ニュース 2018.11.16. 12:27

【今、野球と子供は。】壊滅的な中学部活の軟式野球



そんな中で、中学校の硬式野球チームは、競技人口が増えないまでも堅調に推移してきた。中学校硬式野球の競技人口は、この10年、5万人弱で推移している。

近年顕著になっているのは中学硬式野球の「塾化」だ。

従来は、高校野球など、硬式野球の経験のある親が、子供にも心身の鍛錬や、楽しみを目的として硬式野球をさせることが多かったが、今はかなりの数の親が「甲子園」「プロ」を目指して子供を硬式野球に進ませるようになった。

リトルシニア、ボーイズ、ヤングなどで好成績を上げ、全国大会などで有名になった選手には、甲子園に出場するような有力校から誘われることが多くなった。大阪桐蔭高など甲子園の強豪校の選手は、ほとんどが少年硬式野球の出身者だ。

今の少年硬式野球では、有力選手をよい高校に進ませることが、大きな目的になっている。まるで勉強の学習塾のような位置づけになっているのだ。

少年硬式野球は、用具も高価なうえに、遠征費用などもかかる。父母の負担は、部活の軟式野球に比べて高価だが、我が子の将来を考えて費用を負担する親も多い。

また用具や遠征費だけでなく、プロテインなどの補助食の費用もかかる。なかには、チームでレギュラーを取るために投球や打撃などの「個人コーチ」につくケースも出てきている。こうなると「教育費」というより子供への「投資」というべきかもしれない。

親の過大な期待


ボーイズやリトルシニアなどの練習場には、平日であっても子供を送り迎えする父母の車がたくさん並ぶ。父母は子供を送迎するだけでなく、子供が練習ユニフォームに着替える間にトンボでグラウンドを鳴らしたり、ラインを引いたりする。

ある親に話を聞くと「どうせやるなら、甲子園に行ってほしいし、プロにも行ってほしい」と話した。指導者は「そんな甘いもんじゃない」と語るが、少年硬式野球は費用が高い分、親の期待も半端ではないのだ。

軟式野球の衰退と、硬式野球の盛り上がり。中学野球は二極化しつつある。



最後にある親の述懐を紹介する。

「私は中学時代けっこう真剣に野球をしましたが、別にいい高校に行きたいとか、プロに行きたいとかは考えていたわけではありません。うちの親父もやっていたし、私も純粋に野球が好きだったからです。だから勉強も頑張りました。
うちの息子にも同じように楽しく野球をしてもらいたいと思ったのですが、入学した中学の野球部は数人しかいなくて先生も経験者じゃなかった。
だったら近所の少年硬式野球に、と思ったんですが、こっちは競争がすごいし、親もお茶当番とかいろいろしなければならない。昔のように”楽しみながら野球をする”場所がなくなったんじゃないですか」(取材・文、写真:広尾晃)

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