群馬県勢初となる高崎健康福祉大高崎の優勝で幕を閉じた第96回選抜高校野球大会では、NPBスカウトが今秋ドラフト候補に挙がる選手のプレーに目を光らせていた。
あるスカウトは「練習でいい動きを確認できていたとしても、こういう大舞台で結果を残せるかどうかが大切になる」と話していた。
スカウトにとって選抜は、冬の間にどれほど成長したかを確認できる絶好舞台である。
今春選抜に出場した32校の中でスカウト陣の評価を上げた注目選手は誰だったのか。現場の声をもとに紹介する。
複数のスカウトから「上位候補で間違いない」との評価が聞こえてきたのが報徳学園(兵庫)の最速151キロ右腕・今朝丸裕喜(3年)だ。
背番号10を背負った今大会では3度の先発を含む4試合に登板し、防御率1.85の好内容で2年連続準優勝に導いた。
今朝丸の評価を最も上げたのが大阪桐蔭(大阪)との準々決勝だろう。
相手先発は最速154キロを誇る平嶋桂知で、世代屈指の本格派右腕による投げ合いとなった。
今朝丸は、昨秋の近畿大会で大阪桐蔭相手に6回2/3、4失点と本領を発揮できずに敗戦投手となった。その一戦で3安打2打点と打ち込まれた4番のラマル・ギービン・ラタナヤケ(3年)に真っ向勝負を挑んで3打数無安打に抑え、「秋から変わったのは直球の質」と胸を張ったように5奪三振中4つを直球で奪った。
まさに昨秋からの成長を証明する投球内容で1失点完投勝利を挙げたのだ。
「秋のときは気持ちに余裕がなかった。甲子園でもピンチは絶対に来ると思って練習してきた」と内面の変化も明かす。
188センチと魅力的な体格を誇りながら、背番号10が示すようにこれまでは殻を破りきれずにいた。その印象を今大会で一気に払しょくした。
夏までにもう一段階成長を見せられれば、ドラフト1位候補にまで評価を上げる可能性もありそうだ。
野手で評価を高めた1人が大阪桐蔭の境亮陽(3年)だ。
50メートル走5秒8の俊足と、投手として最速146キロを計測したことがある強肩自慢の外野手だ。
元々、走力などには定評があった中、今大会でスカウト陣に強く印象づけたのは低反発の金属バットを苦にしない打力の高さだった。
「1番・右翼」として3試合に先発して打率.583(12打数7安打)。俊足を生かした内野安打などではなく、バットの芯で捉えた鋭い打球を連発した。
神村学園(鹿児島)との2回戦でマークしたランニング本塁打も柵越えまであと一歩の右翼フェンス直撃の打球だった。
近畿圏を担当するスカウトからは「新基準のバットを苦にしなかったのは境と、あと数人ぐらいではなかったか」との声が聞かれたほどだ。
さらに選抜後に行われた高校日本代表候補選手の強化合宿では、紅白戦で複数安打を放って木製バットへの対応力を示すなど、改めて打撃技術の高さをアピール。走攻守三拍子そろった総合力の高さで世代トップクラスの外野手であることを証明したと言える。
スカウトが注目する大舞台での勝負強さという視点では、阿南光(徳島)の最速146キロ右腕・吉岡暖(3年)も好印象を残した。
1回戦の豊川(愛知)戦では11三振を奪って4失点完投勝利を挙げると、熊本国府(熊本)との2回戦では14奪三振をマーク。フォークなどの落ち球を器用に操る奪三振力の高さを生かして8強進出の立役者となった。
スカウトからは「まだまだ良くなりそうな伸びしろを感じた」との評価が聞かれた。高校では初の全国大会で、非凡な才能を持て余すことなく発揮できた点は評価できるだろう。
今大会生まれた2本の柵越え本塁打を放った豊川のモイセエフ・ニキータと神村学園(鹿児島)の正林輝大(ともに3年)ら大会前から評価の高かった選手も順調にアピールに成功した。
その一方でスカウトにとっては、甲子園で輝きが増した選手を確認できたことが大きな収穫になった。
文=河合洋介(スポーツニッポン・アマチュア野球担当)
