コラム 2023.12.31. 18:30

“セルフ戦力外”になった選手も…FA宣言したのに“オファーなし”の悲劇

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2015年にFA宣言した広島・木村昇吾

年俸は4100万円から半減


 今オフは、山川穂高(西武)や西川龍馬(広島)、山崎福也(オリックス)らがFA権を行使し、今後の動向が注目される。複数年の大型契約が見込まれ、一見華やかなイメージのあるFA移籍だが、あくまでニーズがあってのもの。過去にはFA宣言したにもかかわらず、オファーなしという厳しい現実に直面した男たちもいる(金額はいずれも推定)。

 FA宣言したのに、手を挙げる球団がなく、“セルフ戦力外”になったのが、“松坂世代”の一人、木村昇吾だ。

 2008年に横浜から広島に移籍した木村は、11年に負傷の梵英心に代わって6月からショートのレギュラーになり、自己最多の106試合出場、打率.259、37犠打と主に2番打者としてチームに貢献。13年にも負傷の堂林翔太に代わってサードを守り、規定打席不足ながら打率.325、1本塁打、12打点をマークするなど、攻守にわたってアピールした。

 だが、田中広輔が正遊撃手に定着した15年は、72試合出場にとどまり、打席数も前年の253から109に減った。これまでレギュラーとしてフルシーズン働いた経験がない木村は、「常にレギュラーで出ていた選手であれば現状に満足できたかもしれない。でも、シーズンの半分くらいしかスタメンに出られないからこそ、よりスタメンで出たいという思いが強いのかもしれない」とさらなるチャレンジを求めて、同年11月10日、海外FA権を行使した。

 35歳という年齢は微妙ながら、内野の全ポジションとレフトを守れるユーティリティープレーヤーであり、年俸4100万円は人的補償のないCランク。獲得に興味を示す球団もいくつかあると思われた。

 ところが、1カ月以上を過ぎてもオファーはなく、広島はFA宣言後の残留を認めていないことから、所属球団なしの危機に陥った。ネットなどで“セルフ戦力外”、“勘違いFA”と揶揄され、「野球人生で一番不安になった」という。しかし12月25日、電話での売り込みが功を奏し、支配下に2人分空きがある西武が翌16年の春季キャンプで入団テストを行うことを決めた。FA権を行使した選手がテスト生になったのは、前代未聞の珍事だった。

 そして、同年2月5日に合格をかち取り、年俸2000万円プラス出来高で契約となった。「思い切って野球ができる幸せ。ありがたい気持ちで一杯です」と感謝した木村は背番号「0」で再スタートを切ったが、西武時代は右膝の故障で力を発揮できず、17年の退団後、クリケット選手に転向した。


「自分の実力不足です」


 1軍登板わずか5試合という評価が難しい成績だったにもかかわらず、FA宣言して話題を呼んだのが、ロッテ・松永昂大だ。

 入団1年目の2013年から7年連続40試合以上に登板し、通算132ホールドを記録したリリーフ左腕も、20年は左肘の状態が万全ではなく、登板5試合の投球イニング3回1/3、0勝0敗3ホールド、防御率0.00でシーズンを終えた。

 だが、コロナ禍の影響で試合数が減り、出場登録数が例年の1.3倍に換算されたことにより、幸運な形でFA権を手にした松永は12月3日、「それも運命か何かという感じです。他チームの評価が聞きたいのが一番です」とFA宣言。球団側も宣言残留OKとあって、「残留するにしても、移籍をすることになったとしても、FAをすることで新しい体験ができると思う」と語り、代理人を通じて他球団から声がかかるのを待った。

 しかし、ある程度予想されていたが、年明け後も正式なオファーはなく、1月27日、「自分の実力不足です」と現状維持の年俸7500万円でロッテと再契約した。残留後の松永は、肩痛で2年間1、2軍とも登板のないまま現役引退。長年にわたって実績のある選手でも、いつどうなるかわからないのが野球の怖さだ。


球団から“究極の選択”を迫られた


 メジャー挑戦を目指しながら、獲得に動く球団がなかったため、夢をあきらめた選手もいる。2004年オフに海外FA権を行使した巨人時代の仁志敏久もその一人だ。
 
 同年、自己最多の28本塁打を記録し、1番打者としてチームに貢献した仁志は10月27日、「大リーグでプレーするのが夢。基本的には巨人とメジャーの2つの選択肢を考えている」とFA宣言。大手のスコット・ボラス・コーポレーションと代理人契約を結んだ。

 だが、同年は米国のFA市場の動きが例年以上にスローペースで、井口資仁(ソフトバンク)、稲葉篤紀(ヤクルト)、中村紀洋(近鉄)も、12月を過ぎても移籍先が決まらないでいた。

 そんな逼迫状況のなか、年内にチーム編成を固めたい巨人も、「来年1月中旬まで待ってほしい」とする仁志に対し、12月18日を交渉期限にすると通告。「期限内に回答がなければ、(残留)交渉打ち切りも辞さない」(清武英利球団代表)と究極の選択を迫ってきた。

 その後、交渉期限は仁志の意を受けて、「12月20日」、「年内一杯」と2度にわたって変更されたが、同28日までに米球団から正式な入団要請がなかったことから、仁志は「現時点で一番必要とされているチームに行くのが、最良の選択ではないかと考えた」と腹を括り、2年契約で巨人残留を決めた。

 夢をいったん封印した仁志は、06年オフに自らトレードを志願して、横浜に移籍。横浜退団後の2010年、米独立リーグのランカスター・バーンストーマーズに入団。メジャー入りを目指したが、右太ももを痛め、6月に現役を引退した。


文=久保田龍雄(くぼた・たつお)

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