未完の大砲として期待されたが…
首位・阪神から最下位・中日まで全6チームが5ゲーム差以内にひしめき合う大混戦となっている今季のセ・リーグ。先週末、巨人を相手に3連勝を飾り、2位に浮上したのが広島だ。
3連勝を決めた19日の試合は初回からカープ打線が爆発。9―3で快勝したが、勝利の立役者としてお立ち台に上ったのが3年目の末包昇大だった。
末包は初回の1打席目、巨人の先発・高橋礼から逆転のスリーランを放つと、続く2~3打席目にも安打を放ち、3安打の猛打賞。4打席目は凡退したが、今季打率を.370まで引き上げることに成功した。
試合中盤にも隙のない攻撃で小刻みに加点したカープ打線だったが、その中で末包に次いでチームに貢献したのは、この日8番ファーストで先発出場した林晃汰である。
以前から4学年上の末包をライバル視しているという左打ちの未完の大砲がブレイクしたのは、プロ入り3年目の2021年。その年、林は102試合に出場し、打率.266、10本塁打、40打点の好成績でレギュラーの座をつかんだ、と思われた。
しかし、翌年の22年はオープン戦から極度の不振に陥ると、二軍でも自慢の長打力は影を潜め、その年はまさかの一軍出場ゼロに終わった。
奮起を期した23年は5月に一軍昇格。2年ぶりとなる本塁打を放つなど復調の兆しを見せたものの、6月に登録を抹消されると、その後は二軍で汗を流す日々を送りそのまま閉幕を迎えた。
ライバル末包に少しでも近づくために
改めて巻き返しを誓った今季もオープン戦で打率.143(21打数3安打)と結果を残せず。二軍でも28試合に出場して、打率.240、1本塁打……。決して一軍から声が掛かるような成績ではなかった。それでも先週の14日に一軍に招集されると、即6番ファーストで先発起用されたのだ。
ところが林は約11か月ぶりとなった一軍の試合で2打数ノーヒット。左腕がマウンドに登った3打席目には代打を送られた。
翌15日にもスタメンで起用された林は1打席目に二塁打を放ち、新井貴浩監督の期待に応えた。しかし、その後は18日に行われた巨人戦の1打席目まで7打席連続で凡退。同日の2打席目に二塁打を放ったものの、この時点で打率は.182(11打数2安打)だった。
そして迎えた19日の巨人との3連戦最終戦は、前日に続き8番ファーストでスタメンに名を連ねた。この試合で結果が出なければ、二軍行きを言い渡されてもおかしくない局面だった。
“首の皮一枚”繋がった状態の林はここで意地を見せる。1打席目こそ右飛に打ち取られたが、2打席に貴重な適時打を放ち、2年ぶりの打点をマークすると、3打席目もライトへの安打で出塁。4打席目は見逃し三振に終わったが、この日4打数2安打1打点の活躍で、打率を.267へと引き上げた。
一軍昇格後は全5試合でスタメン起用されているように、新井監督の期待は決して小さくない。20歳のシーズンに一軍で10本塁打を放ったポテンシャルは間違いなくホンモノ。ライバルの末包に少しでも近づくため、1打席1打席を大事に昨季逃した一軍定着を果たしたい。
文=八木遊(やぎ・ゆう)