バーランダーらしからぬ“炎上”が続く
節目となるメジャー20年目を迎えているあの剛球右腕がまたもやノックアウトを食らった。
現地8日(日本時間9日)、この日唯一のナイトゲームとなった「アストロズ-ダイヤモンドバックス」は、ダイヤモンドバックスが12-6で快勝し、連敗を3でストップした。
一方で、同一カード3連勝を狙ったア・リーグ西地区首位のアストロズは、ホームで痛恨の黒星。地区2位のマリナーズがこの日のデーゲームで勝利を収めていたため、両者のゲーム差は4.5に縮まった。
アストロズにとって大きな誤算だったのは、先発を務めた41歳のジャスティン・バーランダーだった。初回こそ無失点で切り抜けたものの、2回に3失点、3回に5失点、計8失点の大炎上で4回のマウンドには登らなかった。
今年2月に41回目の誕生日を迎えたバーランダー。今季は右肩の故障で出遅れていたが、4月中旬に戦列復帰を果たすと、5月末までに8試合に先発し、3勝2敗、防御率3.26と平常運転の投球を続けていた。
ところが6月以降は、首の違和感による約1か月半の戦線離脱を挟み、6試合に先発したが、いずれも6回持たずに降板。特に直近の2試合は合計13失点と、バーランダーらしからぬ“炎上”が続いている。
ちなみにバーランダーにとって1試合で8点以上奪われるのは、2017年4月以来。実に7年5か月ぶりの屈辱だった。今季の防御率は5.30まで悪化し、今後の投球次第では、ポストシーズンでローテーションから外される可能性も出てきたといえるだろう。
これまでサイヤング賞を3度、最多勝も4度受賞しているバーランダーは、今季春先に挙げた3勝を含めて通算260勝を誇る。もちろんこれは現役トップで、絶滅危惧種となった“300勝投手”を狙える希少な一人とされていた。
ところが、この3か月間の投球を見る限り、300勝の夢は遠ざかってしまったと言わざるを得ないだろう。
フォーシームの平均球速は2017年の153.8キロから、加齢とともに右肩下がり。今季は150.4キロまで落ちている。見方を変えれば、41歳で平均150キロを超えているのはすごいともいえるが、全盛期の投球を知っているファンとすれば一抹の寂しさを感じてしまうのも事実だ。
残り40勝に迫っている300勝達成は、一気に遠のいた感もあるが、実は42歳シーズン以降に40勝以上挙げた投手は過去に7人もいる。
42歳シーズン以降に最も多くの勝利を挙げたのは、48歳まで現役を続けたフィル・ニークロで、7シーズンの間に85勝をマークした。ニークロ以外には、77勝のジェイミー・モイヤー、43勝のバートロ・コロン、40勝のランディ・ジョンソンらが白星を積み重ねた。
今季こそ不調に陥っているバーランダーだが、昨季が13勝、2年前には18勝を挙げており、まだ巻き返す余力は十分に残っているはずだ。
2009年のランディ・ジョンソンを最後に300勝投手は生まれていない。数年後、歓喜に包まれるバーランダーの姿を我々は目撃することができるだろうか。
文=八木遊(やぎ・ゆう)