期待の長距離砲が満を持して昇格
タイガースの岡田彰布監督は連覇を狙う2024年のテーマに「新戦力の台頭」を掲げた。
昨季、18年ぶりのリーグ優勝を経験したVメンバーは健在でも“伸びしろ”が無ければ2年連続のセ・リーグ制覇はおぼつかない。ニューカマーの登場を待ち望んでいた。
そんな中、本格的な夏の到来とともに熱い若虎が甲子園にやってきた。
野口恭佑――。プロ2年目の23歳は、昨秋キャンプで持ち味のパワフルな打撃と飛距離が監督に目に留まって育成から支配下登録を勝ち取った。今季は開幕を2軍で迎えたものの、状態の上がってきた6月下旬に満を持して昇格を果たした。
「もうやっていくだけ。気持ちを引き締めてやりたい。バッティングで一番アピールしたい」
まっすぐな決意表明に野心がうかがえた。そして、快音を響かせるのにそう時間はかからなかった。
7日のベイスターズ戦の5回無死一塁で代打として打席に入ると、左腕アンソニー・ケイの153キロの直球を振り抜いて右前に運び、右翼手が打球を後逸する間に三塁に到達。運も引き寄せる男が刻んだプロ初安打をきっかけにしてチームは最大4点差をひっくり返し、9回に逆転サヨナラ勝ち。背番号97が劇的勝利への足がかりを作って見せた。
10日のスワローズ戦では「6番・右翼」でプロ初スタメン。1点劣勢の4回には二死二塁で奥川恭伸の148キロ直球を中前へはじき返す同点打。プロ初タイムリーを記録すると、6回にも一死一・三塁で内野ゴロの間に1打点と計2打点の活躍でチームの4連勝に貢献した。
試合後、殊勲者として上がった甲子園のお立ち台。目指してきた舞台で無数の「野口コール」を浴びて頬は緩んだ。
「もう勝った時の喜びがすごい嬉しいし、楽しいですし。(前日の9日まで)2試合連続サヨナラですごい楽しかったです」
7日のベイスターズ戦、9日のスワローズ戦とチームは球団史上初となる2試合連続の逆転サヨナラ勝ちで、野口は劇的な幕切れの連続をしっかりと目に焼き付けていた。
2軍では試合前の声出しで場を和ませる一発ギャグを披露するなど、ムードーメーカーの役割も担ってきた。1軍でも自身が安打を放った試合でチームはともに劣勢をはね返しての勝利。ラッキーボーイとしての存在感も増してきている。
森下翔太、小幡竜平は同じ2000年生まれ。先に1軍を経験している同世代の面々も刺激にし、はいあがってきた。
「(甲子園での野口コールは)恥ずかしいというか慣れていないので、早く慣れるようにしたい」
何度でも聞きたい「野口コール」に堂々と応えられるようになった時、連覇へのキーマンも生まれるはずだ。
文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)