高校野球の誤審問題に対応策はあるのか
7日に開幕した夏の甲子園は、連日の好天にも恵まれて順調に日程を消化。折り返しとなる13日は、花巻東(岩手)が出場49校の“大トリ”として登場する。
これまでの試合をざっと振り返ってみると、今春から採用された新基準の「飛ばない」バットの影響もあってか、手に汗握る投手戦が目立っている。今大会の第1号本塁打が、大会6日目とかなり遅かったのがその象徴といえるだろう。
一方で、得点の取り合いになる試合も決して少なくない。ただ、失策数の多さも目立っており、守備のほころびが傷口を広げるシーンも多々あった。
そんな今大会において、悪目立ちしているのが審判による“疑惑の判定”である。
内角に投じられた“ボール”に対し、打者がのけぞるようによけた球が“ストライク”とコールされるのはまだいい方。中には試合最終盤にアウト・セーフの微妙な判定が勝敗を決する場面もあり、物議を醸した。
大正4年の第1回から、昭和、平成を経て、今は令和6年。高校野球ファンの観戦方法もラジオからテレビ、そしてネットへと変遷し、いつでもどこでもリアルタイムで視聴可能な時代を迎えている。
さらにSNS時代の到来とともに、微妙な判定や疑惑の判定は、すぐさまネット上に公開される。今大会においてもそういった「決定的瞬間」が拡散されたのは1度や2度ではなかった。
確かに酷暑の中、数万人の観客の前で、100%正しい判定を下し続けることは不可能だろう。それで飯を食っているプロ野球の審判ですら、“リクエスト制度”によって一度下したジャッジが覆ることは日常茶飯事。プロではない高校野球の審判ならある程度の誤審は想定の範囲内と考えるのが正しいのかもしれない。
ただ、誤審によって試合の勝敗がひっくり返ることだけはあってはならない。それを高校野球の審判に求め続けるのはもはや限界ではないか。
夏の大会は各地区の予選も含めて、約2か月間で3000試合以上が行われる。そのすべてでプロ野球のようなリクエスト制度を導入するのは非現実的だろう。専用カメラなど新たな設備投資が必要となるからだ。
ただプロ野球の阪神タイガースが本拠地としている甲子園球場ならそれは可能。“負けたら終わり”という意味では、地方の予選と甲子園の本大会を区別すべきではないという意見も当然あるだろう。ただ公平になることを待っていては、何十年かかるか分からない。
少なくとも甲子園で開催される試合では各チームに1度ずつでもリクエストの権利を与えるべきではないだろうか。生身の人間である審判にもミスはあって当然。そんな審判の立場を守るためにも高野連には早急に、前向きにリクエスト制度の導入を考えてもらいたい。
文=八木遊(やぎ・ゆう)