コラム

岩隈が誇るメジャー随一の投球術 3年目の進化と課題

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持ち前の制球力を武器にメジャートップクラスの先発投手へと進化を遂げている岩隈久志 [Getty Images]

岩隈の制球力はメジャーでも群を抜いている


 後半戦2試合目の先発となったオリオールズ戦(現地24日)で今季5敗目(8勝)を喫したマリナーズの岩隈久志投手。完封負けを喫したこの試合、岩隈にとっては今季の象徴ともいえる試合となった。

 連続無四球試合を5に伸ばしたこの試合で、岩隈は7回97球を投げた。これは1イニングあたりに換算すると13.7球。今季の1回あたりの平均投球数13.5とほぼ同じだったが、これは規定を満たしている両リーグ92人中最も少ない数字である(昨年も14.1球で81人中最少)。

 他の日本人投手を見ると、田中将大投手(ヤンキース)が14.6球で8位、ダルビッシュ有投手(レンジャーズ)が15.8球で43位、黒田博樹投手(ヤンキース)が15.9球で50位。岩隈は持ち前の省エネ投球を実践して試合終盤まで投げていることがわかる。

 岩隈が両リーグトップの数字を残しているもう一つの数字は、9イニングあたりに与えた四球数を表す与四球率だ。今季0.65(110回2/3で8四球)は両リーグ通じて断然トップ。9イニングで1個以下となる0点台は岩隈とツインズのヒューズ投手の2人のみである。1.5個以下でも岩隈含め7人のみと、岩隈の制球力が突出していることがわかる。ちなみに昨年は1.72で両リーグ10位だった。

 岩隈の進化を示すデータは他にも幾つかある。際立っているのは、出塁を許した走者を次の塁に進ませないという地味ではあるが大事なデータだ。過去2年間で15個を記録した暴投が今季ここまでまだ一つもない。規定を満たしている92人中暴投なしは他に6人しかいない。

 次のデータも捕手の協力なくして達成不可能の数字だが、6つの盗塁企図を全てアウトにしている点も取り上げておきたい。チームメートのフェルナンデス投手が14盗塁(盗塁阻止は2回のみ)を許していることを考えれば、岩隈の盗塁阻止能力が突出していることがわかるだろう。


ヤンキース田中の正反対 走者を背負った時の投球が…


 では課題も挙げておこう。今季ここまで8勝5敗、防御率3.09。昨年の14勝6敗、防御率2.66と比較すると勝率が.700から.615に下がり、防御率も悪化している。なぜか。2つのデータがその理由を教えてくれる。

 1つ目は得点圏時の被打率。昨季は.184とピンチの場面で粘り強さを発揮したが、今季は.318と痛打される確率が高くなった。24日のオリオールズ戦では得点圏に走者を背負ったのは試合中わずか2度しかなかったが、その場面で適時打と3点本塁打を許した。少ないピンチで痛打を許す今季を象徴するようなシーンだった。

 2つ目は、走者を背負った場面での一発が増えている点だ。昨季は被本塁打25本中ソロ本塁打が19本(76%)だったのが、今季は12本中ソロが4本(33%)。9イニングあたりの本塁打数は1.02から0.98に良化しているにもかかわらず、内訳が良くない。このあたりが昨年に比べ勝率と防御率が悪化している要因ではないだろうか。

 メジャー3年目を迎え、制球力が格段にアップし、進塁を簡単には許さないなどマウンド上で今まで以上の落ち着きが見られる岩隈。浮き彫りとなった走者を背負った場面の投球で、本来の粘り強さや慎重さを取り戻すことができれば、2001年から遠ざかっているプレーオフにチームを導いてくれるだろう。

(※データは全て現地時間7月24日現在)
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