横浜市のあるグラウンドで早朝8:15から試合が行われていました。行われていたのは来春からの開幕を目指す新しいリーグ戦「Players Centered League」(以下、PCL)のプレリーグ戦。”選手たちを真ん中に置いたリーグ”とは一体どんなリーグなのでしょうか?
この日行われていたのは、以前にヤキュイクでも取材させていただいた横浜金沢Vルークスの3・4年生チームとみなとみらいブルーウインズの4年生チーム。ちなみにこの2チームの他にリーグ参加を予定しているのは、この日の第二試合で試合を行った横浜ブレイズを含めた6チーム。
この試合は事前に両チームの監督が話し合い次の特別ルールで行われました。
・暑さと次の試合予定を考慮して試合時間は1時間で終了とする。
・ベンチ入り選手は全員出場(出場:1打席以上打席に立つこと)。
・子ども達に審判をさせる(交代制)。
実際、試合では子ども達が1塁、3塁の審判を務めていました。首を傾げながら自身なさげに判定を下す場面もありましたが、それに対するヤジなどはありません。むしろ際どい判定にジャッジを下したときにはベンチから拍手も起こっていました。
「子どもに審判をさせるのは初めての試みです。ジャッジって難しいですよね。『アウト? セーフ? どっちだろ?』という凄い葛藤の中で瞬時に判定を下さないといけないですから。こういう経験をするとプレーを客観的に見られるようになると思いますし、プレーヤーとしての目線以外に色んなことを学べるのではないかと思っています。大人が(試合を)全部作り上げるのではなく、子ども達にも一緒に作り上げてほしいという思いもあり試しで導入してみました」
そう話してくれたのは横浜Vルークスの代表でPCLの実行委員長でもある加古さん。来春のリーグ開幕に向けて、何がベストか試合を通じて試行錯誤を続けています。
この試合でもっとも印象的なプレーはプレーボール直後に起こりました。右中間のややライト寄りに上がったフライ。これをライトを守っていた4年生の男の子が見事にキャッチ。このプレーにルークスのベンチ、そして応援していた保護者たちから大歓声が起こりました。
よく捕ったとはいえただのライトフライ。なぜそこまで湧き上がるのでしょうか? 不思議そうにしていると加古さんがその理由を教えてくれました。
「あの子はね、2年生の時に入部してきて、はじめは手で転がしたゴロさえ捕ることができなかったんですよ。それをみんな知っているからね......驚いたというか感動してるんですよ(笑)」
3、4年生の試合なのでミスやエラーはたくさんありました。それでもそれを怒る大人の声も、それを喜ぶ相手ベンチからの声もありませんでした。むしろ敵味方関係なくナイスプレーには両ベンチから自然と拍手が起こり、あらゆる場面で「ナイスプレー!」という声も飛んでいました。相手打者がデッドボールで1塁ベースに行くとファーストの子が帽子を脱ぐなど、野球はまだぎこちないながら、子ども達にはフェアプレーが浸透していることが窺えました。
途中で試合を止めて守備側の給水タイムを設けたり、両チーム共にピッチャーをイニングごとに交代し、キャッチャーも途中交代させるなど、暑さを考慮して行われた試合はルール通りに1時間でゲームセット。しかし、「ベンチ入り選手は全員打席に立つ」というルールながら、試合終了のタイミングの関係でルークスの選手が一人出場できませんでした。
「ここが時間制限にしたときの課題です。タイムキーパーを置いて『次のイニングで終了』など、事前に知らせてもらう方が良いかなぁと思いました。『時間なので終了ー』となると、今回のような問題が起こってしまうことが分かりました。現在は来春の正式開幕に向けてこうやって、試行錯誤を繰り返している段階です。悩んで良いものを作り上げていこうと思っています」(加古実行委員長)。
負けたら終わりのトーナメント戦とは異なり、負けてもまた次の試合があるのがリーグ戦。そんなことも関係しているのか、監督、コーチ、保護者には「勝たなければいけない」という悲壮感もピリピリ感もなく、そこにあるのは子ども達のプレーを優しく見守り、相手チームをリスペクトする大人の優しい眼差しでした。(取材・写真:永松欣也)
