されている。WBCに始まり、初めて規定投球回に到達した疲労などを考慮された結果だった。
欧州代表はあくまでペナントレースへの助走期間。イニングも限定されるだろう。所属球団は調整期間の場をオープン戦から日本代表へと切り替えさえて送り出す。同コーチが望むのは髙橋宏の開幕投手だった。
「数年前は右左のエースで大野(雄大)、柳(裕也)と言われていました。でも、もうそこを頼る必要はないと思う。『大野さん、もう黙っていてください』っていうか、実際今年は仕事をしていないわけだし(大野は左肘手術でシーズン登板1試合)、仕事をした人間が僕は開幕投手をするべきだと思うんです」
候補に挙げたのは3投手。柳、小笠原慎之介、髙橋宏。
「柳が一番いいかなと思います、正直。はっきり言って、ゲームつくれるので。でも、もう一つ下の世代がやってほしい。これから強くなっていくためには、上の世代に頼ったらダメなんです」
「メリハリさえ覚えたらそうそう負けるピッチャーではない」
竜OBとして歯がゆい思いをしていた。「特に野手の若い選手が殻を破れなかった。宏斗、小笠原とかが『僕たちが中心になってやっていきますよ』っていう意気込みを出していかないといけないと思います。だから、宏斗、小笠原とかがしてもいいんじゃないかなと思います」と話す。
髙橋宏には勝つ投手になってもらいたい。今年は高卒3年目だった。昨季1軍デビューし、今季は初の規定投球回に到達した。勝敗は7勝11敗。4つの負けが先行した。
「2年間1軍で投げて『ただ投げるだけだと勝てないな、良い時は抑えられるけど、良くない時は勝てないな』というのを学んだと思う。悪いときでも、悪いなりに7回1失点、8回1失点でしっかり試合をつくるかどうか。そこに結果としての勝ちました、負けましたがついてくるんです。フォームを緩ませるんじゃなくて、どこでギアを上げてどこでちょっと抑えていくのか。メリハリさえ覚えたらそうそう負けるピッチャーではないと思います」と語った。
150キロ台の力強い速球と切れ味鋭いスプリットは一級品。カーブを含めた球種をどう織り交ぜて、球数と失点を少なくイニングを積み重ねていけるか。吉見コーチは侍ジャパンの投手コーチとして、そして竜の次世代エースの台頭を待つかつてのエースとして、自らの背負った背番号19の継承者を厳しく、温かく、見守っている。
文=川本光憲(中日スポーツ・ドラゴンズ担当)