負け越している球団がない阪神には、苦手意識なく戦える有利さがある
和田豊監督率いる阪神が踏ん張っている。
7月成績はこれまで14勝5敗(7月27日終了時点)の貯金9。内、3点差以内のゲームも10試合ものにしているから、投打が絡み合っているということでよいのだと思う。驚くような戦力こそないが、首位・巨人とは2.5ゲーム差の2位。この数字は上出来だととらえていい。
実は、リーグで負け越し球団を作っていないのは阪神だけ、という苦手意識がないのもまた好材料のひとつ。これは、後半戦を戦ううえで自信になる素材だと思う。
巨人と3位の広島も合わせ、“三つ巴”で首位争いをする形になりそうだが、阪神が優勝するためのキーマンを改めて考えてみたい。
打線の軸となるゴメス 新エース・岩田の終盤戦に注目
今年の阪神、攻撃という観点で見ると主だった補強はゴメスのみだった。キャンプからずっと言われ続けてきたことだが、“今年の阪神はゴメスのバット次第”だということ。そして、本当にそのバットがチームを支えてきた。
打率.288、本塁打17、打点74は4番打者として十分な働きだろう。特に際立つのは、リーグ2位の打点。勝負強く長打も備えた4番らしい打者が不在だったチームにとって、彼がドカンと座ってくれるのは頼もしい限りである。だが、そんなゴメスにも不安がないとは言えない。
オールスター明け6試合で、21打数4安打で打率は2割を切り、打点はたったの3だ。この6試合の対戦相手が巨人と広島の投手陣だったことを思うと、しっかりと弱点を突かれたという見方もできる。本当の勝負どころになる終盤戦を見据えて、前半戦は餌を撒かれた可能性も否定できない。
アドバイスをしっかりと聞き入れ、柔軟な対応力を備えていているというゴメス。ライバルチームに対してどういう打開策を練るか。真の力が見極められるのは、これからになりそうだ。
投手ではやはり防御率.194で8勝を稼いでいる岩田稔を挙げたい。本来のエース・能見篤史が故障・不調を極める中、藤浪晋太郎、メッセンジャーと奮闘している8年目左腕。実は岩田、入団3年目の2008年に10勝を挙げて以来、二桁勝利がない。2011年、2012年は内容ある投球を見せたが、9勝、8勝と二桁には届かずだった。でも、今年の岩田は何かが違う。こんなに腕を振っている岩田を見るのは、正直、プロに入って初めてなのである。内外角に真っ直ぐをしっかり投げ込めているし、腕を振っているから多少甘く入っても変化球も生きている。
これまで、どこか“勝ち運がなかった投手”に感じるが、今年は完全にエースの働きをしている岩田。年間を通した投球イニング数をあまり稼ぎ出せないのが弱点だが、終盤までこの内容をキープすることができれば、柱が揺らがずにチームは上位で踏み留まれるだろう。
阪神が最後にリーグ優勝したのは2005年のこと。その年に二桁勝利を挙げた安藤優也と福原忍が今ではリリーフを固めていて、レギュラーは鳥谷敬のみということを思うと、随分と優勝から遠ざかっているように思う。
首位争いが激化する中、ゴメス、岩田という“新しい投打の軸”にかかる期待は、想像以上に大きなものになっていきそうな気がする。
文=岩川悟(いわかわ・さとる)