コラム 2024.08.20. 06:30

昭和のプロ野球では続出していた!? 「マダックス」を達成した名投手列伝

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オリックス・木佐貫洋 (C)Kyodo News
 今季は4月29日にヤクルト・ヤフーレ、6月12日に西武・隅田知一郎と日本ハム・伊藤大海、6月16日にDeNAのルーキー・石田裕太郎、6月25日に広島・森下暢仁、7月5日に中日・高橋宏斗と、100球未満で完封する「マダックス」の達成者が相次いでいる。昨季は東克樹、大貫晋一(いずれもDeNA)の2人だけだったことを考えると、“超投高打低”の今季を象徴する出来事ともいえる。

「マダックス」は、1988年以降ではメジャー最多となる13回以上の100球未満完封(MLBでは公式戦の投球数を記録していない試合があるので、確認されているのは13回)を達成したグレッグ・マダックスにちなみ、2012年に命名された。

 NPBでは、2021年5月15日にヤクルト・小川泰弘、同16日に楽天・早川隆久が2日連続でマダックスを達成したときに“マダックスの代名詞”として広く認知されるようになった。こうした事情から、それ以前の達成者については、ファンの記憶にあまり残っていないはずだ。

 NPBでも、過去の達成者すべてを調べることはできないが、2003年から昨年までの21年間でのべ37人が達成しており、1シーズン平均約1.8人。「投手は先発完投」が当たり前だった昭和期は、もっと多くの投手がマダックスを達成していた。

 その中で、NPB史上最少投球数の完封とされているのが、阪急・柴田英治が1952年5月11日の近鉄戦で記録した71球だ。この日、近鉄を散発4安打完封した柴田について、当時の新聞は、金星時代の林直明が1948年5月6日の中日戦で記録した73球を更新し、新記録を達成したことを報じている。

 単純計算して、9イニングすべて3球三振に打ち取っても81球を要する。71球がいかにレアな記録であるかがわかる。

 この柴田の記録を9イニング限定で更新したのが、阪神・渡辺省三だ。1957年9月26日の広島戦、渡辺は9回まで70球で無失点に抑えたが、試合が0-0のまま延長戦に突入したことから、惜しくも“参考記録”になった。

 マダックスと猛打賞を同時に達成したのが、西鉄・稲尾和久である。
1968年9月1日の近鉄戦、稲尾は99球で2安打完封勝利を挙げるとともに、4打数3安打1打点と、投打にわたる活躍で勝利に貢献した。

 前年8月3日の南海戦以来、約1年ぶりの完封に、稲尾は「このところ、ずっと体の調子もいい。その証拠に、最近の試合では、1イニングに10球は投げていないからな。確か9.5球ぐらいで済んでいる。今日のようにスピード、ボールが思ったところに決まったときはそうだ」と好調の結果であることを強調した。

 また、阪神時代の江本孟紀は、1977年7月2日の中日戦で、70年代以降では最少の80球でマダックスを達成している。

 この日、中5日で先発した江本は、スピード十分の直球に緩いカーブを織り交ぜながら低めを丁寧に突き、許した安打はわずか2本。フルカウントは1度もなく、二塁すら踏ませなかった。夏場にもかかわらず、アンダーシャツを替える必要もない“汗なし完封”をはたした江本は「(ヤクルトは)メチャクチャ早打ちやった。まあ、珍しくストライク先行だし、球の変化が良かったから、緩い球でも速く見えたんだろう。それに、変に途中で気を抜くクセを、最近やめてるからね」と振り返った。

 稲尾と江本のコメントに集約されるように、スピード、変化球の切れ、ストライク先行、思いどおりのコース、相手打線の早打ち、集中力の持続などの諸条件がすべて揃ったとき、マダックスは達成される可能性が高くなるようだ。


解任された“恩師”のために力投をみせた


 プロ初完封をマダックスで飾ったのが、中日時代の平井正史だ。

 2003年9月9日の広島戦、平井は初回に先頭の森笠繁にいきなり四球を許し、送りバントで一死二塁のピンチを招くが、後続2者をいずれも遊ゴロに打ち取り、無失点。2回以降も散発の2安打に抑え、93球で完封した。

 試合後、平井は「今日だけはどうしても勝ちたかった」と語気を強めた。実は、この日の試合前、オリックス入団以来の恩師・山田久志監督が成績不振を理由に解任されていた。去り行く恩師に思いを馳せながら、一世一代の投球を演じたことが、プロ9年目の初完封につながった。

 平井はさらに9月30日の広島戦でも91球完封を記録。3週間のうちに2度のマダックスを達成している。
また、広島は9月24日の横浜戦でも、ドミンゴ・グスマンに外国人初のマダックス(98球)を達成され、わずか半月余りで3度もマダックスを喫する羽目になった。

 2年連続でマダックスを達成したのが、木佐貫洋だ。

 オリックス時代の2012年、シーズン初登板となった4月8日の楽天戦で、初回二死二塁のピンチを切り抜けると、2回から5回までパーフェクトに抑え、終わってみれば、4安打、無四球の95球完封勝利。前年2勝に終わった屈辱をバネに、開幕3戦目の先発に指名され、「このチャンスは絶対にモノにしてやる、食らいついてやると思って」必死に投げたことが、好結果を生んだ。

 そして、日本ハムに移籍した翌13年6月13日の阪神戦でも、「カウントを悪くしない」ことを心掛け、2安打、91球で前回のマダックス以来の完封勝利。午後8時半前に試合終了という省エネ投球に、本人も「めっちゃ早い。これほど球数の少ない完封は初めて」と会心の笑顔を見せていた。

文=久保田龍雄(くぼた・たつお)

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