ルーキーとして史上初「25本塁打&50盗塁」を達成
スマホの待ち受け画面を好きな芸能人や憧れのスポーツ選手にしている人も多いだろう。ダイヤモンドバックスの外野手コービン・キャロルもそんな一人だ。
今年3月にMLBPA(大リーグ選手会)の公式Xにポストされた2分ほどのインタビュー動画で、キャロルは幼少期のヒーローがイチローだったことを明かし、披露したスマホ画面にはイチローとのツーショットが収められていた。
母が台湾人でシアトル出身というキャロル。マリナーズ時代のイチローに憧れたのはごく自然な流れだったはずだ。そんなレジェンドの活躍を間近で見ながらメジャーリーガーを夢見たことは想像に難くない。そしてキャロルが18歳の夏にそれは叶う。
2019年のドラフト1巡目(全体16位)でダイヤモンドバックスに指名されプロ入り。178センチ、74キロのイチローを彷彿とさせる小さな体から鋭い打球を広角に飛ばす左打ちの外野手が夢への一歩を踏み出した。
順調にマイナーの階段を駆け上がり、22年のシーズン途中にメジャー初昇格。32試合に出場し、打率.260とメジャーで通用するところを見せると、昨季開幕直前に8年総額1億1100万ドル(当時のレートで約150億円)という大型契約を結びファンを驚かせた。
しかし、その契約はキャロルとチーム双方にとって「Win-Win」だったことを証明。主軸の一人として155試合に出場すると、打率.285、25本塁打、76打点、54盗塁の好成績を残し、ナ・リーグの新人王に満票で輝いたのだ。
走攻守にわたる活躍でキャロルはチームをけん引。4年ぶりのシーズン勝ち越しに貢献すると、ワイルドカード3位でポストシーズン進出を果たした。チームの勢いはポストシーズンでも止まらず、下克上の連続でイチローも果たせなかったワールドシリーズの大舞台へとたどり着いた。
残念ながらワールドシリーズでは、1勝4敗でレンジャーズに完敗を喫したが、改めて世界一を誓って迎えたのが今季開幕である。
今季は打率一割台から抜け出せずまさかの低迷
今季は2番打者としてシーズンをスタートしたキャロルだったが、開幕から打率は2割台前半に低迷。4月下旬に出身地のシアトルに凱旋したが、3連戦で10打数無安打に終わると、ついに打率は1割台へと転落した。
その後も2割前後を行ったり来たりで、復調の糸口をつかめないまま、5月中旬以降は打率1割台から抜け出せないでいる。
そして迎えた29日(現地時間)のレンジャーズ戦では今季初となる3安打の猛打賞を記録。試合前に.184だった打率を一気に.194まで引き上げた。ところが、翌30日のメッツ戦で3打数無安打。再び打率を.191に下げ、一歩進んで二歩下がる状態が続いている。
ルーキーとして史上初となる「25本塁打&50盗塁」を達成した昨季とはまるで別人のような“2年目のジンクス”に苦しむキャロル。レギュラーシーズンは残り4カ月あるとはいえ、そろそろ復調の兆しを見せないと、下位打線への降格どころかスタメン落ちも現実味を増してきそう。
チームの借金も今季ワーストタイの6に増え、地区首位のドジャースには10ゲーム差をつけられている。昨季に続きキャロルは再びチームの救世主となれるのか。進化が問われる夏を迎えようとしている。
【コービン・キャロル年度別成績】
2022年 32試合 打率.260 4本 14打点 2盗塁 OPS.830
2023年 155試合 打率.285 25本 76打点 54盗塁 OPS.868
2024年 54試合 打率.191 2本 18打点 9盗塁 OPS.562
文=八木遊(やぎ・ゆう)