チームの低迷がダルビッシュのタイトルを後押しする
チームがア・リーグ唯一の勝率3割台(.384)にあえぐ中、不動のエースとして孤軍奮闘の活躍を見せるダルビッシュ有投手。今月4日のインディアンス戦では7回を8奪三振、1失点に抑えながら、救援陣が打たれ今季11勝目を逃した。それでもここまで10勝6敗、防御率2.82と、サイヤング賞2位に終わった昨年(13勝9敗、防御率2.83)と遜色ない成績を残している。
今季のア・リーグのサイヤング賞争いはマリナーズのフェリックス・ヘルナンデス投手が11勝3敗、防御率2.01と頭一つ抜け出しており、ダルビッシュが逆転受賞するのはかなり厳しい状況になっている。しかし昨年(277個)に続く奪三振王のタイトルは十分チャンスがある。
今季、ダルビッシュはここまで140回1/3を投げ、175三振を奪っている。奪三振率に換算すると、昨年の11.89には及ばないが、11.22と高い数値をマークしている。現在、ア・リーグの奪三振数トップはタイガースに移籍したばかりのプライスで189、2位はマリナーズのヘルナンデスで178、そしてインディアンスのクリューバーが177で続いている。ダルビッシュはプライスに14個差の4位につけており、逆転の可能性は十分にあると言える。
ケガなどがなければ、各投手今季残りそれぞれ約10試合に登板することになるが、最大のライバルとなるプライスが開幕からのペースで三振を奪えばシーズン終了時に271になる。ダルビッシュがこれを上回るためには97三振以上が条件となる。残り10試合に登板するとなれば、1試合あたり10三振をキープする必要があり、決して簡単なタスクではない。しかしプライス、ヘルナンデスらはチームがプレーオフ争いをしていることもあり、タイトルを取らせるため試合終盤に続投させるといった采配をする可能性は極めて低い。
一方のダルビッシュは、チームのプレーオフ進出の望みがほぼなく、首脳陣の後ろ盾を得る可能性が高い。タイトルを争う選手のチーム状況が奪三振王の行方を左右するかもしれない。この点はダルビッシュに優位に働きそうだ。
ダルビッシュが改善するべきポイントとは
それではダルビッシュがタイトルを獲得するためには何が必要か。
一つのカギは初球にストライクを取れるかどうかだ。ダルビッシュは昨年、初球がストライクだった場合、43.0%の割合でその打席を三振で終わらせていた。今年はこの数字が43.8%でほぼ同じ。しかし初球がボールだった場合、昨年が27.1%だったのに対して、今年は21.9%と初球ボール時の打席が三振で終わる確率が大幅に低下している。仮に今季の数字が昨年の27.1%だったとすれば、現時点で実際よりも11個多い186三振を奪っている計算になる。これは1位のプライスに比べ僅か3個少ない数字となる。タイトル奪取のためにはまず初球をストライクから入ることが重要になってくる。
また三振を奪うために重要な指数の一つが打者から空振りを奪うことだ。ダルビッシュは過去2年いずれも空振り率(空振り数÷全スイング数)でメジャー1位の数字を残していた。2012年は27.2%、13年は29.5%を記録し、ともに2位以下を引き離していた。しかし今季は規定投球回数に到達しているメジャー全体の93投手中13位となる24.3%と、スイング時にバットに当てられる確率が増えている。もちろんファウルなども含まれるため、一概に“打たれやすくなった”というわけではないが、タイトル奪取には空振り率を過去2年の水準に戻すこともカギになりそうだ。
いずれにしてもチームが下位に沈む中、ダルビッシュ本人としても2年連続奪三振王のタイトル獲得は自身のモチベーションを保つためにも重要な目標となるだろう。日本人投手では野茂英雄氏が1995年にドジャースで、2001年にレッドソックスでそれぞれ奪三振王のタイトルを獲得している。ダルビッシュが今季再び同タイトルを獲得すれば日本人では初めてとなる2年連続の快挙達成となる。
※数字は全て8月4日(現地時間)時点