7年越しの無念を晴らすために…
2024年のプロ野球もいよいよ大詰め。24日に開催されたドラフト会議も終わり、26日には日本一を決める日本シリーズが開幕する。
パ・リーグは公式戦で91勝を挙げたソフトバンクが、クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージで日本ハムを相手に3連勝。隙のない戦いぶりで王者の貫禄を見せつけた。
一方、セ・リーグを代表するのはDeNAだ。公式戦3位でCSに進出すると、ファーストステージで阪神に2連勝。さらに第6戦までもつれ込んだファイナルは、リーグ王者・巨人との接戦を制し、2017年以来となる日本シリーズに駒を進めた。
奇しくも7年前のDeNAも3位から勝ち上がっての日本シリーズ進出。また、対戦相手も今年と同じくソフトバンクだった。
思い起こせば7年前の日本シリーズもソフトバンクが圧倒的優位という下馬評だった。実際に福岡での第1戦を10-1で勝利したソフトバンクが第2戦、第3戦も制してあっという間に王手。“格差シリーズ”はそのまま4戦で終わるかと思われた。
ところが、第4戦でDeNAが奮起。先発した1年目の濵口遥大が8回途中を無失点で抑える快投を見せると、打線もつながって6-0で完勝。一矢報いることに成功した。
さらにDeNAは第5戦を5-4でモノにし、横浜スタジアムでの胴上げを阻止して見せた。
そして迎えた福岡での第6戦は、DeNAが2点をリードして終盤の突入。勢いは完全にDeNAに傾きかけていたが、土壇場の9回に内川聖一が起死回生の本塁打で追いつくと、延長11回裏に川島慶三がサヨナラ打を放ち、ソフトバンクが日本一に輝いた。
改めて振り返ると、失うものは何もないDeNAが、第4戦以降に王者を追い詰めた印象が残る。当時を知るメンバーもまだ多く残っており、7年前のリベンジに燃えているはずだ。
ただ、今季のソフトバンクは7年前のチーム以上に隙がなく、4戦で決着がついても全く不思議ではないだろう。
DeNAがソフトバンクと互角の戦いを演じられるとすれば、ほぼすべての主力が最高のパフォーマンスを発揮した時くらいか。ただ、短期決戦は一人のラッキーボーイが生まれることで流れをつかむこともある。
例えば昨年の日本シリーズは、阪神がオリックスを4勝3敗で破り日本一に輝いたが、1番の近本光司が29打数14安打(打率.483)と大爆発。第1戦で3安打、第7戦では4安打の固め打ちでチームに流れを引き寄せた。
今年のDeNAの選手で1年前の近本と同じ役割を求めるとすれば、桑原将志ではないか。7年前の日本シリーズは1番打者として全6試合に先発したが、第3戦まで13打数無安打とソフトバンク投手陣に完璧に抑え込まれ、チームも3連敗を喫した。
そんな桑原がリズムをつかんだのが第4戦。3打数2安打、1四球と核弾頭の役割を果たすと、続く第5戦も1安打1盗塁をマークし、チームの巻き返しに一役買った。
そして迎えた第6戦は6打数1安打。結局、桑原はシリーズを26打数4安打(打率.154)、10三振という成績で終えた。
あれから7年。今季終盤は6番を打つことが多く、CSでもファイナル第5戦までは6番に固定されていた。しかし、巨人との第6戦は1番で起用されており、日本シリーズでもかつての“指定席”に座る可能性は十分ありそう。DeNAが7年越しの無念を晴らすには桑原のハイパフォーマンスが必要不可欠だ。
文=八木遊(やぎ・ゆう)