1月に入るとプロ野球では、新人合同自主トレがスタートする。2024年のルーキーはドラフト1位12人のうち9人が大学生、1人が社会人ということで1年目から戦力になりそうな選手が多い印象だ。2位以下の選手も含めて、特に即戦力として期待できるのは誰なのだろうか、ピックアップしていきたい。今回はパ・リーグ編だ。
一歩、リードしているのが、西武1位の武内夏暉(国学院大)だ。身長185センチ、体重90キロの大型サウスポー。150キロ以上のスピードを誇り、制球力と安定感が際立っている。
無駄な動きの少ないフォームで、高い位置から縦に腕が振れ、コーナーいっぱいに投げ分けることができる。また、スライダーと、縦に鋭く変化するツーシームがしっかり低めに決まる。試合を作る能力は、アマチュア球界で屈指である。
西武の投手陣は、成績が良い一方で、決して選手の層が厚いとはいえない。左の先発は隅田知一郎のみで、武内に寄せられる期待は自然と大きくなる。1年間怪我なく、先発で投げ切ることができれば、二桁近い勝利数をマークする可能性も十分にありそうだ。
ドラフト1位指名の投手では、楽天の古謝樹(桐蔭横浜大)と、日本ハムの細野晴希(東洋大)も楽しみな存在だ。ただ、好不調の波が大きく、制球力に不安が残るため、本格的に一軍の戦力となる時期は、2年目以降になるだろう。
一方、彼らより即戦力の期待が高い投手は、ロッテ2位の大谷龍輝(富山GRNサンダーバーズ)だ。大谷が所属していた富山は“投高打低”の日本海リーグ。夏場以降は全く危なげない投球を続けていた。独立リーグのチャンピオンシップで159キロをマーク。スピードは、すでにNPBの投手のなかで上位に位置している。
フォームは力任せにならず、バランスよく腕が振れている。変化球もこの1年で大きく進化した。2024年7月に24歳になる年齢を考えても、1年目から勝負のシーズンだ。ベテランに頼るロッテのリリーフ陣に割って入り、勝ちパターンに定着することを期待したい。
大谷と同じ2位指名の選手では、西武の上田大河(大阪商業大)とソフトバンクの岩井俊介(名城大)は、短いイニングであれば、1年目から一軍の戦力となる可能性は高いだろう。
下位指名の投手で活躍が期待できる投手は、ソフトバンク5位の澤柳亮太郎(ロキテクノ富山)と、オリックス6位の古田島成龍(日本通運)だ。
澤柳は、リリーフタイプの本格派右腕。全身を大きく使ったフォームで、球持ちがよく、落差のあるカーブとブレーキ鋭いフォークを操る。ソフトバンクは、実績のある中継ぎ投手が多く抜けた。沢柳はルーキーイヤーからブルペン陣の一角に加わりたい。
古田島は、社会人野球で屈指の投手陣を誇る日本通運で入社1年目から主戦投手を任された右腕だ。縦に鋭く腕が振れ、打者の手元で勢いのあるストレートと、緩い変化球とのコンビネーションを生かした投球に安定感がある。オリックスは、山本由伸(現・ドジャース)と山崎福也(現・日本ハム)という先発の柱がいなくなった。ライバルが多く競争は厳しいと思われるが、古田島が1年目から入り込むチャンスはありそうだ。
一方の野手。筆頭候補は、日本ハム2位で捕手の進藤勇也(上武大)だ。大学入学時点で、チームには大学日本代表の古川裕大(当時4年、現・日本ハム)がいたものの、すぐにリーグ戦で古川と併用されている。これは、捕手の能力が高いエピソードのひとつだ。
その後、怪我に苦しんだシーズンはあったものの、順調に実績を積み重ねた。3年生になると、大学ジャパンで“不動の正捕手”となる。素早く動いて、強いボールを投げられるスローイングは、一軍レベルの選手に負けない。キャッチングやブロッキングも安定している。打撃は少し調子の波があるが、長打力と柔らかさを備えている。日本ハムでも、ルーキーイヤーから一軍の正捕手争いに加わることも十分期待できるだろう。
続いて、3位以下の野手。ソフトバンク3位の廣瀬隆太(慶応大)は、抜群の長打力を誇り、楽しみな存在だ。しかしながら、ソフトバンクの内野陣を見ると、セカンドに牧原大成と三森大貴、サードには栗原陵矢、リチャード、井上朋也らが控えている。さらに、右の大砲はFAで西武から山川穂高が加わったことで、さらに競争は厳しくなっている。こうした状況を踏まえると、1年目から一軍の戦力になるためのハードルは高い。また、楽天6位の中島大輔(青山学院大)は外野手の能力は高いものの、チームには似たようなタイプの選手が多く、一軍定着は簡単ではないだろう。
一方、育成指名でありながら、西武4位の金子功児(埼玉武蔵ヒートベアーズ)は面白い存在になりそうだ。高卒で入団した独立リーグ。1年目は、なかなか結果が出ずに苦しんだ。2年目は、トレーニングを積んで、走攻守すべてで大きく成績を上げた。軽快なフットワークと強肩を備えており、パンチ力のある打撃も魅力だ。内野のバックアップ要員として、1年目から一軍入りを目指してほしい。
文=西尾典文(にしお・のりふみ)
☆記事提供:プロアマ野球研究所
西武投手陣に大型サウスポーが加わる!
