最も打球速度が遅い長打として記録される可能性も
現地9日(日本時間10日)、ヤンキー・スタジアムで行われたヤンキース対ドジャースの3連戦最終戦は、ヤンキースが6-4で競り勝ち、同一カード3連敗を免れた。
敗れたドジャースは、6日のパイレーツ戦から続いていた連勝が3でストップ。2番指名打者で先発出場した大谷翔平は一発こそ出なかったが、8回表の4打席目に二塁打を放ち、前日に続く安打を記録した。
この日の大谷は1打席目から「中飛」「右直」「左飛」「左二塁打」という結果。3打席目までは全て外野への飛球で、打球速度(Exit Velocity)に注目すると、順番に127.4キロ、153.2キロ、152.3キロ、97.0キロだった。つまり二塁打となった最終打席の打球速度が最も遅かったことになる。
1ボール2ストライクから相手投手のルーク・ウィーバーが投じた5球目は、156キロのフォーシーム。見送れば内角のボールだったが、大谷が思い切り振り抜くと、ライナー性の打球が三塁ベースの1メートルほど後方にポトリと落ちた。内野手が“大谷シフト”で一塁寄りに守っていたこともあって、文字通り“どん詰まり”の当たりだったものの、大谷は悠々と二塁を陥れた。
野球とは面白い競技で、打者はいかに強い打球を放っても野手の正面を突いたり、相手守備の好捕にあったりすれば安打は記録されない。一方で、この日の大谷の4打席目のようにどれだけあたりが弱くても安打となるケースは珍しくない。
大谷にとってはまさに運も味方につけた二塁打となったわけだが、実はメジャーに移籍した2018年以降に放った長打364本(二塁打147本、三塁打31本、本塁打186本)の中で、この日の二塁打の打球速度が2番目に遅かった。
メジャーリーグの公式データサイト『baseballsavant』によると、大谷が放った長打の中で最も打球速度が遅かったのは、2021年6月26日のレイズ戦で記録した二塁打の46.7キロというもの。映像を確認すると、外角低めの難しい球を軽く当てただけである。しかし、ホームベース近くにたたきつけられた打球は大きく跳ね、そのまま一塁手の頭上を越えていった。
この打球の速度は記録上46.7キロとなっているが、打球が一塁ベースを通過した秒数から計算すると、計測ミスあるいはイレギュラー扱いとすべきなのかもしれない。つまり、9日のヤンキース戦で記録した二塁打の方が遅かった可能性が極めて高いということだ。
今月に入ってから打率.206、1本塁打と、大谷のバットはやや湿りがち。ただ、4打数無安打でロード最終戦を終えるのと、1本出て終わるのは雲泥の差があるだろう。休養を1日挟み、ドジャースは地元ロサンゼルスに戻り、レンジャーズとの3連戦を迎える。ラッキーな1本をきっかけに大谷の打棒爆発となるだろうか。
文=八木遊(やぎ・ゆう)