東京城南ボーイズのバッティング練習の特徴はマシンを使って行うというところにもある。三つのマシンのうちの一つは緩いカーブだが、残りの二つは125キロから127キロくらいのスピードに設定されており、距離も通常のマウンドより前に置かれている。中学生にとっては簡単に打てる速さではない。実際にこの日は軟式の少年野球チームに所属している小学6年生が体験入部で練習に参加していたが、このマシンを使ったバッティングではほとんどまともな打球は前に飛んでいなかった。ただこのような設定にしているのは当然狙いがあるからだ。
「この練習の目的は数を打つことですから、それを考えるとマシンの方が効率がいいですよね。基本的にボール球は来ませんから。試合でもストライクはとにかく初球からどんどん打つ。そうしないとバッティングは上達しません。私もコーチも基本的にはバッティング練習中は声をかけません。時間が限られているので教えていたらその分ロスしますから。
あと速いボールに設定しているのはそれだけ無駄な動きをさせなくなるという効果があるからです。距離が短くて125キロ以上のボールが来るので、それに合わせようと思ったら自然と無駄なことはしなくなります。同じように打っていてもいい打球が飛んだ時とそうでない時は何が違うのか、こちらが言わなくても選手たちが自分で考えて修正できるようになりますよ」
実際にこの日のバッティング練習を見ていても打席の周りにはコーチはおらず、スイングに対して何かを言うようなことは一切なかった。ただ選手達は誰かに言われなくても自分で考えながらバットの出し方や踏み出し方を調整している姿がよく見られた。
取材したのは11月で公式戦が近くないということもあって主力も調子が落ちているという話だったが、それでも高校生顔負けの打球を飛ばす選手は多く、バッティングのレベルは非常に高いものだった。ちなみに冬場でも室内練習場は寒さがそれほどではないため、年間通じてこのようなバッティング練習は行っているとのこと。結果論をテーマに選手に教えすぎることなく、1週間を計画的に使いながら効率よく練習している成果が見えやすいバッティング練習という印象だった。
*後編「『教わるんじゃなくて野球をやろう!』子供達の自主性を重視した練習」。
(取材・西尾典文、撮影・編集部)