プロ入り11年目でメジャー初登板
カブスの鈴木誠也が4安打の固め打ちを披露した先日(現地26日)のパイレーツ戦。9回表に鈴木が4本目の安打を放った相手投手はブレイディ・フェイグルというサウスポーだった。
フェイグルの名前を知っていたファンがいるとすれば、かなりのメジャー通に違いない。彼は将来の活躍が期待される若手の有望株というわけでもなく、極めて無名に近い存在だったからだ。
フェイグルは大学卒業後の2013年秋にFA(ドラフト外)でブレーブスと契約。2014年にマイナーでデビューを果たして以降、独立リーグなどを転々としてきた苦労人である。今季がプロ入り11年目、33歳の彼にとって26日の試合が待ちに待ったメジャー初登板だった。
ところが記念すべきメジャーの初マウンドでフェイグルは1回2/3を投げて6失点と炎上。32.40という防御率を記録すると、翌日には早くもDFAとなり、メジャー登録40人枠から外れてしまった。
年齢的にも26日の試合がフェイグルにとってメジャー最初で最後の登板になる可能性は高いだろう。今後は他球団への移籍や、パイレーツ傘下3Aインディアナポリスに戻る選択肢もあるが、選手として33歳のオールドルーキーを待ち受ける未来は決して明るくない。
それでもドラフト上位で指名されるような選手でさえ、メジャーの舞台に辿り着かず野球人生を終えることがほとんどの厳しいこの世界において、フェイグルが長年の夢をかなえた事実はとてつもなく大きいはずだ。
試合後、フェイグルは「明らかに、物事は私が望んでいたようにはいかなかったが、私がこのために費やしてきたすべてのハードワークを取り去ることは誰にもできない」とコメント。「これまで諦めるつもりもなかったし、まだやれることがある限り、今後も諦めるつもりはない」と、夢の続きを追いかける意欲を見せていた。
今季は3Aでリリーバーとして33試合に登板し、7勝2敗、防御率3.83と安定した投球を披露していただけに、再びメジャーの舞台に這い上がるだけの能力はまだあるはず。一度メジャーを味わったことで燃え尽きてしまうのか、それとも火が付くのかフェイグルの今後を見守りたい。
そんなフェイグルの記事をかつて目にした日本のファンもいるかもしれない。
実は日本でも数年前にフェイグルが話題になったことがある。内容はブレイディ・フェイグルという同姓同名の投手が2人いるというもの。5歳違いの2人はともに眼鏡をかけ、あごには赤いひげを蓄え、身長も同じ。違うのは年齢と利き腕くらいだった。
実際に2人は対面も果たしており、外見はまさに兄弟そのもの。なんとテレビ番組の企画でDNA鑑定を行ったが、血縁関係はなかったという。
奇しくも5歳下の右腕フェイグルは今年4月、故障のため選手生活にピリオドを打つことを表明。すでに第二の人生を歩み始めている。
果たして左腕フェイグルの野球人生はどこまで続くのか。33歳が再びメジャーのマウンドに戻ってくる姿をファンは待っている。
文=八木遊(やぎ・ゆう)