「身体が小さくてパワーがない。こんな僕でもホームランバッターになれますか?」
小学生からそう質問されると、塾長はこう答えている。
「なれます。絶対になれます。技術に身体の大きさは関係ない。さらに、親が小柄とか、野球経験ナシとかも、全く関係ありませんよ」。
「打者に関しては、体格は関係ないです。それを実感したのが大学野球。ベンチにはガタイのいい選手がいっぱいいて、練習ではマシンでガンガン打つんですが、試合で活躍するのは小柄な選手なんですよ。野球スキルのある選手のほうが活躍します。独立リーグのときも同じで、一番小柄だった水口大地(身長163cm)が西武ライオンズに入団しました。プロのスカウトも、体格以外のところをちゃんと見ているんです」。
ではどんな練習が効果的か? 塾長は「正しい素振り」と「正しいティー打撃」の2つを挙げた。動画にあるとおり、素振りはタイミングを合わせて行うことが重要。ティー打撃は、ネットの先まで打球を飛ばすイメージで打つことが大切だと説明した。その時に、左肩の位置は変えず、壁を作る(ロックした)状態を保つこと。上体を回すのではなく、腰だけを回して打つ。スイングをしたあと、前ではなく後ろに転ぶくらいの勢いで打つことが大事だと話した。選手には言い方を変え「この選手はオーバー気味に、この選手は理論的に…」など、個性に合わせて使い分けをしている。言い方は違うが、原理は一緒。「正しいスイングができないうちは打席に入る資格はない」と言うほど、打撃の基礎作りに強いこだわりを持っている。
【1】「ピッチャーを想定して、タイミングを合わせてスイング」を1セット、という意識で振る
【2】目線はティーネットの高さではなく、その先をイメージして打つ
【3】打球を「上げて」打つことを常に心がける
技術練習と並行して行って欲しいのが、基礎体力の強化だ。大きく飛躍することができる18歳までの成長期に、インターバル走や、自体重でのウエートトレーニングなどで心肺機能を強くしたり、筋細胞を増やしたりすることが大切だからだ。「なわとびなどのジャンプ系の運動をするのもいいですね」。ただし、やり過ぎはよくない。「小・中学生のうちは、練習50%、食事・睡眠・ケア50%くらいの比率が良いと思います」と話した。もちろん、自宅学習も習慣に入れること。運動と同じで、勉強の吸収力が高いのも小学生だということを忘れてはいけない。
野球も勉強もどんどん身につく小・中学生を教えながら「1カ月でどんどんうまくなっていくのが小・中学生。形が固まってしまっている高校生ではもう遅いなと思うときがあります。もちろん僕の指導が全てではなく、チームの教えややり方に従って、自分をどんどん高めていって欲しいですね。甲子園がすべてじゃないけど、聖地を目指して努力することは大事。教え子を応援するのがこれからの楽しみですね」と話した。
最後に塾長に野球界への夢を聞くと、キッパリとこう言った。
「メジャーリーグを日本人だらけにすることですね!」。
純粋に野球が大好きな子供たちと一緒に、自分自身が叶えられなかった大きな夢を追いかける。(取材・写真:樫本ゆき)
悟塾(さとるじゅく)
創設:2013年6月。場所:福岡県内の野球練習施設(福岡早良校、福岡東校、福岡和白校、北九州校)。時間:18時~22時の間(基本)。対象:小学生以上。定員:各クラス8~10名程度。*開催日の詳細は、悟塾ホームページ(http://satorujuku.jp/)西村悟
1983年6月8日生まれ。福岡県古賀市出身。九州古賀ボーイズから東福岡に進み1番打者(外野手)で活躍。高2秋に九州大会優勝、神宮大会優勝。センバツ8強入りを果たす。東海大を経て2006年に独立リーグ・徳島インディゴソックスに入団。2007年同・福岡レッドワーブラーズ、2009年同・愛媛マンダリンパイレーツで活躍し2010年に退団。2013年より悟塾を開校。阪神に2014年まで在籍した西村憲投手は実弟。取材協力
BALLHOUSE(http://ball-house.com/)
HORYGROUND(http://www.holyground.jp/)