上位4チームが僅差でひしめき合う“混セ”とは対照的に、パ・リーグはソフトバンクが2位以下に大差をつけ、早くも独走態勢に入った。7月2日に最大12.5ゲーム差をつけてから急失速したものの、依然有利な状況に変わりはない。そして、過去にも2位以下を大きく引き離し、球史に残る“ぶっちぎりV”を実現したチームが存在する。
NPB史上、2位に最大差をつけての“ぶっちぎりV”を達成したのが、1990年の巨人だ。
前年に続きV2を狙った巨人だったが、開幕カードでは苦戦を強いられた。
4月3日の開幕戦、ヤクルト戦は、1-3とリードされた8回に篠塚利夫の右翼ポール際へのファウルにも見える微妙な打球が、同点2ランと判定される幸運で追いつき、延長14回サヨナラ勝ち。
翌4日のヤクルト戦も、2-2の延長12回に8回からロングリリーフの木田優夫がサヨナラ弾。2日連続のサヨナラ劇で勢いに乗った巨人は、4月を14勝5敗と勝ち越し、首位に立った。
そして、5月8日に謹慎明けの桑田真澄が、2位・大洋を4安打完封。その後、大洋はじりじりと後退し、“独走巨人”は前半戦終了時点で大洋に9.5ゲーム差をつけた。
さらに7月21日からオールスターを挟んで9連勝と白星街道を驀進し、8月3日には早くもマジック「32」が点灯。後半戦を26勝5敗と驚異的な勝率を記録した巨人は、マジックを「2」とした9月8日のヤクルト戦で、延長10回に吉村禎章が劇的なサヨナラソロを放ち、NPB史上最速のリーグ優勝を決めた。
終わってみれば、88勝42敗の勝率.677。2位・広島に22ゲーム差、最下位・阪神には36ゲーム差の“ぶっちぎりV”。2年連続20勝の斎藤雅樹をはじめとする投手陣は、130試合のうち、完投が70試合と安定感抜群だった。
そんななかで、藤田元司監督は「開幕では戦力が整わず苦しかった。投手陣は木田が先発、リリーフとよく頑張ってくれた。この日があるのは、木田のお蔭と言ってもいい」と最強投手陣を陰で支えた名脇役をヒーロー1番手に挙げている。
歴代2位の南海、3位の巨人は、ともに1951年に記録している。パの覇者・南海は5月の9連勝で波に乗り、2位・西鉄に18.5ゲーム差。監督兼二塁手の山本一人(鶴岡一人)が、リーグ3位の打率.311でMVPに輝いた
一方、セの覇者・巨人も、就任2年目の水原茂監督の下、6月以降上昇気流に乗り、2位・名古屋に18ゲーム差の“ぶっちぎりV”。打率.377で首位打者になった川上哲治がMVPを手にした。
同年はシーズン後に日米野球が開催されたため、シーズン途中打ち切りの変則日程となったが、パ最下位の近鉄は98試合しか消化できなかったのに、南海に33.5ゲーム差、セ最下位の広島も99試合で打ち切りながら、巨人に41ゲーム差と大きく離された。
歴代4位は2011年のソフトバンクだ。秋山幸二監督就任3年目の同年、ソフトバンクは西武から細川亨、横浜から内川聖一がFA移籍、オリックスを退団したアレックス・カブレラも獲得するなどの大型補強で、8年ぶりの日本一を目指した。
シーズン前半は日本ハムとの首位争いとなり、前半戦は両チーム同率首位で折り返した。
だが、後半戦開始早々の7月29日からの天王山直接対決で、日本ハムを3タテして抜け出すと、8月は13勝11敗2分ながら、堅実に貯金を2つ上積み。9月5日からの日本ハム3連戦も、2戦目で福田秀平がダルビッシュ有から値千金のタイムリー二塁打を放ち、1-0で逃げ切るなど、投打がかみ合って3連勝。一気に7ゲーム差に広げた。
そして、マジック「1」で迎えた9月17日の日本ハム戦も、1点を追う9回一死二塁、松田宣浩の同点タイムリー三塁打で1-1の引き分けに持ち込み、2年連続リーグVを達成した。V決定後、日本ハムが8連敗するなど急失速したこともあって、最終的に17.5ゲーム差まで開いている。
前出のソフトバンクと歴代4位タイで並ぶのが、2016年の広島だ。
緒方孝市監督2年目の同年、開幕直後の3月は3勝3敗。その後も勝ったり負けたりが続くが、開幕4連勝で首位に立った巨人の急失速で4月12日に阪神とともに3チーム同率首位に。同15日には単独首位に浮上した。
その後も“混セ”が続くなか、交流戦開催中の6月に一気に抜け出す。同17~19日のオリックス戦で、21歳の若手・鈴木誠也が、2試合連続サヨナラ本塁打を含む3試合連続決勝弾の快挙を記録し、一躍“時の人”になる。緒方監督が口にした「神ってる」も流行語になり、6月29日まで怒涛の12連勝。球宴時には2位に10ゲーム差をつけた。
8月24日にはマジック「20」が点灯。そして、マジック「1」で迎えた9月10日の巨人戦も、鈴木の2打席連続弾などで6-4の勝利。25年ぶり7度目のリーグ優勝を決めた。9月10日のV決定は、2リーグ制以降、1990年の巨人に次ぐ早さだった。
投手陣は、野村祐輔、クリス・ジョンソン、黒田博樹が先発三本柱を構成した。田中広輔、菊池涼介、丸佳浩の不動の1~3番に、松山竜平、新井貴浩らの中軸も強力。チーム防御率、チーム打率ともにリーグトップを誇り、最終的に2位・巨人に17.5ゲーム差をつけた。
