負傷から復帰するも苦しい立場が続く
レッドソックス・吉田正尚の立場が日に日に危うくなっている。
現地24日(日本時間25日)のブルージェイズ戦に6番指名打者(DH)で先発した吉田。1打席目は中直に倒れたが、続く2打席目と3打席目に単打を放ち、4月27日以来、約2か月ぶりとなる「マルチ安打」を記録した。
チームは4点のビハインドを跳ね返して9回にサヨナラ勝ち。直近9試合の成績を8勝1敗とし、貯金の数を今季最多となる7に伸ばした。
2安打を放ち、チームの勝利に貢献した吉田だったが、心の底から喜べたかは微妙だったかもしれない。というのも、8回裏の一打同点の場面で代打を送られていたからだ。
2点差に詰め寄り、押せ押せで迎えた二死二・三塁の絶好機。左腕のティム・メイザがマウンドに立っていたこともあり、アレックス・コーラ監督は迷いなく右打ちのロブ・レフスナイダーの名前を告げた。
結局、レフスナイダーは申告敬遠で歩かされたが、続くロミー・ゴンザレスがレフトに運ぶ同点打を放ち、これが9回裏の劇的勝利につながった。
今季の吉田は対右投手の打率.278に対して、対左投手は.111とさっぱりで、8回裏の交代は当然の采配だったといえるだろう。ただ、仮に相手が右投手だったとしてもそのまま打席に立っていたかどうかは怪しいところだ。
吉田は左手親指の痛みで4月下旬から今月中旬にかけて負傷者リスト入り。今月11日に1か月半ぶりに戻ってきた後もほぼスタメンで起用されている。ただ、復帰後は10試合で、打率.162、0本塁打、1打点、長打は二塁打が1本だけと浮上の兆しはなかなか見えない。
ほぼDH専任で起用されていることも立場の危うさに追い打ちをかけている。
メジャー1年目の昨季は87試合で左翼の守備に就いたが、今季は1イニングのみ。とにかく打つことが求められるDHの選手が、今季34試合で打率.239、2本塁打、12打点ならいつその座をはく奪されてもおかしくないだろう。3割を超える打率を維持しているレフスナイダーらチーム内のライバル打者が軒並み好調ならなおさらだ。
ちょうど1年前の今頃は持ち前の適応力を見せ、3割前後の打率をキープしていた吉田。6月下旬から7月中旬にかけて8試合連続マルチ安打の「イチロー超え」もマークし、7月下旬には、一時ア・リーグの首位打者に立つこともあった。
あれからわずか1年。吉田の信頼は地に落ちたといっても過言ではないだろう。ここから這い上がるのは並大抵のことではないが、吉田ならV字回復を果たしてくれるはずだ。
文=八木遊(やぎ・ゆう)