一歩、リードしているのが、西武1位の武内夏暉(国学院大)だ。身長185センチ、体重90キロの大型サウスポー。150キロ以上のスピードを誇り、制球力と安定感が際立っている。
無駄な動きの少ないフォームで、高い位置から縦に腕が振れ、コーナーいっぱいに投げ分けることができる。また、スライダーと、縦に鋭く変化するツーシームがしっかり低めに決まる。試合を作る能力は、アマチュア球界で屈指である。
西武の投手陣は、成績が良い一方で、決して選手の層が厚いとはいえない。左の先発は隅田知一郎のみで、武内に寄せられる期待は自然と大きくなる。1年間怪我なく、先発で投げ切ることができれば、二桁近い勝利数をマークする可能性も十分にありそうだ。
ドラフト1位指名の投手では、楽天の古謝樹(桐蔭横浜大)と、日本ハムの細野晴希(東洋大)も楽しみな存在だ。ただ、好不調の波が大きく、制球力に不安が残るため、本格的に一軍の戦力となる時期は、2年目以降になるだろう。
一方、彼らより即戦力の期待が高い投手は、ロッテ2位の大谷龍輝(富山GRNサンダーバーズ)だ。大谷が所属していた富山は“投高打低”の日本海リーグ。夏場以降は全く危なげない投球を続けていた。独立リーグのチャンピオンシップで159キロをマーク。スピードは、すでにNPBの投手のなかで上位に位置している。
フォームは力任せにならず、バランスよく腕が振れている。変化球もこの1年で大きく進化した。2024年7月に24歳になる年齢を考えても、1年目から勝負のシーズンだ。ベテランに頼るロッテのリリーフ陣に割って入り、勝ちパターンに定着することを期待したい。
大谷と同じ2位指名の選手では、西武の上田大河(大阪商業大)とソフトバンクの岩井俊介(名城大)は、短いイニングであれば、1年目から一軍の戦力となる可能性は高いだろう。
下位指名で期待できる選手は…!?
下位指名の投手で活躍が期待できる投手は、ソフトバンク5位の澤柳亮太郎(ロキテクノ富山)と、オリックス6位の古田島成龍(日本通運)だ。
澤柳は、リリーフタイプの本格派右腕。全身を大きく使ったフォームで、球持ちがよく、落差のあるカーブとブレーキ鋭いフォークを操る。ソフトバンクは、実績のある中継ぎ投手が多く抜けた。沢柳はルーキーイヤーからブルペン陣の一角に加わりたい。
古田島は、社会人野球で屈指の投手陣を誇る日本通運で入社1年目から主戦投手を任された右腕だ。縦に鋭く腕が振れ、打者の手元で勢いのあるストレートと、緩い変化球とのコンビネーションを生かした投球に安定感がある。オリックスは、山本由伸(現・ドジャース)と山崎福也(現・日本ハム)という先発の柱がいなくなった。ライバルが多く競争は厳しいと思われるが、古田島が1年目から入り込むチャンスはありそうだ。
一方の野手。筆頭候補は、日本ハム2位で捕手の進藤勇也(上武大)だ。大学入学時点で、チームには大学日本代表の古川裕大(当時4年、現・日本ハム)がいたものの、すぐにリーグ戦で古川と併用されている。これは、捕手の能力が高いエピソードのひとつだ。
その後、怪我に苦しんだシーズンはあったものの、順調に実績を積み重ねた。3年生になると、大学ジャパンで“不動の正捕手”となる。素早く動いて、強いボールを投げられるスローイングは、一軍レベルの選手に負けない。キャッチングやブロッキングも安定している。打撃は少し調子の波があるが、長打力と柔らかさを備えている。日本ハムでも、ルーキーイヤーから一軍の正捕手争いに加わることも十分期待できるだろう。
続いて、3位以下の野手。ソフトバンク3位の廣瀬隆太(慶応大)は、抜群の長打力を誇り、楽しみな存在だ。しかしながら、ソフトバンクの内野陣を見ると、セカンドに牧原大成と三森大貴、サードには栗原陵矢、リチャード、井上朋也らが控えている。さらに、右の大砲はFAで西武から山川穂高が加わったことで、さらに競争は厳しくなっている。こうした状況を踏まえると、1年目から一軍の戦力になるためのハードルは高い。また、楽天6位の中島大輔(青山学院大)は外野手の能力は高いものの、チームには似たようなタイプの選手が多く、一軍定着は簡単ではないだろう。
一方、育成指名でありながら、西武4位の金子功児(埼玉武蔵ヒートベアーズ)は面白い存在になりそうだ。高卒で入団した独立リーグ。1年目は、なかなか結果が出ずに苦しんだ。2年目は、トレーニングを積んで、走攻守すべてで大きく成績を上げた。軽快なフットワークと強肩を備えており、パンチ力のある打撃も魅力だ。内野のバックアップ要員として、1年目から一軍入りを目指してほしい。
文=西尾典文(にしお・のりふみ)
☆記事提供:プロアマ野球研究所