■コーチングに完成形はない
現在、最新と言われているのは『質問、気づき、気づかせ、提案型』と言われるコーチングです。まず選手に質問を投げかけ、自ら気づいてもらい、強制するのではなく提案するというものですね。命令されての行動と選手自ら決めた行動では集中力が全く違うんですね。そういうことを促すためのコーチングと言えます。
重要なのはまず質問するということ。それも「はい」か「いいえ」で答えられるものではなく、選手が考えるような質問です。上手くなりたいと強く思っている選手ほど色々な情報を得ようと思ってアンテナが外に向いているのですが、コーチが質問することによってそのベクトルが一気に外から内に向くことになります。そのことで選手自らが考える力がつくようになるんですね。
これが最新のコーチングの概要ですが、ではコーチングに完成形はあるのでしょうか? それは絶対にありません。なぜならその時代によって環境や背景もどんどん異なってくるからです。今の時代は通用しても、それがそのままずっと通用するわけではないのです。つまりコーチは常に勉強し続けなければならない。学ぶことをやめた時がコーチを辞める時だと考えるべきだと思います。(取材:西尾典文)
次回:立花龍司さんに聞くコーチング「怒ると叱るは違う。基本的には褒める」に続きます。
立花龍司さんプロフィール
1964年生まれ。大阪府出身。浪商高校(現大体大浪商)、大阪商業大でプレーし、大学時に学生コーチに転向。天理大でスポーツ医学の単位を取得し、1989年に近鉄バファローズのトレーニングコーチに就任。その後ロッテ、ニューヨーク・メッツ、楽天でもコーチを務めた。筑波大学大学院修士課程修了。筑波大学野球研究班研究員、日本野球科学研究会会員。
2001年より大阪堺市阪堺病院内SCA(ストレングス&コンディショニングジム)を設立主宰。現在は大阪と千葉で『タチリュウジム』を開設して後進の指導に当たりながら、全国各地で講演活動も行い、note(https://note.mu/tachiryu89)でもこれまでの経験をもとに様々なことをテーマに発信している。