――切り替えることが次のプレーに繋がり、勝利へ導くということですね。
チームに入団して間もない子どもは、小学校時代に指導者に厳しくされたのか、ミスをすると僕の方を見る選手が多いんですよ。
でも、野球にミスはつきもの。
ピンチになったときこそ、引くのではなく攻める気持ちを強く持つべきです。
高校野球の指導者の方は「今は昔に比べ野球が上手い子は沢山いる。
でも欲しいのは上手さではなく強さだ」と口を揃えて言います。
強さというのが甲子園をかけたここ一番で発揮されるわけです。
ミスをした子に怒鳴るくらいなら「もっと攻める気持ちを持て!」と僕は言いますね。
――野球は好打者でも7割はミスをします。つまりミスをした後の行動や気持ちが大切だと。
そうですね。
ボールを落としてしまっても、素早く拾って投げる。
ミスをしたからこそ、取り返すために「もう一本来い!」とポジティブな気持ちを育む必要があります。
――確かに強い気持ちというのは大切ですね。市川シニアの子どもたちはポジティブな声を自主的に出しているように感じます。
よくやりがちな「シャー!」など、意味を持たない声は試合では出さないように指導しています。
グラウンドの状況を示す「準備・確認の声」、一球の動きに対する「瞬間の声」、そして仲間をサポートする「激励の声」が大事。
これらは一球一球考えていないと自然に出ない声です。
「なんでこの声を出しているのか?」を説明できないようではダメ。
ひとえに声出しといっても、考えている子どもと考えていない子どもでは全然違うんですね。
そういった部分も高校野球の指導者はしっかり見ていますよ。
「中学の3年間は子どもたちの成長の速度が最も違う期間」と宇野監督は言う。精神的に大人になっている子もいれば、まだ小学生の時と変わらずに日々を過ごす子もいる。しかし、時間は誰にでも平等に進む。先に待つ高校野球を熟知する宇野監督だからこそ、ありったけの経験を子どもたちに伝え、準備をする大切さを説いている。(取材・撮影:児島由亮)