ドラフト制度の大きな転換点…
2024年のプロ野球ドラフト会議が24日に行われる。今年は大学生に逸材がそろっており、特に左腕・金丸夢斗(関西大)と内野手の宗山塁(明治大)の2人は競合必至といわれている。
果たしてどの球団が強運を引き寄せて、将来のスター候補の交渉権を獲得することになるのか。約24時間後には彼らの次のステージが決まる。
近年のドラフトは必ずといっていいほど1位選手の入札で抽選が発生する。しかし、かつては“無風ドラフト”も珍しくなかった。
最後にくじ引きが一度も行われなかったドラフトはちょうど20年前の2004年のことだ。当時は社会人、大学生なら2人まで事前に獲得できる「自由獲得枠制度」があり、高校生以外のトップレベルの選手はほぼ意中の球団に入団することができた。
ただこの年のドラフト会議自体は無風だったが、ドラフト前はかなり騒々しかったことを覚えているファンもいるだろう。
2004年といえば、オリックス・ブルーウェーブと近鉄バファローズの合併構想から端を発したプロ野球再編問題が起こった年で、オリックス・バファローズが合併球団としてドラフトに参加。直前に球団を設立したばかりの楽天イーグルスも新規参入球団として参加した。
また「一場事件」と呼ばれる問題が明るみになったのもこの年だった。当時明治大学の4年生だった一場靖弘は、複数球団から「栄養費」の名目で現金を受け取っていたことが報じられ、当該球団のオーナーらが引責辞任に追い込まれた。
騒動の渦中にいた一場自身は、一時、メジャーリーグや台湾野球を出のプレーも視野に入れたと報じられたが、結局、自由獲得枠で楽天への入団が決まった。
ひと悶着あったこの年のドラフトで指名を受けたのは合計82人。一場を含めて投手豊作の年と呼ばれ、実際に自由獲得枠で入団した金子千尋(オリックス)、能見篤史(阪神)、久保康友(ロッテ)らが息の長い活躍を見せている。
ちなみに82人の中で今も現役を続けているのは2人だけ。どちらも1巡目で指名された高校生右腕である。
1人目はダルビッシュ有(日本ハム)。宮城の名門・東北高校時代に4度甲子園に出場し、即メジャー入りも噂されていたが、日本ハムが単独指名に成功し、その後3度のリーグ優勝に導いた。
ダルビッシュは2012年から活躍の舞台をメジャーリーグに移し、今年5月には日米通算200勝を達成。今月のポストシーズンで快刀乱麻の投球を見せたことも記憶に新しい。パドレスとは42歳シーズンとなる2028年まで大型契約を結んでおり、通算250勝も視界に入る。
そして2人目の04年ドラフト組の生き残りが現中日の涌井秀章である。横浜高校時代は「松坂大輔二世」と呼ばれ、2年春の選抜で準優勝するなど、高校生投手としてダルビッシュと双璧を成す存在だった。
ドラフトでは西武が単独で指名し、1年目から開幕ローテーション入り。2年目に12勝を挙げると、3年目に最多勝に輝くなど、球界を代表するエースへと成長した。その後はロッテと楽天でも最多勝を獲得。中日で2年目の今季は16試合に先発し、3勝5敗、防御率3.07とまずまずの成績を残している。
ドラフト制度の大きな転換点となった「一場事件」から20年。今年はどんなドラマが待っているのだろうか。
文=八木遊(やぎ・ゆう)