手術や自由契約を乗り越え3年目でつかんだ初勝利
シカゴ・カブスの和田毅が、メジャー初勝利をあげた。
振りかえると、和田にとってここまで長い、長い道のりだったことだろう。2011年の12月にボルティモア・オリオールズと2年契約を結んだが、翌年の開幕直後に左ひじ靱帯を損傷したのが苦難の始まり。トミー・ジョン手術を受け、2013年に実戦復帰したが、メジャー登板はかなわずシーズンオフには自由契約となった。
迎えた今季、スプリングトレーニングにカブスから招待された。一旦は自由契約となったが、マイナー契約で再び契約を結ぶ。マイナーリーグで週間MVPを受賞するなど結果を残し、7月8日にメジャー初昇格。同日のシンシナティ・レッズとのダブルヘッダー2試合目でメジャー初登板初先発を果たした。5回を投げ自責点0と好投したが勝敗はつかず。23日のサンディエゴ・パドレス戦でも先発したが4回5失点でメジャー初黒星を喫した。
メジャー3戦目の登板となった28日のコロラド・ロッキーズ戦。先発した和田は、初回を3者連続三振と絶好のスタート。6回表1アウト1、3塁の場面では、4年連続20本塁打以上を放っている3番ゴンザレスを三振。続く4番アレナドにはタイムリーを浴びたが、5番ロザリオをスライダーでショートゴロに打ち取った。7回を97球、5安打6奪三振1四球1失点でメジャー初勝利を掴み取った。
試合後の和田は、「いろいろなことを思い出した。自分に携わった人すべてに感謝したい」と喜びを口にし、レンテリア監督も「速球で空振りを取れていたし、緩急もつけていた」と称えた。
念願の初勝利にも浮かれず視線は次のゲームに!
3年目で初勝利をつかんだ和田。昨季までと比べ、ピッチング内容が変化している。
ひとつは奪三振率が上がったこと。日本での通算奪三振率は8.27だったが、昨季のマイナーリーグでは102回2/3を投げ、奪った三振は80個。奪三振率は7.01まで下がった。それが今季はマイナーリーグで113回2/3を投げ120個の三振を奪っている。単純に、1イニングで1個以上の三振を奪った計算になる。メジャー3試合の登板でも16回を投げ13奪三振と比較的高い数字を残した。
もう1点は、ゴロを打たせる能力が際立っている。アメリカには、ゴロアウトとフライアウトのどちらが多いかを表す指標GO/AOというものがある(ゴロアウト数をフライアウト数で割り1.00以上ならゴロアウトが多い投手、1.00未満ならフライアウトが多い投手。ホームランにつながることもあるフライアウトより、ゴロアウトの多い投手が評価される)。
昨季の和田は、マイナーリーグでGO/AOが0.85とフライアウトの多い投手だった。しかし、今季はマイナーリーグで1.02。メジャーでも1.06を記録しており、ゴロアウトが多い投手になった。参考までに主な日本人投手のGO/AOは、田中将大が1.22、ダルビッシュ有が0.68、岩隈久志が1.25である。
念願の初勝利にも和田は「これがスタートだと思っている」と浮かれる様子はまるでなかった。奪三振率が上がり、ゴロを打たせるようになったピッチングを続けることができれば、これからも結果は必ずついてくるはずだ。(コメントはNHKBSの『ワールドスポーツ』より)
文=京都純典(みやこ・すみのり)