7回制の議論について現場の声は…?
高校野球で7回制導入の議論が始まった。
日本高野連が「高校野球7イニング制に関するワーキンググループ」を設置し、同制度を導入した際に生まれる長短所を調べている。
同グループでは6、7月と2度の議論を交わしており、今後も複数回の会議を開いて12月に実施する理事会での報告を目指している。
今月に開催された「第13回 BFA U18アジア選手権」など国際大会で7回制を採用されていることが議論開始のきっかけとなった。日本の高校野球を国際大会基準に合わせた場合に、部員数減少や酷暑、肩肘についての障害予防などにどのような影響があるかを調べていくことになる。
指導者は7回制の議論開始をどのように受け止めているのか。今夏の甲子園大会に出場した監督から現場の声を拾った。
甲子園春夏連覇を2度達成した大阪桐蔭(大阪)の西谷浩一監督は、「いろんな角度から話をしていくことはいいこと」と前置きした上で、7回制導入に反対の立場を示した。
「私個人としては9回やってほしいです。野球は9回だと思う。8、9回は凄く大事。7~9回に強いチームをつくろうと僕たちは言っている。勝っていれば最後まで勝ちたい、(劣勢なら)最後にひっくり返したい。そこには色々な強い思いがあると思います」
さらに「いろんな方に話をしていただいて、現場の声も聞いていただきたいなと思います」と付け加えた。
慎重に言葉を選ぶ印象のある西谷監督が明確に立場を表明したことは、「9回制」に対する譲れない思いがあると言える。
明徳義塾(高知)の馬淵史郎監督は、選手の打席数が確実に減ることに対して懸念を示した。
「みんなが平等、公平に最低でも3打席立てるということで(9回制が)できたと聞いたことがある。(7回制なら)3打席は3番までしか立てないかもしれない。高校3年間練習をしてきて2打席で終わるのは、かわいそうな気がしますけどね」
7回制に賛成の立場を示した指導者の意見
唯一、7回制に賛成の立場を示したのが広陵(広島)の中井哲之監督だ。
「(議論開始は)当然ではないですか。7回制には7回制のドラマがある。選手ファーストであるべきで、肩肘(の故障予防)とか熱中症のこととかを考えると、そうあるべき。野球人口は減るし、これならできるという野球界を考えていくべきだと思います」
広陵は、暑さ対策の一環として今夏の甲子園大会からユニホームを黒から白に変更。7回制に関する活発な議論を歓迎したことは、慣習に縛られずに柔軟な姿勢を貫いてきた中井監督らしい意見と言える。
7回制が導入されれば、高校野球が変わるとの意見も多く聞かれた。
今夏の甲子園大会で初優勝した京都国際(京都)の小牧憲継監督は、打順から継投策まで投打に影響が及ぶと考えている。
「根本から野球が変わりますよね。1番からいい打者を並べ、早めに仕掛けていかないと、あっという間に試合が終わってしまう。(投手は)2イニングずつ繋いでいけば球威は落ちない。いい投手を揃えているチームが有利になってくると思います」
「逆転の報徳」としても知られる報徳学園(兵庫)の大角健二監督は「報徳は昔からラッキー8と言いまして。8回に何か起こると言われていた。7回制になると新たな伝統をつくらないといけない」と言及した。
今月の「U18アジア選手権」を7回制で戦った高校日本代表の小倉全由監督は、大会前の練習試合を通して「7回制なら確実にバントで点を取っておかないといけない場面がある。監督がもう一つ勉強しないといけない」と9回制との戦術の違いに言及していた。
日本高野連は、暑さ対策や肩肘の障害予防などにどのような影響があるかを調べている。ただし、そのような健康面だけでなく、戦術面などにも大きな影響を与えることは間違いない。
文=河合洋介(スポーツニッポン・アマチュア野球担当)