地域別の傾向が顕著に… 唯一の勝率6割超えはあの地域
今年も夏の風物詩『第96回全国高校野球選手権大会』が開幕する。数々の名場面・ドラマを生んできた歴史ある大会。2011年から13年までの過去3大会を、主に地域別に分析してみた。
まず北北海道から沖縄まで49地区を9つの地域に分けた。この9地域は春の選抜の参考になる秋季大会と同じ区分だ。※詳細は文末に記載
過去3大会の地域別勝率ランキングを後述するが、高校野球ファンの方はぜひ予想してみてほしい。昔からの高校野球ファンなら「甲子園のお膝元、近畿勢が強いに決まっている」、悲願の優勝を狙う東北勢を応援しているファンなら「いや、光星学院(青森)の活躍を覚えていないのか!?東北勢が上だよ」など色々な意見があるだろう。前置きはこの辺にして注目の勝率ランキングは以下の通りである。
1位 関東45勝25敗(勝率.643)
2位 東北25勝18敗(.581)
3位 近畿22勝17敗(.564)
4位 四国12勝12敗(.500)
5位 中国13勝15敗(.464)
6位 九州・沖縄16勝24敗(.400)
7位 北信越9勝15敗(.375)
8位 北海道1勝6敗(.143)
9位 東海1勝12敗(.077)
このランキングを見て、おおむね予想通りだった人はかなり高校野球通と言えるだろう。ではランキング上位の地域から順番に過去3大会の傾向を探ってみよう。まずは関東勢。2011年大会の日大三(西東京)、13年大会の前橋育英(群馬)と優勝校を2校輩出しているだけあって唯一の勝率6割超えである。特に九州・沖縄勢に7勝0敗、中国勢に6勝0敗と、この2地域からだけで13も勝ち越している。また初戦を突破した確率(66.7%=3校中2校が初戦突破)、1大会で2勝以上挙げた確率(40.7%)のいずれも9地域中トップだった(※初戦突破率は東北と同率)。今大会も過去3大会で最多の9勝を挙げている作新学院(栃木)や、本格派投手を複数そろえた東海大相模(神奈川)など強豪校がそろっており、今年も関東勢が優勝争いの中心になる可能性が極めて高い。
勝率ランキング2位は近年目覚ましい活躍を見せる東北勢。特に青森代表は前述した光星学院が11年大会、12年大会と連続準優勝、さらに13年大会は初出場の弘前学院聖愛が2勝するなど、青森代表だけで10勝を挙げている。これは49地区で最も多い勝利数である。また3大会すべてで勝ち越しているが、これは関東(16勝8敗、13勝9敗、16勝8敗)と東北(7勝6敗、8勝6敗、10勝6敗)の2地域のみである。
兵庫・大阪が安定している近畿 夏に勝てない東海
ランキング3位には近畿勢が入った。12年大会の大阪桐蔭が5勝を挙げ優勝しているのが大きい。仮にこの5勝を除けば17勝17敗の五分になってしまう。また、甲子園球場が位置する兵庫、すぐ近くの大阪両代表はともに3大会連続で初戦突破を果たすなど地の利を生かしているのが分かる。
また、その年の春夏に連続出場した近畿勢だけに焦点を当ててみると、11年大会の智弁和歌山(夏2勝1敗)、12年大会の大阪桐蔭(同5勝0敗)、天理(奈良、同3勝1敗)、13年大会の大阪桐蔭(同2勝1敗)といずれも上位に進出している。今大会は選抜覇者の龍谷大平安(京都)と智弁学園(奈良)が春に続き出場しており、大きな期待がかかる。
次いで勝率5割ちょうどの四国勢が4位にランクイン。伝統校・強豪校が多いイメージがあるが代表校の数は4つのみで、地域別では北海道に次いで2番目に少ない(東海と同数)。しかし過去3大会では北海道から九州まで他の8地域すべてから1勝以上挙げている。まさにどの地域の強豪校とも渡り合える地力を備えているのが特徴といえるだろう。
5位以降の5地域はすべて勝率5割を下回った。まずは中国勢。過去3大会の勝利数は四国勢を上回るが、四国が全地域から白星を挙げているのに対して中国勢は北海道と関東から1勝も挙げられていない。特に関東には6敗(対北海道1敗)とまったく歯が立たない。今大会は初戦で岩国(山口)-健大高崎(群馬)の組み合わせが決まっているが、前回大会でも山口代表と群馬代表が初戦で対決。前橋育英が1対0で岩国商を下し、その後頂点に上りつめたのは記憶に新しい。今年こそ中国勢が関東勢から勝利をもぎ取れるか注目したい。
6位は関東勢に次ぐ“大所帯”の九州・沖縄勢。ここも実力校の多いイメージがあるが、過去3年で1大会2勝以上挙げたのは12年大会の浦添商(沖縄、2勝1敗)と13年大会の延岡学園(宮崎、4勝1敗)の2校のみである。しかも、ともに敗れた相手が鬼門の関東勢(桐光学園、前橋育英)だった。0勝7敗の関東勢に今大会では一泡吹かせたいところだろう。関東-九州・沖縄対決は初戦で3カード組まれている。
7位は勝率.375の北信越。今大会に出場する話題校の一つが石川県大会決勝で9回裏に8点差をひっくり返した星稜だ。しかし北信越勢の傾向を見ると「いかに失点を抑えるか」が勝利へのカギとなる。過去3大会の北信越勢全14試合をひもとくと、対戦相手を3点以内に抑えた試合は9勝1敗と高勝率を挙げている一方、4点以上取られた試合では0勝14敗と全敗。まさに北信越勢にとっては、相手を“3点以内に抑える”ことが絶対条件となる。
次いで9地域中8位の北海道勢。ここは南北2校ずつのため、過去3大会でも計7試合のみ(1勝6敗)とサンプル数が少ない。2011年大会の白樺学園(北北海道)が唯一の勝利を挙げたが、負けた6試合の内訳を見ると1点差負けが4試合、2点差負けが1試合。1点差負けのうちサヨナラ負けが3試合もあり、まさにあと一歩のところで及ばずといった試合が多い。しかもサヨナラ負けの相手は智弁和歌山、明徳義塾(高知)、龍谷大平安といずれも伝統校相手の惜敗だった。1勝6敗とはいえ、決して低レベルの地域ではないことがわかる。
最後が今回のランキングで最も予想外だった一つ、1勝12敗の東海勢である。唯一の勝利は13年大会の常葉菊川(静岡)だが、次の鳴門(徳島)戦ではなんと1対17の大敗を喫している。しかし東海のレベルが総じて落ちているのかと問われれば、答えは「ノー」である。なぜなら、2011年から13年の選抜大会は通算9勝7敗としっかり勝ち越しており、今年の選抜でも愛知の豊川が4強入りするなど、“春”はしっかり結果を残しているのだ。今大会では “夏にも強い”東海勢に期待したい。
間もなく開幕する夏の甲子園。今年はどこの地域が躍進するのだろうか。
※9地域は以下の通り
北海道(北北海道、南北海道)
東北(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)
関東(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東東京、西東京、神奈川、山梨)
北信越(新潟、富山、石川、福井、長野)
東海(静岡、愛知、岐阜、三重)
近畿(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)
中国(鳥取、島根、岡山、広島、山口)
四国(香川、徳島、愛媛、高知)
九州・沖縄(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄)