コラム 2025.01.23. 17:05

ガラパゴス化するセ・リーグ…「DH制」導入は時間の問題?

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1月20日に都内で開かれた12球団監督会議 (C)Kyodo News
 野球ほどルールが複雑で曖昧なスポーツも珍しい。たとえば、球場の大きさ(外野フェンスまでの距離やファウルゾーンの広さなど)は球場によって全く異なる。日本では基本的に左右対称だが、本場アメリカでは左右が非対称の球場も多い。

 ルールの違いという意味では、セ・リーグとパ・リーグが異なる制度を導入している点も見逃せない。

 先日開かれたプロ野球の12球団監督会議でも取り上げられた指名打者(DH)制の有無である。

 プロ野球ファンならご存じのように、投手が打席に立つセ・リーグに対して、パ・リーグは投手ではなく9人目の打者が打席に立つ。パ・リーグにDH制が導入されたのは1975年。今年でちょうど50年目だ。

 そんな節目の年にセ・リーグでもDH制の導入が本格的に議論され始めている。

 ここ数年でセ・リーグのDH制導入に最も熱心だったのが、2023年まで巨人の指揮を執った原辰徳監督(現オーナー付特別顧問)だ。ソフトバンクと覇権を争った2020年の日本シリーズでは全試合のDH制採用に同意するなど、「(セ・リーグ球団は)パ・リーグ球団に相当な差をつけられている」という理由で、DH制の導入を訴えてきた。

 しかし、当時のファンの間では「セパの差が広がったのはDH制だけが理由じゃない」「セ・リーグにはセ・リーグの野球がある」「パ・リーグの試合にはないベンチワーク(駆け引き)が楽しめる」など原監督(当時)に異を唱える意見が目立っていた。

 ただその流れもここ2~3年で一気に変わってきた印象が強い。SNSなどでファンの声を拾っても、セ・リーグのDH導入はもはや待ったなしという声が目立っている。

 その最大の理由の一つが、メジャーリーグのナ・リーグが2022年にDH制を採用したためだろう。

 メジャーリーグでは、「投高打低」により人気低迷に陥っていたア・リーグが1973年にDH制を採用したが、ナ・リーグは一貫してDH制には否定的だった。しかし、50年の時を経てナ・リーグがア・リーグを追随。ついにDH制採用に踏み切った。

 もちろん、投手が打席に立つことで試合終盤の駆け引きが発生するなどDH制にはない面白さがあるのも事実だが、デメリットも少なくない。

 筆者自身はもともとセ・リーグの試合を多く見て育ったため、現行ルールが正という考えだった。ただ、投手が打席に立つことによる“ケガのリスク”や、打席の端に立ち三球三振に倒れる投手の姿を見るたびに意識も徐々に変化。今ではセ・リーグのDH導入には賛成の立場だ。

 今では世界的に見ても、投手が打席に立つのは日本の高校野球とセ・リーグくらい。反対の立場を表明している現役監督もいることは確かだが、野球界の潮流からもセ・リーグのDH制導入は秒読み段階に入ったといえるのではないだろうか。


文=八木遊(やぎ・ゆう)

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