日本シリーズ終了後も、ソフトバンク・和田毅が引退を発表するなど、ファンの記憶に残る名選手たちが次々に現役生活に別れを告げている。そんな思い出深いプレーヤーの中から、個性派としてならした3選手のあっと驚く珍プレーをプレイバックしてみよう。
飛球をキャッチした直後、グラウンドから忽然と消えたのが、DeNA時代の梶谷隆幸だ。
2015年8月18日のヤクルト戦、1点を追うヤクルトは5回、雄平が右翼フェンス際に長打性の大飛球を放った。
ライト・梶谷は懸命に背走し、フェンス際でジャンプ一番好捕したところまでは良かったが、勢い余ってフェンスにぶつかった直後、「介護のツクイ」と書かれたフェンス広告に吸い込まれるようにドロンと消えてしまった。
まるで手品のように姿を消した梶谷に、スタンドのファンは「一体何があったの?」と目を白黒させたのは言うまでもない。
実は、フェンスは開閉式で、捕球の際に梶谷が体を預けたところ、扉がギ~ッと開き、バックヤードにスッポリ入り込んでしまったという次第。前日行われた人気男性デュオ・ゆずのコンサート終了後、関係者がカギを閉め忘れたのが原因だった。
間もなく「ツクイ」の「ツ」の部分から再びグラウンドに姿を現した梶谷は「えっ、何これ?って感じでした」と苦笑したが、ケガをせずに済んだのは幸いだった。
そして、フェンス際の超美技の次は、バットでヒーローになる。1対1の同点で迎えた8回、秋吉亮から右翼場外に消える特大の決勝ソロ。4番・筒香嘉智も右越えに連続アーチをかけ、DeNAは3対1で勝利した。
試合後、筒香とともにお立ち台に上がった梶谷は「今日は(場外弾と併せて)2回消えちゃいましたね」と照れくさそうだった。
よりによって、審判の妨害で盗塁が取り消されるという思わずビックリの珍体験を味わったのが、オリックス・安達了一だ。
2020年10月27日の日本ハム戦、1点を追うオリックスは5回、一死から安達が9球粘って四球を選び、次打者・吉田正尚のとき、二盗に成功。吉田は投ゴロに倒れたが、ここで日本ハム・栗山英樹監督はスティーブン・モヤを申告敬遠し、二死一・二塁となった。
このチャンスに、安達は次打者・中川圭太の1ストライクからの2球目に三盗を試みた。だが、捕手・清水優心が三塁に送球しようとした直後、右腕が山村裕也球審のマスクに接触し、ボールが手からこぼれ落ちてしまう。
この間に安達は三塁に到達したが、山村球審は盗塁と認めず、「捕手が私に接触して送球できなかったので、(守備妨害の)規則を適用し、走者を戻します」と場内放送で説明。安達は二塁に戻されてしまった。
ネット上では「全然避けれたと思うんだけど」「『申し訳ないです。私がぶつかってしまった』と普通に言えないかな?」と球審の言動を批判する声や「成績に直結してくる部分なのにあれじゃ選手が可哀想」と結果的に盗塁をひとつ損した安達に同情する声も上がった。
それでも中川がカウント1-1から加藤貴之の外角フォークを中前に打ち返し、二塁から同点のホームを踏むことができたのがせめてもの救いだった。
ちなみに安達は、2022年10月23日のヤクルトとの日本シリーズ第2戦でも、延長11回に送りバントが小フライになった際に、打球を追った捕手・中村悠平と接触し、捕球を邪魔した形になったが、高津臣吾監督のリクエストにもかかわらず、「故意の接触ではない」と判断され、今度は守備妨害を免れている。
巨体を揺すって三塁打を記録したと思ったら、直後、リクエストで本塁打に格上げされる珍事を体験したのが、“アジャ”の愛称で人気者になったロッテ・井上晴哉だ。
2020年11月9日の日本ハム戦、1回表に1点を先行されたロッテはその裏、安田尚憲の犠飛と中村奨吾のタイムリーで2-1と逆転。なおも二死一塁で、6番・井上も上原健太の9球目、146キロ直球を右翼ポール際に運んだ。
打球はフェンスからグラウンドに跳ね返り、外野を転々。その間に中村は一塁から3点目のホームイン。井上も180センチ、114キロの巨体を揺すりながら激走し、三塁に滑り込んだ。プロ入り後、通算4本目の三塁打と思われた。
ところが直後、井口資仁監督が「本塁打ではないか?」とリクエストを要求。リプレー検証の結果、打球は、ジャンプキャッチを試みたライト・大田泰示の頭上を越え、本塁打ゾーンを示す黄色いラインの上方のバーに当たったことが確認され、三塁打が本塁打に早変わり。
今度はゆっくりと生還した井上は、この日の出場を最後に現役引退する細川亨とともに、“ごっちゃし”ポーズ(大相撲の力士が懸賞金を受け取る際の作法。井上は本塁打を打つたびに、ベンチ前でこのポーズを見せるのがお約束だった)を披露し、ファンの声援に応えた。
思わぬ形で10月29日のソフトバンク戦以来の15号2ランとなった井上は「打ったのはストレートです。入ったかわからなかったので、とにかく全力で走りました。久々にホームランを打てて、久々のごっちゃしです。“細川親方”と一緒にやってもらえて、良かったです」とご機嫌だった。