文=久保田龍雄(くぼた・たつお)
NPB史上、2位に最大差をつけての“ぶっちぎりV”を達成したのが、1990年の巨人だ。
前年に続きV2を狙った巨人だったが、開幕カードでは苦戦を強いられた。
4月3日の開幕戦、ヤクルト戦は、1-3とリードされた8回に篠塚利夫の右翼ポール際へのファウルにも見える微妙な打球が、同点2ランと判定される幸運で追いつき、延長14回サヨナラ勝ち。
翌4日のヤクルト戦も、2-2の延長12回に8回からロングリリーフの木田優夫がサヨナラ弾。2日連続のサヨナラ劇で勢いに乗った巨人は、4月を14勝5敗と勝ち越し、首位に立った。
そして、5月8日に謹慎明けの桑田真澄が、2位・大洋を4安打完封。その後、大洋はじりじりと後退し、“独走巨人”は前半戦終了時点で大洋に9.5ゲーム差をつけた。
さらに7月21日からオールスターを挟んで9連勝と白星街道を驀進し、8月3日には早くもマジック「32」が点灯。後半戦を26勝5敗と驚異的な勝率を記録した巨人は、マジックを「2」とした9月8日のヤクルト戦で、延長10回に吉村禎章が劇的なサヨナラソロを放ち、NPB史上最速のリーグ優勝を決めた。
終わってみれば、88勝42敗の勝率.677。2位・広島に22ゲーム差、最下位・阪神には36ゲーム差の“ぶっちぎりV”。2年連続20勝の斎藤雅樹をはじめとする投手陣は、130試合のうち、完投が70試合と安定感抜群だった。
そんななかで、藤田元司監督は「開幕では戦力が整わず苦しかった。投手陣は木田が先発、リリーフとよく頑張ってくれた。この日があるのは、木田のお蔭と言ってもいい」と最強投手陣を陰で支えた名脇役をヒーロー1番手に挙げている。
歴代2位の南海、3位の巨人は、ともに1951年に記録している。パの覇者・南海は5月の9連勝で波に乗り、2位・西鉄に18.5ゲーム差。監督兼二塁手の山本一人(鶴岡一人)が、リーグ3位の打率.311でMVPに輝いた
一方、セの覇者・巨人も、就任2年目の水原茂監督の下、6月以降上昇気流に乗り、2位・名古屋に18ゲーム差の“ぶっちぎりV”。打率.377で首位打者になった川上哲治がMVPを手にした。
同年はシーズン後に日米野球が開催されたため、シーズン途中打ち切りの変則日程となったが、パ最下位の近鉄は98試合しか消化できなかったのに、南海に33.5ゲーム差、セ最下位の広島も99試合で打ち切りながら、巨人に41ゲーム差と大きく離された。
ソフトバンクは「17.5ゲーム差」、西武は「17ゲーム差」で圧倒
歴代4位は2011年のソフトバンクだ。秋山幸二監督就任3年目の同年、ソフトバンクは西武から細川亨、横浜から内川聖一がFA移籍、オリックスを退団したアレックス・カブレラも獲得するなどの大型補強で、8年ぶりの日本一を目指した。
シーズン前半は日本ハムとの首位争いとなり、前半戦は両チーム同率首位で折り返した。
だが、後半戦開始早々の7月29日からの天王山直接対決で、日本ハムを3タテして抜け出すと、8月は13勝11敗2分ながら、堅実に貯金を2つ上積み。9月5日からの日本ハム3連戦も、2戦目で福田秀平がダルビッシュ有から値千金のタイムリー二塁打を放ち、1-0で逃げ切るなど、投打がかみ合って3連勝。一気に7ゲーム差に広げた。
そして、マジック「1」で迎えた9月17日の日本ハム戦も、1点を追う9回一死二塁、松田宣浩の同点タイムリー三塁打で1-1の引き分けに持ち込み、2年連続リーグVを達成した。V決定後、日本ハムが8連敗するなど急失速したこともあって、最終的に17.5ゲーム差まで開いている。
前出のソフトバンクと歴代4位タイで並ぶのが、2016年の広島だ。
緒方孝市監督2年目の同年、開幕直後の3月は3勝3敗。その後も勝ったり負けたりが続くが、開幕4連勝で首位に立った巨人の急失速で4月12日に阪神とともに3チーム同率首位に。同15日には単独首位に浮上した。
その後も“混セ”が続くなか、交流戦開催中の6月に一気に抜け出す。同17~19日のオリックス戦で、21歳の若手・鈴木誠也が、2試合連続サヨナラ本塁打を含む3試合連続決勝弾の快挙を記録し、一躍“時の人”になる。緒方監督が口にした「神ってる」も流行語になり、6月29日まで怒涛の12連勝。球宴時には2位に10ゲーム差をつけた。
8月24日にはマジック「20」が点灯。そして、マジック「1」で迎えた9月10日の巨人戦も、鈴木の2打席連続弾などで6-4の勝利。25年ぶり7度目のリーグ優勝を決めた。9月10日のV決定は、2リーグ制以降、1990年の巨人に次ぐ早さだった。
投手陣は、野村祐輔、クリス・ジョンソン、黒田博樹が先発三本柱を構成した。田中広輔、菊池涼介、丸佳浩の不動の1~3番に、松山竜平、新井貴浩らの中軸も強力。チーム防御率、チーム打率ともにリーグトップを誇り、最終的に2位・巨人に17.5ゲーム差をつけた。
文=久保田龍雄(くぼた・たつお)