新助っ人右腕が順調な仕上がり
南米出身の豪腕には難敵となりそうな「寒さ」にもきっちりと対応して見せた。
「(甲子園での登板は)2回目ですし、しっかりブルペンで準備して体を温めてから投げられましたから」
タイガースの新助っ人、ハビー・ゲラは冷え込んだ甲子園での2度目の登板を終えた9日のスワローズ戦後、手応えたっぷりに言葉をつないだ。
本拠地初登板となった6日のイーグルス戦後は日本語で「サムイ」と本音。年間通してこの気温ではないものの、今回は寒さも見込んで入念に準備を整えて“ホット”なボールを投げ込んだ。
6回に3番手でマウンドに上がり、1回を3人で片付ける完全投球。武岡龍世は足下に曲がり落ちるスライダーで、長岡秀樹はややシュート回転したものの156キロの力強い直球で空振り三振とねじ伏せた。
野手から投手に転向した異色の経歴の持ち主で米国時代の20年にはシンカーで164キロを計測。自慢の直球は登板ごとにスピードを増しており本人も「質、球速はより良くなると信じているのでシーズンへ向けて精度を高めていきたい」とさらなる“伸びしろ”も宣言した。
キャンプで指揮官をうならせた制球力
一見、スピードボールで抑え込むパワーピッチ型のスタイルに見えるが、長所は他にもある。
春季キャンプ中、フリー打撃に登板したゲラについて岡田彰布監督がうなったのは球速ではなかった。
「あれだけ高めに行かへんねんな。ブルペンではキャッチャーから“低めに丁寧に投げてます”と聞いてたけど、打者が立っても1球も高めがなかったやろ」
長打のリスクをはらむ“間違い”が少ない――。内外角と高低を合わせた、さらに細やかな投げ分けに関してはシーズンに入ってから明らかになるはずだが、6日のイーグルス戦でも投じた17球のうちボール球はわずか2球と四球連発で自滅するタイプでないことは予想できる。
近年、タイガースのブルペンで無双した助っ人外国人に共通するのが。与四球の少なさ。セーブ王を獲得した21年のロベルト・スアレスは与四球率1.16、42ホールドを挙げた19年のピアース・ジョンソンは同1.99の安定感だった。
四球を出さないことが無条件で成功につながるわけではなくても、今のところ乱れる気配を感じさせないゲラにも期待は高まる。
岩崎優との二択で今季のクローザーに指名される可能性もあるが、ゲラは強く首を振る。
「自分自身は1年目の選手ですし、実績のある方がたくさんいますから。その人たちに対して失礼なことは言えないです。言われたところでしっかり準備したいと思っています」
謙虚な背番号00がどのポジション、そしてどんな投球スタイルでチャンピオンチームで存在感を高めていくのか。
連覇のキーマンであることは間違いない。
文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)