文=久保田龍雄(くぼた・たつお)
飛球をキャッチした直後、グラウンドから忽然と消えたのが、DeNA時代の梶谷隆幸だ。
2015年8月18日のヤクルト戦、1点を追うヤクルトは5回、雄平が右翼フェンス際に長打性の大飛球を放った。
ライト・梶谷は懸命に背走し、フェンス際でジャンプ一番好捕したところまでは良かったが、勢い余ってフェンスにぶつかった直後、「介護のツクイ」と書かれたフェンス広告に吸い込まれるようにドロンと消えてしまった。
まるで手品のように姿を消した梶谷に、スタンドのファンは「一体何があったの?」と目を白黒させたのは言うまでもない。
実は、フェンスは開閉式で、捕球の際に梶谷が体を預けたところ、扉がギ~ッと開き、バックヤードにスッポリ入り込んでしまったという次第。前日行われた人気男性デュオ・ゆずのコンサート終了後、関係者がカギを閉め忘れたのが原因だった。
間もなく「ツクイ」の「ツ」の部分から再びグラウンドに姿を現した梶谷は「えっ、何これ?って感じでした」と苦笑したが、ケガをせずに済んだのは幸いだった。
そして、フェンス際の超美技の次は、バットでヒーローになる。1対1の同点で迎えた8回、秋吉亮から右翼場外に消える特大の決勝ソロ。4番・筒香嘉智も右越えに連続アーチをかけ、DeNAは3対1で勝利した。
試合後、筒香とともにお立ち台に上がった梶谷は「今日は(場外弾と併せて)2回消えちゃいましたね」と照れくさそうだった。
まさか…審判の“妨害”で盗塁が取り消しに!?
よりによって、審判の妨害で盗塁が取り消されるという思わずビックリの珍体験を味わったのが、オリックス・安達了一だ。
2020年10月27日の日本ハム戦、1点を追うオリックスは5回、一死から安達が9球粘って四球を選び、次打者・吉田正尚のとき、二盗に成功。吉田は投ゴロに倒れたが、ここで日本ハム・栗山英樹監督はスティーブン・モヤを申告敬遠し、二死一・二塁となった。
このチャンスに、安達は次打者・中川圭太の1ストライクからの2球目に三盗を試みた。だが、捕手・清水優心が三塁に送球しようとした直後、右腕が山村裕也球審のマスクに接触し、ボールが手からこぼれ落ちてしまう。
この間に安達は三塁に到達したが、山村球審は盗塁と認めず、「捕手が私に接触して送球できなかったので、(守備妨害の)規則を適用し、走者を戻します」と場内放送で説明。安達は二塁に戻されてしまった。
ネット上では「全然避けれたと思うんだけど」「『申し訳ないです。私がぶつかってしまった』と普通に言えないかな?」と球審の言動を批判する声や「成績に直結してくる部分なのにあれじゃ選手が可哀想」と結果的に盗塁をひとつ損した安達に同情する声も上がった。
それでも中川がカウント1-1から加藤貴之の外角フォークを中前に打ち返し、二塁から同点のホームを踏むことができたのがせめてもの救いだった。
ちなみに安達は、2022年10月23日のヤクルトとの日本シリーズ第2戦でも、延長11回に送りバントが小フライになった際に、打球を追った捕手・中村悠平と接触し、捕球を邪魔した形になったが、高津臣吾監督のリクエストにもかかわらず、「故意の接触ではない」と判断され、今度は守備妨害を免れている。
巨体を揺すって三塁打を記録したと思ったら、直後、リクエストで本塁打に格上げされる珍事を体験したのが、“アジャ”の愛称で人気者になったロッテ・井上晴哉だ。
2020年11月9日の日本ハム戦、1回表に1点を先行されたロッテはその裏、安田尚憲の犠飛と中村奨吾のタイムリーで2-1と逆転。なおも二死一塁で、6番・井上も上原健太の9球目、146キロ直球を右翼ポール際に運んだ。
打球はフェンスからグラウンドに跳ね返り、外野を転々。その間に中村は一塁から3点目のホームイン。井上も180センチ、114キロの巨体を揺すりながら激走し、三塁に滑り込んだ。プロ入り後、通算4本目の三塁打と思われた。
ところが直後、井口資仁監督が「本塁打ではないか?」とリクエストを要求。リプレー検証の結果、打球は、ジャンプキャッチを試みたライト・大田泰示の頭上を越え、本塁打ゾーンを示す黄色いラインの上方のバーに当たったことが確認され、三塁打が本塁打に早変わり。
今度はゆっくりと生還した井上は、この日の出場を最後に現役引退する細川亨とともに、“ごっちゃし”ポーズ(大相撲の力士が懸賞金を受け取る際の作法。井上は本塁打を打つたびに、ベンチ前でこのポーズを見せるのがお約束だった)を披露し、ファンの声援に応えた。
思わぬ形で10月29日のソフトバンク戦以来の15号2ランとなった井上は「打ったのはストレートです。入ったかわからなかったので、とにかく全力で走りました。久々にホームランを打てて、久々のごっちゃしです。“細川親方”と一緒にやってもらえて、良かったです」とご機嫌だった。
文=久保田龍雄(くぼた・たつお)