コラム 2023.12.31. 17:30

評論家になった現役投手も…非情の戦力外通告から浪人を経て復活した男たち

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中日では中継ぎとして3シーズンで78試合に登板した河原純一(C)Kyodo News

思いがけない幸運が舞い込んだ


 2018年のパ・リーグ最多勝投手・多和田真三郎(元西武)が2年のブランクを経て、11月15日の12球団合同トライアウトを受験した。打者3人を相手に無安打1奪三振、1四球という結果に、多和田は「まだ100パーセントまでは、いっていないですけど、それよりもまず(ファンに)元気な姿を見せられて良かったと思います」とNPB復帰への思いを語った。そして、過去にも浪人を経て、見事復活を遂げた男たちが存在する。


「評論家を務める現役投手」として一浪したあと、古巣復帰をはたしたのが、小宮山悟だ。

 横浜時代の2001年、自己最多タイの12勝を挙げた小宮山は、オフにFA権を行使して、ロッテ時代に投球の面白さを教えてくれたボビー・バレンタインが監督を務めるメッツに移籍。「(現役)最後にメジャーに挑戦したい」の夢を実現した。

 だが、翌02年は25試合で0勝3敗、防御率5.61に終わり、メッツと翌年の契約を結べず、バレンタイン監督も更迭された。その後、他球団からのオファーもなく、国内復帰の場合、優先権のある古巣・横浜も、若手に登板機会を与えたい山下大輔監督の戦力構想から外れたため、復帰は見送られた。

 さらに国内他球団も、小宮山が03年中に横浜以外の球団でプレーすると、FA上のルールにより、約1億7500万円の補償金を横浜に支払わなければならないとあって、獲得に動くことはなかった。

 この結果、小宮山は現役投手でありながら、野球解説者を務めるという異例の浪人生活を送ることになったが、すでに38歳。1年のブランクを経て、翌04年にプレーできる可能性は低かった。自著「『まわり道』の効用―画期的『浪人のすすめ』」(講談社)によれば、「現役引退をいつ発表しようか」考えはじめていたという。

 ところが、ここで思いがけない幸運が舞い込んできた。恩師・バレンタインが翌年からロッテの監督に復帰することが決まり、「力を貸してほしい」と声をかけてきたのだ。

「自分でも『奇跡に近い』と思った」5年ぶりの古巣復帰に感謝した小宮山は、04年は主に先発として3勝を挙げ、05年以降は新魔球「シェイク」を武器に、リリーフでチームに貢献。44歳まで現役を続けた。


古巣の“本拠地”で初のお立ち台


 ロッテ時代のバレンタイン監督はもう一人、浪人生活を送っていた選手をチームに復帰させている。“足のスペシャリスト”代田建紀だ。

 1998年にドラフト6位で近鉄に入団した代田は、50メートル5秒6の俊足を売りに、ヤクルト時代の2001年にイースタン新の60盗塁を記録したが、1軍に定着できないまま、02年オフに戦力外通告を受け、3球団目のロッテにテスト入団した。

 ロッテでは、代走のみならず自己最多の38打席に立ったが、1番センターで先発出場した03年10月12日のシーズン最終戦のオリックス戦、第3打席の遊ゴロで一塁に全力疾走した際に、ベース手前で一塁手の葛城育郎と交錯して転倒。左膝半月板損傷、前十字靭帯部分断裂の重傷を負ってしまう。さらに2日後、追い打ちをかけるように球団から非情の戦力外通告を受けた。

 一度は引退を考えた29歳だったが、周囲の励ましに支えられ、手術、リハビリを経て、翌04年11月のトライアウトを受験。走塁センスを高く評価したバレンタイン監督が強力にプッシュし、ロッテ復帰が決まる。

 そして、06年7月29日のオリックス戦、代田は5回に吉井理人から左前決勝タイムリーを放ち、プロ初のお立ち台に。「(ケガをして)そのまま辞めてたら、人生で一番悔いが残ると思っていました。監督や無職の日々を支えてくれた人たち、両親、妻に感謝で一杯です」と苦労人ならではの言葉を口にしている。


中日にテスト入団した元巨人の“ドラ1”


 戦力外通告を受けたあと、1年間の浪人生活の間に故障を治し、見事復活をはたしたのが、河原純一だ。

 1995年に逆指名1位で巨人に入団した河原は1年目に3完封を含む8勝をマーク。原辰徳監督時代の2002年には抑えで5勝28セーブを記録し、リーグ優勝と日本一に貢献した。

 だが、翌03年以降は救援失敗を繰り返し、05年開幕直前に後藤光貴との交換トレードで西武へ。その西武では先発復帰も、同年は2勝11敗、防御率5.38と結果を出せず、シーズン終盤には右膝靭帯を損傷。手術後も1軍でほとんど登板機会がないまま、07年オフに戦力外通告を受けた。

 トライアウトを受験したが、どこからも声がかからず、浪人を決意した河原は、母校・駒大などでトレーニングを続けながら、膝を完治させた。「1年間実戦の場を離れたことで、自分を客観的に見ることができた」という意味でも貴重な体験だった。

 そして、08年10月31日、大学の先輩・森繁和バッテリーコーチの伝手で中日のテストを受けて合格。年俸600万円で契約した。

「勝負の世界に戻ってこられて、気持ちが引き締まるし、緊張している。チームのためにひとつでも多くアウトを取りたい」と2年ぶりのNPB復帰に意欲を新たにした右腕は翌09年、リリーフとして3勝15ホールド、防御率1.85の好成績を挙げ、年俸も5倍の3000万円(金額はいずれも推定)に上がった。


文=久保田龍雄(くぼた・たつお)

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