「小さなころからプレーしたいと思っていた」
“ファイナルフラッシュ弾”を何度見られるだろうか。中日の新助っ人でメジャー通算40本塁打のアレックス・ディッカーソン外野手(33)=米独立リーグ=が竜の沖縄キャンプを熱くする。
メジャー時代はダルビッシュ有から本塁打を放ち、サンフランシスコ・ジャイアンツに所属した2021年には、来季からドジャースでプレーする大谷翔平(当時エンゼルス)と対戦。3打数3安打をマークした大谷キラーというから、看板は立派。持ち場は左翼の見込み。大島洋平や鵜飼航丞、ブライト健太らとの競争を勝ち抜き、定位置を奪いたい。
来日したのは愛知・中部国際空港。日本好きのエピソードが出るわ、出るわ……。理由は幼少期から日本生まれのアニメやゲームに親しんだから。アニメ『ドラゴンボール』が大のお気に入り。作者・鳥山明さんを生んだ愛知県に降り立った事実は調査済みだった。
「小さなころからプレーしたいと思っていた日本に来られた。チームのために頑張りたい。愛知県がトリヤマ・アキラの出生地だって? 知っているよ」
好きなキャラクターはベジータ。突き出した両手の間からエネルギー派を撃つ必殺技「ファイナルフラッシュ」を報道陣に自ら披露した。
本塁打を放った後のパフォーマンスを提案されて「考えておくよ」と笑った。ドラゴンボールのほかに、『ポケットモンスター』にもなじみが深いという。テレビゲームはもっぱら『ファイナルファンタジー』のシリーズ。ロールプレイングゲームで夜更かししたと明かす。
外野の定位置争いに割って入れるか
新外国人獲得への狙いについて立浪監督は「三振は極力少ない方がいい。コンタクト力があって10本から20本を打ってくれる選手を」と説明していた。
具体例として出したのは、13~15年に在籍したルナ。ルナが来日する前のメジャー通算三振率(三振数÷打席数)は1割8分3厘。ディカーソンは2割3厘。通算出場試合は339試合と同じで打席数も大差がない。イメージは“左のルナ”となるかもしれない。
競争に割って入る。昨季の外野手はフルイニング出場した岡林勇希、24発を放った細川成也、名球会入りした大島がメーンで起用された。
この3人をソフトバンク戦力外から復活を期す上林誠知、長打力が魅力のブライトや鵜飼らが追従する形。ディッカーソンの加入は定位置争いをさらに活性化させる。
来日はインディアナ大時代に大学日本代表との試合で訪れて以来、2度目という。
「日本の野球はレベルが高いと思っている。チームのために頑張りたい」
アメリカでの相性はおじいちゃんを意味するグランパ(Grandpa)。
「小さい頃に、背中をちょっと痛めてしまって、一時期は動きが遅かった。それでグランパっていう呼ばれるようになったんだ。それが定着したんだ」
『ファイナルファンタジー』が好きで、ベジータの「ファイナルフラッシュ」を放つ真似をし、なおかつ野球では大谷を打った。
日本のカルチャーを幼少期から知る左の巧打者はすんなりチームに溶け込むだろう。
ビシエドが外国人枠から外れることも出場機会増の後押しになるに違いない。
2年連続最下位からの出直しを義務付けられた老舗球団。北谷球場に響くディカーソンの打球音が、レギュラー争いの熾烈(しれつ)さを物語る。
文=川本光憲(中日スポーツ・ドラゴンズ担当)