開幕へ向け大きな一歩
今季から活躍の場をエンゼルスからドジャースに移した大谷翔平。まだ見慣れぬ青いユニホームを身に纏って、19日(日本時間20日)には、実戦形式の打撃練習を行った。
昨年9月に右脇腹を痛めてから初となる実戦形式での打席。注目の1打席目で四球を選んだが、2打席目は空振り三振に切って取られた。そして迎えた3打席目、大谷はブランクを感じさせない鋭いスイングでセンター方向へ打ち返し、推定120mの一発が飛び出した。
約1か月後に韓国で行われる開幕シリーズに向けて、まずは大きな一歩を踏み出したといえるだろう。
昨年秋に受けたトミージョン手術の影響で、今季は代名詞の二刀流を封印することになる大谷。移籍1年目は右肘のリハビリと並行しながらの難しいシーズンになるが、打者に専念できる分、昨季以上の打撃成績を残す可能性は十分にありそうだ。
最大のライバルは自分自身
エンゼルス時代の昨季成績を改めて振り返ると、ア・リーグ最多の44本塁打を放ち、メジャーで初のタイトルを獲得。9月をほぼ全休したにもかかわらず、2位に5本の差をつけた。一方で打率.304はリーグ4位、94打点は同14位タイだった。
昨季のエンゼルスは主砲マイク・トラウトが82試合の出場に終わるなど、大谷が孤軍奮闘の働きを見せた。21個の故意四球が示す通り、相手バッテリーから厳しくマークされる中での数字。大谷加入前から“重量打線”と呼ばれるドジャースでなら、打撃3部門全てで成績アップも見込めるだろう。
そこで視野に入ってくるのが三冠王だ。打者に専念できる今季なら決してノーチャンスでもなさそう。ただし、ナ・リーグにはア・リーグ以上に強打者がそろっているイメージが強い。
昨季のナ・リーグ本塁打は、大谷より10本も多い54本塁打を放ったマット・オルソン(ブレーブス)。この他に47本塁打のカイル・シュワーバー(フィリーズ)、46本塁打のピート・アロンソ(メッツ)らが立ちはだかる。
打率にしても、大谷は昨季メジャー移籍後初の3割に乗せたとはいえ、.354のルイス・アラエス(マーリンズ)や、同.337のロナルド・アクーニャJr.(ブレーブス)など好打者の宝庫。打点王のタイトル獲得にしても120~130打点といった数字が求められそうだ。
さらに大谷にとって最大のライバルは自分自身になるかもしれないという。どういうことか。
大谷が打てば打つほど執拗にマークされ、歩かされる場面も想定できるだろう。そうなると、大谷の後ろを打つチームメートが多くの打点を稼ぐチャンスに恵まれることに……。つまり大谷本人が打点王、ひいては三冠王獲得の最大の障壁になり得るということだ。
もちろん大谷が目指すのは個人タイトルではなく、チーム全体の勝利。つまり、まだ大谷が足を踏み入れたことがないポストシーズン、そしてワールドシリーズでの美酒だろう。そのためにも三冠王を狙えるような圧倒的な数字を残して、チームに貢献してほしいところだ。
文=八木遊(やぎ・ゆう)