第2日の12月2日の締めくくりでは、日本野球科学研究会からの提言が紹介された。
今年、一般社団法人全日本野球協会から、日本野球科学研究会に対して3つのテーマでの提言が求められた。これを受けて日本野球科学研究会運営委員代表の平野裕一法政大学教授が、分野ごとの担当委員を選任し、研究を進めてきた。
1「スポーツマンシップ、マナーなどの人材育成の視点から、スポーツアスリートを育成するための提言」
担当委員を代表して宮西智久仙台大学教授が発表。
日本野球に定着した「楽しめない」「怖い」イメージを払しょくし、野球を「選ばれる競技」にするにはどうすればいいか。肯定的要因を挙げるのではなく、野球の成立要素の観点から否定的要因を洗い出して、改善点を具体的に指摘。育成ガイドラインと、年代別の練習ドリルを作成して、ジュニア・コーチに配布することとした。
2「二段モーションや動作の一旦停止などの投球動作について、科学的視点からの提言」
担当委員を代表して発表したのは松尾知之久大阪大学准教授。
担当委員は実際に動作解析などの実験を行い、二段モーションと、一般的な投球フォームでは投球速度、制球力、球のキレにおいて有意の差がないという結論に至った。また二段モーションや一旦停止などの投球動作が打者のタイミングを外す、幻惑することになるのかも、動作解析実験を行い、少なくとも大学生レベルの打者には無意味であるという結論を出した。
3「ジュニアからユースまでの選手の育成、野球障害の予防、安全管理についての障害予防および育成方法についての提言」
担当委員を代表して発表したのは馬見塚尚孝国立病院機構 西別府病院医師。
発表は焦点を絞って「成長期(骨化伸展期)の投球肘障害予防目的のアイシングへの提言」が行われた。
アイシングは障害の直接的予防としては、予防可能だとする報告はなかった。またアイシングによって障害の早期発見の抑制につながる可能性も指摘された。さらに、間接的予防についても議論の余地があるとの結論に至った。
提言の最終期限は来年2月。各担当委員はさらに研究、検討を進める。
優秀な一般研究発表の表彰
閉会式では、66件あった一般研究発表から、優秀な発表が表彰された。
◯特別新人賞
P-38
表情や姿勢および言動とパフォーマンスとの関係性について
森下祐樹(米子東高校)
P-39
ゴロを打ては正しいのか
福島康太(米子東高校)
◯大会賞
P-42
野球を通じた国際開発への試み ?コスタリカ共和国S野球協会の野球競技力に焦点を当てて-
藤谷雄平(鹿屋体育大学院)
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P-35
高校野球の攻撃戦法に関する研究 - 無死1、2塁に着目して-
大阪航平(筑波大学大学院)
P-36
フライボール理論はソフトボールにおいても有効か
大田穂(株式会社日立製作所 日立ソフトボール部)
◯最優秀発表賞
P-50
ジュニアユース期の野球選手への育成診断システムの活用と
トレーニングとしての多様な運動体験の有効性
- 中学野球選手を例として -
石元志知(神戸市立大原中学校)
米子東高校の2人の発表者の表彰では大きな拍手が起こっていた。
盛りだくさんの発表、提言があった日本野球科学研究会第6回大会。
この大会は、研究者や指導者だけでなく、野球に関心を持つ人であれば、参加費を支払えばだれでも参加し、発表を見たり、質疑応答をすることができる。来年の会場、日程はまだ発表されていないが、ぜひ、参加していただきたい。
(取材・写真:広尾晃)