コラム 2024.07.05. 07:00

今年のドラフトは高校生ショートが豊作! 今夏の甲子園地方大会で注目したい遊撃手

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夏の甲子園は8月7日に開幕 (C) Kyodo News

逸材が甲子園未出場の選手の中に数多く潜む!


 第106回全国高校野球選手権大会の出場49校を決める地方大会が北海道や沖縄などで始まった。

 夏がじりじりと迫っていた5月、高校野球の春季大会を視察していたNPB球団の編成幹部が「見ていて楽しいですよ」と嬉しそうに言っていた。

 今年の高校3年生に今秋ドラフト候補に挙がる遊撃手が数多くいることを指しての発言だった。

 強打を売りとする大型遊撃手から俊足や強肩自慢の素材型、総合力の高さで勝負する万能型までそれぞれに個性が異なるから面白いと言う。

 逸材が甲子園未出場の選手の中に数多く潜んでいることも特徴の一つだ。

 そこで今回は現地で取材した選手の中から今夏の地方大会で注目したい遊撃手を特集する。


◇ 石塚 裕惺(いしづか・ゆうせい)/花咲徳栄(埼玉)/181センチ、81キロ/右投げ・右打ち

 全国にドラフト候補の遊撃手が数多くいると言えど、石塚が世代No.1ショートだと断言していい。

 高校通算20本塁打超の右打ちの強打者で、走攻守三拍子の全てで世代トップクラスの能力を兼ね備えている。

 抜群の才能を知らしめたのが4月に行われた高校野球日本代表候補の強化合宿だった。

 この合宿は、全国から招集された高校生が台湾で9月に開催されるU18アジア選手権での日本代表入りに向けてアピールする舞台。大半の打者が不慣れな木製バットを扱いきれずに本来の持ち味を発揮できない中、石塚の打球の鋭さだけは別格だった。

 フリー打撃では、いとも簡単に打球に角度をつけてフェンス際への打球を連発した。打撃練習から長打力を見せられたのは石塚だけだったと言っていいだろう。

 紅白戦で石塚が打席に入ると、NPB12球団のスカウトの目の色が変わった。編成幹部クラスもストップウォッチを手にして走力を測るなど、注目度の高さが他の選手とは明らかに違った。

 今年は「甲子園出場」「高校日本代表選出」「ドラフト指名」の三大目標を掲げていると言う。

 現時点で今秋ドラフトの上位指名は確実。昨夏に甲子園初出場した上田西(長野)横山聖哉(現オリックス)のように、今夏の活躍次第ではドラフト1位候補にまで評価を上げそうだ。



◇ 斎藤 大翔(さいとう・ひろと)/金沢(石川)/181センチ、76キロ/右投げ・右打ち

 高須洋介(元近鉄、楽天)や釜田佳直(元楽天)らのプロ野球選手を輩出した金沢高に強肩強打の遊撃手が現れた。

 遠投120メートルの強肩と50走6秒0の俊足を生かした遊撃守備が最大の魅力だ。

 181センチの長身ながら、動きの軽快さが光る。グラブさばきも器用で、花咲徳栄の石塚ら全国クラスの遊撃手と比較しても守備力では見劣りしないだろう。

 武部佳太監督は「入学直後のノックは忘れもしないですね。中継プレーで本塁への送球を見たときに、グワーッと向かってくる感じが“凄いな…”と思った」と証言する。投手として最速140キロを計測したことも地肩の強さを示している。

 パンチ力を兼ね備えた打力も魅力の一つだ。

 昨夏の石川大会では日本航空石川との準々決勝で2本塁打を放つなど1大会3本塁打をマークし、一躍NPBスカウト陣からの注目を集める存在になった。

 現在は主に3番を担い、高校通算は10本塁打を超える。

「夏までに個人としてもチームとしてもフィジカル面で強くなることを目標にしています」

 昨夏同様に本塁打を放てば、さらに評価を高める夏になるだろう。



◇ 今坂 幸暉(いまさか・ともき)/大院大高(大阪)/178センチ、80キロ/右投げ・左打ち

 いま最も旬な選手の一人が大院大高の今坂だ。

 春夏甲子園出場1度の私立校が、春の大阪大会で履正社、大阪桐蔭の「大阪2強」を破って優勝した。その立役者となったのが26打数13安打(打率.500)、11打点と活躍した今坂だった。

 走攻守三拍子がそろう遊撃手ながら、最大の魅力は打力と言っていい。

 ミート力の高い中長距離打者として鋭いライナー性の打球を連発し、ツボに入れば一発長打も兼ね備えている。

 春季大会の履正社戦では好投手から2安打し、凡飛となったものの中堅フェンス間際への大飛球も放った。試合が行われた大院大高のグラウンドの中堅フェンスは奥行き128メートル。球場であればバックスクリーンに着弾していた可能性が高かった一打に視察したNPBスカウトも「普通なら入ってるでしょ!」と驚いていた。

 大院大高のグラウンドは一般的な球場と比べて外野が広い。そのため春季大会終了時点で高校通算8発と本塁打数では目立たないものの、長打力を備えていることは間違いない。

 夏本番を前に「結果を残して世代No.1の遊撃手と言われたい」と意気込む。夏も戦国大阪を勝ち抜く勝負強さを見せて、個人の評価も上げようとしている。



◇ 岸本 佑也(きしもと・ゆうや)/奈良大付(奈良)/180センチ、75キロ/右投げ・右打ち

 知名度こそ高くないものの、この春最も大きな衝撃を受けた遊撃手を最後に紹介したい。

 遠投100メートル超と世代屈指の強肩を武器とする岸本が今年に入って評価を上げてきた。

 一塁送球はうなりを上げるように強く、三遊間からの低く強いノーバウンド送球で魅了する。

 投手としては最速147キロを計測しており、投手として興味を示すNPBスカウトもいると聞く。

 注目度が上がりきっていない理由は、秋の奈良大会時点で背番号が20だったことにある。打力の成長などが認められて秋の近畿大会で背番号6を背負い、一躍ドラフト戦線に浮上する存在になった。

 春の奈良大会では複数球団が見守る前で豪快な左越え本塁打を放つなど打力でも一定の評価を得る。

「野手でも投手でも起用されるような肩を生かした選手になりたいです」

 花咲徳栄・石塚のような今秋ドラフト上位候補に挙がる逸材から将来性を感じさせる選手まで気になる高校生遊撃手を追いかけるだけでも充実の夏になりそうだ。

文=河合洋介(スポーツニッポン・アマチュア野球担当)
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