高校野球の春季大会が終わり、夏に向けてチームも選手も仕上げていく時期となっている。特に、北海道は春季大会から夏の大会までの期間が短く、ここから一気に調子を上げていけるかが重要だ。そんな中で今この春に大きく評価を上げているのが、旭川実のエース、田中稜真である。
▼ 田中稜真(旭川実)
・投手
・177センチ/78キロ
・右投右打
<主な球種と球速帯>
ストレート:142~158キロ
カーブ:113~115キロ
スライダー:125~127キロ
チェンジアップ:110~120キロ
フォーク:128~131キロ
<クイックモーションでの投球タイム>
1.18秒
田中は地元の旭川出身で、中学時代は旭川大雪ボーイズでプレー。3歳上の兄、楓基も旭川実でエースとして活躍し、2021年の育成ドラフト1位でロッテに入団している。
そんな兄の存在もあってか、北海道では早くから評判となっており、1年秋にはエースになると、昨年夏の北北海道大会ではクラーク記念国際に初戦で敗れたものの、当時から140キロを超えるストレートをマークしている。
筆者は、田中の実力を確認すべく、5月15日に旭川スタルヒン球場で行われた春季北海道大会旭川支部予選決勝、旭川志峯戦に足を運んだ。
田中のピッチングを現地で実際に見るのは、この日が初めてだった。まず驚いたのは、体つきが昨年秋の映像と比べても明らかに大きくなっていた点である。特に下半身の太もも周りの筋肉が充実しており、この冬の間に相当鍛えてきたことが感じられた。
そして、マウンドに上がると、立ち上がりから145キロを超えるストレートを連発し、自己最速となる148キロをマーク。1回をわずか8球で三者凡退に抑えると、近くに座っていたスカウトからは「(高校時代の)お兄ちゃんよりいいね」という声が聞かれた。
2回にはツーアウトからヒットを許すも、3回から8回までの6イニングはノーヒットピッチングを披露。9回ワンアウトからヒットと死球でこの日初めて2人の走者を背負ったが、後続を落ち着いて抑え、最終的には被安打2、11奪三振で完封勝利を飾った。
フォームで素晴らしいのが下半身の使い方だ。左足を上げた時に右脚だけできれいにまっすぐ立ち、しっかりと“タメ”を作ってからスムーズにステップすることができている。
体重移動のスピードもあるが、左足の着地が安定しており、投げ終わった後に体勢が崩れることがない。無駄に沈み込む動きや重心の上下動がないところも長所だ。
一方で上半身の方を見ると、テイクバックで少し腕が背中の方に入り、わずかに左右に体が振られるのは気になったが、肩の可動域が広いため、引っかかることなくスムーズに腕を振ることができていた。
ストレートは前述した通りコンスタントに145キロ前後をマークし、終盤にもスピードが落ちることはなく、スタミナも申し分ない。変化球では120キロ台中盤で鋭く横に変化するスライダーに加えて、110キロ台のチェンジアップ、130キロ台のフォークと速さにバリエーションのある縦の変化球を操れる。
わずかにカーブが腕の振りが明らかに緩み、最初に打たれたヒットもその甘く入ったカーブをとらえられたものだけに、改善の余地はありそうだ。また少し抜けたり引っかかったりしたボールもあり、それが3死球に繋がったが、117球を投げてボール球はわずかに29球とコントロールが安定している。
さらに、フィールディングでも素早い動きでバントの小フライを処理し、打ってもホームランを含む3安打の大活躍で投げる以外のプレーでも能力が高いところを見せた。
投手としては決して大柄な方ではないが、総合力は全国でもトップクラスであることは間違いない。この後に行われる春の全道大会、そして夏の地方大会でもこの日のような投球をコンスタントに見せることができれば、上位指名の可能性も出てくるだろう。
文=西尾典文(にしお・のりふみ)
☆記事提供:プロアマ野球研究所
▼ 田中稜真(旭川実)
・投手
<主な球種と球速帯>
ストレート:142~158キロ
カーブ:113~115キロ
スライダー:125~127キロ
チェンジアップ:110~120キロ
フォーク:128~131キロ
<クイックモーションでの投球タイム>
1.18秒
田中は地元の旭川出身で、中学時代は旭川大雪ボーイズでプレー。3歳上の兄、楓基も旭川実でエースとして活躍し、2021年の育成ドラフト1位でロッテに入団している。
そんな兄の存在もあってか、北海道では早くから評判となっており、1年秋にはエースになると、昨年夏の北北海道大会ではクラーク記念国際に初戦で敗れたものの、当時から140キロを超えるストレートをマークしている。
筆者は、田中の実力を確認すべく、5月15日に旭川スタルヒン球場で行われた春季北海道大会旭川支部予選決勝、旭川志峯戦に足を運んだ。
田中のピッチングを現地で実際に見るのは、この日が初めてだった。まず驚いたのは、体つきが昨年秋の映像と比べても明らかに大きくなっていた点である。特に下半身の太もも周りの筋肉が充実しており、この冬の間に相当鍛えてきたことが感じられた。
スカウト陣は「お兄ちゃんよりいいね」と評価
そして、マウンドに上がると、立ち上がりから145キロを超えるストレートを連発し、自己最速となる148キロをマーク。1回をわずか8球で三者凡退に抑えると、近くに座っていたスカウトからは「(高校時代の)お兄ちゃんよりいいね」という声が聞かれた。
2回にはツーアウトからヒットを許すも、3回から8回までの6イニングはノーヒットピッチングを披露。9回ワンアウトからヒットと死球でこの日初めて2人の走者を背負ったが、後続を落ち着いて抑え、最終的には被安打2、11奪三振で完封勝利を飾った。
フォームで素晴らしいのが下半身の使い方だ。左足を上げた時に右脚だけできれいにまっすぐ立ち、しっかりと“タメ”を作ってからスムーズにステップすることができている。
体重移動のスピードもあるが、左足の着地が安定しており、投げ終わった後に体勢が崩れることがない。無駄に沈み込む動きや重心の上下動がないところも長所だ。
一方で上半身の方を見ると、テイクバックで少し腕が背中の方に入り、わずかに左右に体が振られるのは気になったが、肩の可動域が広いため、引っかかることなくスムーズに腕を振ることができていた。
ストレートは前述した通りコンスタントに145キロ前後をマークし、終盤にもスピードが落ちることはなく、スタミナも申し分ない。変化球では120キロ台中盤で鋭く横に変化するスライダーに加えて、110キロ台のチェンジアップ、130キロ台のフォークと速さにバリエーションのある縦の変化球を操れる。
わずかにカーブが腕の振りが明らかに緩み、最初に打たれたヒットもその甘く入ったカーブをとらえられたものだけに、改善の余地はありそうだ。また少し抜けたり引っかかったりしたボールもあり、それが3死球に繋がったが、117球を投げてボール球はわずかに29球とコントロールが安定している。
さらに、フィールディングでも素早い動きでバントの小フライを処理し、打ってもホームランを含む3安打の大活躍で投げる以外のプレーでも能力が高いところを見せた。
投手としては決して大柄な方ではないが、総合力は全国でもトップクラスであることは間違いない。この後に行われる春の全道大会、そして夏の地方大会でもこの日のような投球をコンスタントに見せることができれば、上位指名の可能性も出てくるだろう。
文=西尾典文(にしお・のりふみ)
☆記事提供:プロアマ野球研究所