一気にアピール成功
「1本出れば変わると思うんですけれど…。とにかくヒットが欲しいですね」横浜スタジアムに場所を移して行われたオープン戦、5、6日の連戦で6打数ノーヒットに終わった梶原昂希は、うつむき気味に車に乗り込んだ。
昨年も6月7日に一軍昇格したが、そこから9打数ノーヒット三振5とファームで好調だった打撃は影を潜めた。しかし10打席目にヒットのランプを灯すと、一気に調子を取り戻した過去から「1本出るまでが長いんですよね」と回想。また8月22日に足首を痛めて戦線離脱もあり「実戦から遠ざかっていたこともありますね」と、感覚もズレも実感し「結果を出さなきゃいけない時期なんですけれども、焦ってもいいことないですしね」と、揺れる心中も明かしていた。
しかし8日の第2打席にライトへスリーベースを放つと、次の打席もセンターへ弾き返しマルチヒットをマーク。試合後は「やっと出ました」と声を弾ませると、翌日はレフトに“らしい”ホームランを叩き込んだ。10日はスタメンで起用されると、第1打席で粘りながらタイミングを合わせ、またもやレフトへ先制アーチ。
「スライダーがほぼ抜け球だったので、ストレートはあんまり意識せず。真っ直ぐはちょっと動いてたりとかもありましたが、そこは真っ直ぐ待ちでどうにかなるかなと思いました。同時に落ち球にもケアしましたけれども」と洞察力も冴え「どうにかフォアボールでも塁に出れればと思ったんですけど、甘く入ってきてくれたんで捉えられたのはよかったですね」と4日前とは正反対の笑顔。「しっかり当たってバット(の芯を)食ってくれてたんで、角度もついたし行くかなとは思いました」と手応え十分の一打だった。2打席目は相手野手の好守にあってしまったが、3日間で首脳陣に猛アピールをすることができた。
開幕スタメンのチャンス
ドラフト時、担当の欠端スカウトは「フルスイングできて、低めのボールでもレフトへ入れられるパワーも持っています」と評していた通りの活躍。そのストロングポイントは2年連続で自主トレに受け入れてくれた柳田悠岐の教えでさらに磨かれた。
元来「引っ張り系のタイプではなかったですが、去年から余計に逆方向が自分のヒットコース。引っ張るよりは、左中間方向の方が自分っぽいかな」との思考があったが「ギータさんも基本逆方向から入って振った中で、引っかかったのはライトだけど、基本はセンター中心、センターから逆方向中心」と“トリプルスリー”の考えと一致。迷いなく同じ取り組みを敢行するとともに、筋肉トレーニングにも勤しんだ。
「ギータさんの昔の映像見ると細かったですね。いつの頃からトレーニングに目覚めたみたいで」と“師匠”の後を追うように懸垂も取り入れ「自主トレの最初は3回ぐらいしかできなかったんですよ。でも終わりには10回できるようになりました。去年に比べたら上半身の背中と肩周りの筋肉量はかなり違ってるので、成果は出てるんじゃないかと思います」とパワーアップが打球の伸びにも?がっていると分析していた。
現状は「絶好調ってわけでもないと思うんですけど、だいぶ上がりかけてきたかなって感じですね。もっとヒットコースに飛ぶようになれば、もっといいかなって感じですね」とさらなる上昇を予言。これからも「結果を最大限出していきたいですね。まだ全然アピールの序盤で、全然足りてないと思う。もっと走塁面、守備面、打撃面全てでアピールできるように、これからもオープン戦でやっていきたいです」と目を輝かせ、開幕スタメンにも「諦めてないですよ!」と力強く言い切った。
「143安打を目標にやりなさい」柳田悠岐から授かった金言を果たすため、3年目の梶原昂希は外野の一角を奪いに行く。
取材・文=萩原孝弘