コラム 2024.11.02. 16:50

あまりに悲劇すぎる…過去に起きた“1球サヨナラ敗戦”の悪夢

無断転載禁止
西武時代の渡辺久信氏 (C)Kyodo News

“1球サヨナラ敗戦”の悪夢


 巨人・平内龍太が8月18日のDeNA戦で、1-1の延長11回裏、登板直後の初球をタイラー・オースティンに左中間スタンドに運ばれ、たった1球でサヨナラ負けを喫した。サドンデスとも言うべき“1球サヨナラ敗戦”は、巨人では1948年の川崎徳次(5月29日の中日戦)以来、76年ぶりの珍事だった。川崎はNPB史上第1号になるが、他球団にもたった1球に泣いた不運な投手が存在する。


 連続試合セーブのパ・リーグタイ記録を達成した翌日に1球サヨナラ被弾に泣いたのが、西武・渡辺久信だ。

 入団2年目の19歳の右腕は、不調の守護神・森繁和に代わって5月中旬から抑えに抜擢されると、5月17日の阪急戦から同27日の南海戦まで5試合連続セーブを記録。

 そして、6月5日の日本ハム戦でも、先発・東尾修が7回を2安打無失点の完封ペースだったにもかかわらず、「(最後まで)投げさせんでもいいし、渡辺の記録もかかっているから」(広岡達朗監督)と8回からリリーフ。2回を1安打4奪三振無失点の完封リレーで、前出の森、南海時代の江夏豊と並ぶ6試合連続セーブのパ・リーグタイ記録(当時)を実現した。

 だが、一夜明けると、天国から地獄へと突き落とされてしまう。

 翌6日の日本ハム戦、渡辺は1-1の9回に4番手でマウンドに上がった。この時点で連続セーブ記録は自動的に途切れ、延長戦で勝てば、セーブポイントがつく可能性もあったが、試合時間は延長イニングに入ることができない3時間ギリギリとあって、いずれにしても新記録達成は不可能。広岡監督は「渡辺を出したのは、引き分けでもいいと思ったから」と説明したが、皮肉にもこの“石橋采配”は裏目に出る。

 渡辺は初球をいきなり古屋英夫に左越え本塁打され、たった1球でサヨナラ負け。8、9回の勝ち越し機を強引な走塁で潰した西武は、30勝一番乗りどころか、引き分けに持ち込むことにも失敗した。

 だが、前日も「記録より先発に戻りたいですよ」と口にしていた渡辺は「こんなこともありますよ。記録(が途切れたことは)は意識しなかった」とサバサバしていた。

 その後はリリーフと掛け持ちで念願の先発に戻り、8勝8敗11セーブでチームのリーグ優勝に貢献した。


 中日・星野仙一も、たった1球に泣いた一人だ。

 1978年9月19日のヤクルト戦、肘を痛めて離脱した鈴木孝政に代わって抑えを務めていた星野は、5-5の9回裏に三沢淳をリリーフ。延長戦突入を見越しての継投でもあったが、先頭打者の船田和英に初球をセンター左にサヨナラ本塁打され、まさかの1球敗戦投手に。球団創設29年目の初V目前のヤクルトは、第1試合に続いてダブルヘッダーを連勝し、マジックを「11」に減らした。

 試合後、報道陣の取材に、星野は「(打たれたのは)真っすぐ。こんなもんや」と答えるのがやっとで、ショックの大きさを物語っていた。

 しかし、話はこれだけでは終わらなかった。

 翌20日のヤクルト戦、4年目のドラ1右腕・土屋正勝が6回まで無失点に抑え、プロ初勝利の権利を得て降板。2-0の8回から3番手でリリーフした星野だったが、勝利目前の9回裏、大杉勝男の左翼線二塁打とチャーリ・マニエルの中前安打で無死一、三塁のピンチを招くと、杉浦亨をカウント0-2と追い込みながら、3球目を右中間席に逆転サヨナラ3ランを被弾。悪夢の2日連続KOとなった。「信じられん。まいったなあ」と言ったのは、勝ったヤクルト・広岡達朗監督だったが、星野も心の中で同じセリフを口にしていたかもしれない。

 チームも夏場以降の失速で5位に沈み、10月4日のヤクルト戦では0-9と完敗、目の前で優勝の胴上げを見せられるなど、“燕の引き立て役”でシーズンを終えている。


 1軍昇格直後のシーズン初登板で1球サヨナラ敗戦を記録したのが、DeNA時代の菊地和正だ。

 2014年4月4日の広島戦、1-1の延長11回裏、6番手としてマウンドに上がった菊地は、先頭の梵英心に初球を左翼席上段に運ばれ、1球敗戦投手になったばかりでなく、3連敗を喫したチームも最下位転落と踏んだり蹴ったりだった。

 それから5日後、4月9日の阪神戦、菊地は3点を勝ち越された直後の8回二死一塁から敗戦処理でリリーフし、藤井彰人を1球で三ゴロに打ち取った。

 悪い流れを断ち切ったDeNAは9回表、3安打を集中して1点差まで追い上げ、なおも二死二塁で、菊地の代打・金城龍彦が打席に。もし2ランを打てば、菊地は1週間足らずのうちに1球敗戦と1球勝利の両方を記録するという珍事が実現するところだったが、金城は右飛に倒れ、ゲームセット。

 そして、結果的にこれが菊地のNPB最後の登板となった。同年、登板2試合、投球数2の0勝1敗、防御率27.00でシーズンを終えた菊地は戦力外通告を受け、翌2015年、テスト生として古巣・日本ハムの春季キャンプに参加するも不合格。群馬ダイヤモンドペガサスに入団し、NPB復帰を目指したが、同年11月の12球団合同トライアウト受験を最後に現役引退した。


文=久保田龍雄(くぼた・たつお)

【PR】中日ドラゴンズを観戦するなら「DAZN Baseball」

立浪和義監督3年目の中日は中田翔を主砲に迎え打力を強化。大野雄大や小笠原慎之介ら実績のある先発陣を打線が援護できるかが下剋上のカギ!

「DAZN Baseball」とは、月額2,300円(税込)でDAZNのプロ野球コンテンツをすべて楽しめるプランです(月々払いの年間プランのみ)。

プロ野球だけを楽しみたい方は、月額4,200円(税込)のDAZN Standard​よりも1,900円お得に視聴できます。

POINT

ペナントシリーズ、交流戦、CSまで余さず堪能できる!

② オフシーズンもドキュメンタリーやバズリプレイなどコンテンツが充実!

毎月2,300円でライブ配信・見逃し配信・ハイライトまで視聴可能!

【PR】「DMM×DAZNホーダイ」でプロ野球を観よう!

「DMM×DAZNホーダイ」とは、DMMプレミアムとDAZN Standardをセットで利用できるプラン。

単体契約ならDMMプレミアム月額550円(税込)、DAZN Standard月額4,200円(税込)のところ、本プランなら月額3,480円(税込)だからとってもお得です。

POINT

① 「DMM×DAZNホーダイ」なら単体契約より月額1,270円(税込)も安い!

② DAZNだけの契約と比較しても月額720円(税込)お得に楽しめる!

③ 新規入会月から最大3カ月間、「DMMポイント」を550ポイント付与!

ポスト シェア 送る

もっと読む

  • ALL
  • De
  • 西