鉄壁ブルペンの新星として期待される3年目の右腕
昨季はセントラル・リーグ唯一の救援防御率2点台となる2.39が表すように近年のタイガースの強みとなっているのは、鉄壁のブルペンだ。
先発から転向し昨年まで7年連続40試合登板、うち4度は60試合以上を投げている岩崎優など中心となる選手が健在なのに加え、大きな特徴はシーズンごとにニューカマーが躍進を見せることだろう。
近年なら22年に前年まで1軍で3登板の湯浅京己が59試合に登板して43ホールドをマークし、浜地真澄も52試合で防御率1.14とブレーク。
リーグ優勝、日本一となった昨年もシーズン中に先発から配置転換となった桐敷拓馬が勝ちパターンを担えるまでに成長し、3年目の石井大智が44試合で防御率1.35と一皮むけた。
担当記者としても毎年誰が出てくるのか密かに楽しみにしているブルペンの新星。今年、その最有力候補と言っていいのが3年目の岡留英貴だ。
岡田彰布監督が今春キャンプの投手部門のMVPに選出したように初の開幕1軍スタートへ快投を続ける右腕。ここまで実戦7試合で計9イニングを無失点と文句のつけようのない結果を残している。
「良いスタートを切れそうというか、切らないといけない。本当に勝負なので。キャンプのMVPもどうでもいいとかじゃないですけど、まずはオープン戦。ピッチャーも層が厚いので開幕1軍に入れるように」
手応えよりも危機感を口にする根底には昨春味わった屈辱がある。1軍キャンプスタートだった昨年2月の練習試合で先頭から2者連続四球を与えて1死も取れずに降板。そのまま2軍降格となり、開幕1軍を逃した。
プロの世界の厳しさを知った瞬間。ただ、その辛い経験を無駄にしなかった。
投球フォームなどを見直し“変身”すべく再出発。6月に再昇格すると10月にはプロ初勝利を手にし、日本シリーズのマウンドにも上がった。
シーズンオフは2年連続で青柳晃洋に弟子入りして静岡で自主トレを敢行。苦い思いを払拭するべく再び、キャンプ地の沖縄・宜野座にやって来た。
快投を支えるのは新球・フォークだ。
元々、入団直後から習得を目指していたが「抜けることが多い」と断念していたが、昨年12月に亜大の先輩.東浜巨の投じるシンカーの握りやリリースの感覚などを取り入れると精度が向上。配球に加えられるまでになり、オープン戦でも打者の反応を確かめている。
2月下旬、岡田監督は岡留が1年間で示した成長に目を細めた。「1年後にここまで成長してるわけやから。(岡留を)使わなかったら怒られるよ」
ブレークの息吹を感じる背番号64が、群雄割拠のブルペンで真価を示す。
文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)