軟式野球に比べれば、日本の中学生の硬式野球は歴史も浅く競技人口も少なかった。
日本の少年硬式野球は、1955年にアメリカからもたらされたリトルリーグが始まりとされる。リトルリーグは12歳まで、日本でいえば小学生を対象とした硬式野球だが、日本ではその上に中学生を対象としたリトルシニアが設けられた。1972年に正式にリトルシニア野球協会が設立された。このリトルシニアが、日本の中学校の硬式野球の始まりだ。
リトルシニアは、リトルリーグに準じてアメリカのルールに範をとっていたが、のちに日本独自の発展をするようになる。
アメリカ流の野球ではなく、日本の野球を子供たちに教えようという考えで設立されたのがボーイズリーグだ。その母体は、南海ホークスの大監督だった鶴岡一人が大阪市で始めた少年硬式野球リーグだった。のちに全国に広がる。
鶴岡一人は、かつて南海ホークスで部下だった選手をボーイズリーグの指導者にした。南海の外野手から住之江ボーイズの指導者になった黒田一博もその一人。その子が、広島、ドジャース、ヤンキースで活躍した黒田博樹だ。
ボーイズリーグは小学生から中学生までを対象にしているが、中学生の競技人口が圧倒的に多い。
その発祥の地の違いから、リトルシニアは東日本にチームが多く、ボーイズは西日本に多い。
小学生では、盗塁や振り逃げなどリトルリーグとボーイズではルールの違いが多少あるが、中学生のリトルシニアとボーイズのルールはほとんど変わらない。
その後、ボーイズリーグから分派する形でヤングリーグが誕生した。もとは兵庫県を中心とするリーグだったが、近年は西日本を中心にチーム、リーグ数が増えている。ボーイズリーグとほぼ同じルール。小学生もあるが、競技人口は少数だ。
ポニーリーグは、1950年にアメリカで生まれた少年野球リーグ。日本には1975年にもたらされた。中学生が対象だが、小学校高学年のリーグも設けている。
リトルシニアが、日本で独自の発展をしたのとは対照的に、ポニーリーグはアメリカの少年野球の考え方を忠実に守っている。
その最大の特徴は「機会均等」だ。他のリーグが、主力選手に出場機会が偏重しがちなのに対し、ポニーリーグではチームの定員が決められ、原則として全員が試合に出場する。
ポニーリーグは関東地区で発足し、当初は限定的なチーム、リーグ数だったが、現在は全国に連盟ができている。
その他九州には、フレッシュリーグという少年硬式野球リーグがある。
勢力図が変化した中学野球
1990年代までは、中学野球の主力は中学校部活の軟式野球だった。硬式野球はチーム数が少ない上に、費用がかかる。父母の負担も大きいため、チーム、リーグ数は少なかった。
しかし、近年は中学軟式野球が衰退し、硬式野球が活況を呈している。その過程でいろいろな問題が生じている。(取材・文、写真:広尾晃)