データで振り返る!メジャー日本人選手の2024年
▼ 第5回・今永昇太
15勝3敗、防御率2.91。昨季オフにDeNAからポスティングでカブスに移籍した左腕・今永昇太が、メジャー1年目に29試合で残した成績である。
14億円の譲渡金を古巣に残した今永は、カブスと4年総額5300万ドル(当時のレートで約77億円)で契約。ローテーションの2~3番手を期待されての入団だったが、終わってみればチームどこからリーグでも屈指の活躍を見せた。
デビュー戦で6回を無失点に抑える白星スタートを切った今永。4月は5試合に投げて4勝0敗、防御率0.98とほぼ完璧な内容。その後は5月下旬に7失点、6月下旬に10失点と2度の“炎上”があったものの、逆にシーズンを通して打ち込まれたのはこの2試合だけといってもいいほどだった。
主要タイトルには手が届かなかったが、サイヤング賞の投票でナ・リーグ5位、新人王の投票で同4位と、いずれも上位にランクイン。歴代の日本人投手と比べても、残したインパクトは絶大だったといえるだろう。
技巧派のイメージもある今永だが、球種別の投球割合を見ると、最も多かったのがフォーシームで全体の52.0%を占めた。メジャーの強打者相手に真っ向勝負を挑み、しっかり結果を出していたことが分かる。
フォーシームに対する被打率自体は.229と悪くなかったが、許した27本塁打のうち22本がこの球種に対して。来季さらなる飛躍を遂げるためには、この辺りを改善する必要があるだろう。
フォーシームに次いで多かったのが鋭く落ちるスプリットだ。その割合は30.6%で、フォーシームとの2球種だけで80%を超えている。
今永が成功した理由の一つがこの2球種を高低にうまく投げ分けたことだ。フォーシームの平均球速は91.7マイル(147.5キロ)とメジャーでは遅い部類に入るが、切れという意味では絶品。浮き上がるフォーシームで打者に対して高めへの意識付けをさせつつ、低めにスプリットを投じる。もしくは低めに意識付けさせたところで高めで勝負するというパターンが嵌っていた印象だ。
いずれにしても、ストライクジーンではなく高低にボール1つ分外したゾーンに投げ分けることで相手打者を翻弄していた。その証拠にボールゾーンに投じた際の被スイング率は36.3%で、これは規定投球回数に達した両リーグの58投手の中で堂々の1位。打ち気な強打者をあざ笑うかのような投球術を見せていたというわけだ。
そんな今永が1年目にマークした驚愕の数字がある。6.21というK/BBである。Kはもちろん奪三振のことで、BBは四球の数。つまり、今永は四球1つに対して6個以上の三振を奪っていたことになる。
これは今季規定投球回数に達した58投手の中では3位。また、1900年以降に規定投球回数に達したルーキー1138投手の中では堂々の1位だった。
1年目の大活躍で、来季はライバル球団から徹底的にマークされる立場になるだろう。投げる哲学者、今永はどんな理論で立ち向かっていくのか。来季のさらなる飛躍に期待したい。
文=八木遊(やぎ・ゆう)