あるスカウトは「練習でいい動きを確認できていたとしても、こういう大舞台で結果を残せるかどうかが大切になる」と話していた。
スカウトにとって選抜は、冬の間にどれほど成長したかを確認できる絶好舞台である。
今春選抜に出場した32校の中でスカウト陣の評価を上げた注目選手は誰だったのか。現場の声をもとに紹介する。
今朝丸裕喜(報徳学園)はドラ1候補まで評価を挙げる可能性も
複数のスカウトから「上位候補で間違いない」との評価が聞こえてきたのが報徳学園(兵庫)の最速151キロ右腕・今朝丸裕喜(3年)だ。
背番号10を背負った今大会では3度の先発を含む4試合に登板し、防御率1.85の好内容で2年連続準優勝に導いた。
今朝丸の評価を最も上げたのが大阪桐蔭(大阪)との準々決勝だろう。
相手先発は最速154キロを誇る平嶋桂知で、世代屈指の本格派右腕による投げ合いとなった。
今朝丸は、昨秋の近畿大会で大阪桐蔭相手に6回2/3、4失点と本領を発揮できずに敗戦投手となった。その一戦で3安打2打点と打ち込まれた4番のラマル・ギービン・ラタナヤケ(3年)に真っ向勝負を挑んで3打数無安打に抑え、「秋から変わったのは直球の質」と胸を張ったように5奪三振中4つを直球で奪った。
まさに昨秋からの成長を証明する投球内容で1失点完投勝利を挙げたのだ。
「秋のときは気持ちに余裕がなかった。甲子園でもピンチは絶対に来ると思って練習してきた」と内面の変化も明かす。
188センチと魅力的な体格を誇りながら、背番号10が示すようにこれまでは殻を破りきれずにいた。その印象を今大会で一気に払しょくした。
夏までにもう一段階成長を見せられれば、ドラフト1位候補にまで評価を上げる可能性もありそうだ。
低反発バットを苦にしない打力の高さが光った境亮陽(大阪桐蔭)
野手で評価を高めた1人が大阪桐蔭の境亮陽(3年)だ。
50メートル走5秒8の俊足と、投手として最速146キロを計測したことがある強肩自慢の外野手だ。
元々、走力などには定評があった中、今大会でスカウト陣に強く印象づけたのは低反発の金属バットを苦にしない打力の高さだった。
「1番・右翼」として3試合に先発して打率.583(12打数7安打)。俊足を生かした内野安打などではなく、バットの芯で捉えた鋭い打球を連発した。
神村学園(鹿児島)との2回戦でマークしたランニング本塁打も柵越えまであと一歩の右翼フェンス直撃の打球だった。
近畿圏を担当するスカウトからは「新基準のバットを苦にしなかったのは境と、あと数人ぐらいではなかったか」との声が聞かれたほどだ。
さらに選抜後に行われた高校日本代表候補選手の強化合宿では、紅白戦で複数安打を放って木製バットへの対応力を示すなど、改めて打撃技術の高さをアピール。走攻守三拍子そろった総合力の高さで世代トップクラスの外野手であることを証明したと言える。
スカウトが注目する大舞台での勝負強さという視点では、阿南光(徳島)の最速146キロ右腕・吉岡暖(3年)も好印象を残した。
1回戦の豊川(愛知)戦では11三振を奪って4失点完投勝利を挙げると、熊本国府(熊本)との2回戦では14奪三振をマーク。フォークなどの落ち球を器用に操る奪三振力の高さを生かして8強進出の立役者となった。
スカウトからは「まだまだ良くなりそうな伸びしろを感じた」との評価が聞かれた。高校では初の全国大会で、非凡な才能を持て余すことなく発揮できた点は評価できるだろう。
今大会生まれた2本の柵越え本塁打を放った豊川のモイセエフ・ニキータと神村学園(鹿児島)の正林輝大(ともに3年)ら大会前から評価の高かった選手も順調にアピールに成功した。
その一方でスカウトにとっては、甲子園で輝きが増した選手を確認できたことが大きな収穫になった。
文=河合洋介(スポーツニッポン・アマチュア野球担当)