春のリーグ戦39イニングで52奪三振、防御率0.00
3月の侍ジャパン強化試合に招集された最速154キロ左腕の関大・金丸夢斗(4年)が、今春リーグ戦で今秋ドラフト1位候補にふさわしい成績を残した。
関西の強豪がそろう関西学生野球で登板6試合(先発4)、39イニングで1失点(自責0)と格の違いを見せつけた。
防御率0.00は、同連盟の新リーグ発足以降では2004年秋の立命大・金刃憲人(元楽天)以来20年ぶり3人目の快挙だ。それでも「自分の投球ができれば不可能ではないと思っていました」と平然と振り返るのが頼もしい。
150キロ超の直球や切れ味鋭いスプリットを勝負球として奪三振を量産する。この圧倒的な投球の土台となっているのが、侍ジャパンの井端弘和監督に「相変わらず良いですね」と認めさせた制球力にある。
今春39イニングで3与四死球と手元が一切乱れなかった。
制球力を図る指標の一つであるK(奪三振)/BB(与四球)は「19.5」をマークした。昨季セ・リーグ1位の阪神・村上頌樹が「9.13」、パ・リーグ1位のオリックス・山本由伸が「6.04」。制球自慢の両投手と比較すれば、いかに金丸の数値が優れているかが分かる。
ボール球を用いて駆け引きするのではなく、ストライクゾーンに投げ続けた。
今春の球数は計490球で、1イニングあたり12.6球の計算になる。39イニングで52奪三振を数えたことを考えれば、驚異的な球数の少なさと言っていい。
「三振は狙っていますし、3球三振は球数を減らしていく上で大切になると思う。甘い球でも勝負できるように冬場からしっかりと取り組んできたので、ボール球で勝負するよりも、どんどんとストライクを取ることができているのかなと思います」
昨秋は51イニングで8与四死球だった。制球力は昨年から特筆ものだったとはいえ、持ち味にさらに磨きがかかったことを春の投球内容で証明した。
スカウトが評価する「力感なく切れのある直球」
理想の投球を求めて練習に励んできたことは、今春開幕前のコメントを振り返るとよく分かる。
「自分は直球が武器なので、(昨秋は)打者が早めにタイミングを取って対応してきているな…と感じていました。だけど、直球だと分かっていても打たれない球を投げれば、相手に研究されたとしても問題ない。この春は、去年よりもどれだけ成長したかが分かるような投球したいと思っています」
大学ラストイヤーでの進化には、昨秋の反省があったに違いない。
昨年11月の明治神宮大会関西第1代表決定戦でのこと。勝てば全国大会出場が決まる一戦で天理大打線にファウルで粘られ続け、5回92球、3失点で降板した。
「あの試合は力んでしまい、いい球筋の直球を投げられていなかったからバットに当てられた。焦らず、自分の投げたい球を投げられれば大丈夫かなと思っています」
楽天の足立祐一スカウトは「余力のある状態で質の高い球を投げられるようになっている。昨年よりも成長している」と評価。力感なく切れのある直球を投げられていることは、スカウト陣の評価からも明らかだ。
今春の投球を確認した侍ジャパンの井端監督が「エースとして長いイニングを投げないといけない中で、うまく出し入れをやっている。力任せになっていないところが一番の良さかなと思います。この春も十分に成長しているのかなと思います」と言ったのは本音だろう。
今春は腰を故障し、最終節の登板を回避した。
敵は故障だけ。大学No.1投手の評価を確固たるものにする春となった。
文=河合洋介(スポーツニッポン・アマチュア野球担当)