上位で指名できるはずだったが……
ワールドシリーズが終わり、メジャーリーグの各チームは早くも来季に向けた動きを活発化させている。
現地10月31日(日本時間11月1日)には、今季99敗(63勝)を喫したエンゼルスがブレーブスから長距離砲のホルヘ・ソレアをトレードで獲得。得点数メジャーワースト3位に終わった打線のテコ入れを行った。
また、同日にエンゼルスよりもはるかに多い121敗(41勝)を喫したホワイトソックスにも大きな動きがあった。それがウィル・ベナブル氏の新監督就任だ。
今季のホワイトソックスは2年目ペドロ・グリフォル監督の下、春先から負けが込み、7月から8月にかけて21連敗。その直後に同監督は解任された。その後はコーチのグレイディ・サイズモア氏が暫定的に指揮を執っていたが、チームは低空飛行のまま、1901年以降では62年にメッツが記録した120敗を抜き、メジャー史上ワースト記録を更新しシーズンを終えた。
新指揮官に就任したベナブル氏は42歳と若いが、2016年限りで現役引退後は、カブスのGM特別補佐を皮切りに、同チームの一塁コーチ、レッドソックスのベンチコーチなどを歴任。昨季はレンジャーズの監督補佐を務め、チームの世界一を支えるなど、指導者としての経験を積んできた。
ベナブル新監督がいかにして近代野球の“最弱チーム”を立て直すのか。トレードやFA選手の獲得がチーム再建の近道にはなるが、来年夏に開かれるドラフト会議も非常に重要だ。特に今季成績が酷かったホワイトソックスは、本来なら将来有望な選手を上位で指名できるはずだったが……。
メジャーリーグは、2022年のドラフトまで完全ウェーバー制が敷かれていた。つまり前年の勝率が低いチームから順に指名が行われていた。ところがMLBはルールを改定。NBAなどで採用されているロッタリー(抽選)方式を新たに導入したのだ。つまり、22年までのルールならホワイトソックスが全体1位指名権を保有していたが、現行のルールでは12月に行われる抽選次第で上位指名順のチームが決まる。
それでも抽選の当選確率は、勝率の低いチームほど高く設定されるため、ホワイトソックスには有利に働くはずだった。しかし、現実にはホワイトソックスは抽選に参加する権利すら保有していないのだ。
実は、ホワイトソックスは今年夏のドラフトでロッタリー指名権を保有しており、全体5位でヘーゲン・スミスという左腕を獲得した。ただ、収益分配の受給対象チームは3年連続で、非受給対象チームは2年連続で、それぞれ全体6位以内の指名権を獲得することができないというルールがあり、それに則ると、非受給対象チームだったホワイトソックスは来年のドラフトでは高くても全体10位の指名順位しか得られないことになっている。
上位の1~2位で指名された選手が必ずしもメジャーで活躍する保証はないが、やはり10位以下の選手と比べると、期待値の大小は違ってくる。
果たしてホワイトソックスはこの逆境を乗り越えることができるのか。ベナブル新監督の手腕に期待が懸かる。
文=八木遊(やぎ・ゆう)