次回は「Players Centered League」についてさらに詳しく紹介します。
この日行われていたのは、以前にヤキュイクでも取材させていただいた横浜金沢Vルークスの3・4年生チームとみなとみらいブルーウインズの4年生チーム。ちなみにこの2チームの他にリーグ参加を予定しているのは、この日の第二試合で試合を行った横浜ブレイズを含めた6チーム。
この試合は事前に両チームの監督が話し合い次の特別ルールで行われました。
・暑さと次の試合予定を考慮して試合時間は1時間で終了とする。
・ベンチ入り選手は全員出場(出場:1打席以上打席に立つこと)。
・子ども達に審判をさせる(交代制)。
実際、試合では子ども達が1塁、3塁の審判を務めていました。首を傾げながら自身なさげに判定を下す場面もありましたが、それに対するヤジなどはありません。むしろ際どい判定にジャッジを下したときにはベンチから拍手も起こっていました。
「子どもに審判をさせるのは初めての試みです。ジャッジって難しいですよね。『アウト? セーフ? どっちだろ?』という凄い葛藤の中で瞬時に判定を下さないといけないですから。こういう経験をするとプレーを客観的に見られるようになると思いますし、プレーヤーとしての目線以外に色んなことを学べるのではないかと思っています。大人が(試合を)全部作り上げるのではなく、子ども達にも一緒に作り上げてほしいという思いもあり試しで導入してみました」
そう話してくれたのは横浜Vルークスの代表でPCLの実行委員長でもある加古さん。来春のリーグ開幕に向けて、何がベストか試合を通じて試行錯誤を続けています。
この試合でもっとも印象的なプレーはプレーボール直後に起こりました。右中間のややライト寄りに上がったフライ。これをライトを守っていた4年生の男の子が見事にキャッチ。このプレーにルークスのベンチ、そして応援していた保護者たちから大歓声が起こりました。
よく捕ったとはいえただのライトフライ。なぜそこまで湧き上がるのでしょうか? 不思議そうにしていると加古さんがその理由を教えてくれました。
「あの子はね、2年生の時に入部してきて、はじめは手で転がしたゴロさえ捕ることができなかったんですよ。それをみんな知っているからね......驚いたというか感動してるんですよ(笑)」
3、4年生の試合なのでミスやエラーはたくさんありました。それでもそれを怒る大人の声も、それを喜ぶ相手ベンチからの声もありませんでした。むしろ敵味方関係なくナイスプレーには両ベンチから自然と拍手が起こり、あらゆる場面で「ナイスプレー!」という声も飛んでいました。相手打者がデッドボールで1塁ベースに行くとファーストの子が帽子を脱ぐなど、野球はまだぎこちないながら、子ども達にはフェアプレーが浸透していることが窺えました。
途中で試合を止めて守備側の給水タイムを設けたり、両チーム共にピッチャーをイニングごとに交代し、キャッチャーも途中交代させるなど、暑さを考慮して行われた試合はルール通りに1時間でゲームセット。しかし、「ベンチ入り選手は全員打席に立つ」というルールながら、試合終了のタイミングの関係でルークスの選手が一人出場できませんでした。
「ここが時間制限にしたときの課題です。タイムキーパーを置いて『次のイニングで終了』など、事前に知らせてもらう方が良いかなぁと思いました。『時間なので終了ー』となると、今回のような問題が起こってしまうことが分かりました。現在は来春の正式開幕に向けてこうやって、試行錯誤を繰り返している段階です。悩んで良いものを作り上げていこうと思っています」(加古実行委員長)。
負けたら終わりのトーナメント戦とは異なり、負けてもまた次の試合があるのがリーグ戦。そんなことも関係しているのか、監督、コーチ、保護者には「勝たなければいけない」という悲壮感もピリピリ感もなく、そこにあるのは子ども達のプレーを優しく見守り、相手チームをリスペクトする大人の優しい眼差しでした。(取材・写真:永松欣也)
次回は「Players Centered League」についてさらに詳しく紹介します。